チームリーダが語る私たちのミッション

X線天文衛星「ASTRO-H」は、我が国が世界をリードしてきたX線天文学の分野で世界最高の性能を持つ宇宙X線観測衛星です。宇宙の謎を解明することをめざし、 日本が日米欧の国際プロジェクトチームをリードする形で開発が進められています。全長14m、重量2.7トンと、これまでの日本の科学衛星に比べて大型で、現在運用中の「すざく」にくらべ、格段の性能向上となります。

宇宙の進化は、星、銀河、銀河団がおりなす巨大な階層構造を作るとともに、ブラックホールに代表される驚くべきエネルギーと物質の集中を生み出してきました。ASTRO-Hは、銀河団や超新星残骸などの様に広がった天体に満ちている高温ガスの速度をX線を用いたドップラー分光によって測る能力と、3桁以上の広い範囲にわたってX線光子のエネルギーを感度よく測定できる能力をあわせ持ちます。その優れた能力を使って、隠された巨大ブラックホールを探り、銀河や銀河が沢山集まってできた銀河団が示すダイナミックな宇宙の進化や、非熱的物質を含めたエネルギー集中の過程を初めて明らかにする事を目的としています。

人間は、厚い大気の下で生きるために、それに適した進化をとげました。天文学は、人間が見ることのできる可視光を使って発展してきたのです。20世紀になって、人類は大気を抜け宇宙にでる事ができるようになり、わたしたちははじめて、普通は「見る」事のできない光、つまりX線で宇宙が満ちていることを知ったのです。宇宙望遠鏡を用いたX線観測は、人類が予想もしていなかった、宇宙が数千万度、数億度という超高温の現象の宝庫であることをあきらかにしたのです。
今では宇宙で我々が観測できる物質の80パーセントはX線でしか観測できない高温状態にあるとされています。宇宙の全貌を知る上で、X線観測は地上からの光学・電波観測などと並び不可欠な手段となっています。ASTRO-Hは、このX線観測の分野で、世界をリードし、宇宙科学の分野に新たな流れを作るべく生まれるのです。

X線天文学は、とても新しい天文学です。そしてASTRO-Hは、私たちが世界に先駆けて開発した先端技術の粋を尽くして作られる衛星です。ASTRO-Hは、高いエネルギーのX線やガンマ線を撮像するため、様々な技術を備えています。例えば、マイクロカロリーメータという新世代のセンサー、従来の「64色カラー画像」から「2048色総天然画像」を実現するための極低温技術や国産ナノ技術、従来は反射できなかった高いエネルギーのX線を反射する「スーパーミラー」、世界に誇る日本の半導体技術が生んだ新しい高効率半導体素子などです。ほかにも、伸展式光学ベンチにより、機器を宇宙空間で6メートルも伸展させたり、データ処理システムとして、モジュール化された複数の機器間をネットワークで結ぶ、新しい衛星アーキテクチャを採用したりしています。

ASTRO-Hが宇宙にあがれば、新しい結果、誰も予想もしなかった結果が日々送られてくるはずです。完成までには、まだまだ乗り越えなければいけない課題が沢山ありそうです。それでも、みんなの力を合わせて作った衛星が動き始める日を思うとどんなことでもできそうです。

(2011年1月 更新)

高橋忠幸


(提供:池下章裕)


X線天文衛星「ASTRO-H」
ロゴマーク