
――今日のご感想は?
感動しました。とても嬉しかったです。再現チームはよくやってくれました。糸川先生も天国で大変喜んでいるんじゃないかと思います。
――糸川先生のことで思い出に残っていることは?
糸川先生は大変厳しい方でした。というのは、時間を与えてくれないんです。例えば、今晩設計について相談をするでしょう。そうすると、明日の朝には結論が出ていないといけない。だから、私は寝ないで必死に考えました。その方針についていけない人は辞めさせられたように思います。でも、私は無我夢中で糸川先生についていきました。
――最初にロケットを知ったのは?
メーカーに入社した当時、私はロケットのことを全然知りませんでした。糸川先生が会社に来て、ロケットの話をいろいろされた時もよく分かりませんでした。会社が糸川先生と一緒にロケットをやろうということになり、上司に呼ばれて「お前担当しろ」と言われた時に、「女の子の首飾りですか?」と言ってしまったほどです。女性が首にかけていたものを「ロケット」と言っていたので、そのことかと思ったんです。
ロケットが空を飛ぶものだと聞いても、どんなものかが分からない。それで糸川先生に、「ロケットはどんな構造をしているんですか?」と聞くと、先生も「分からない」と言うんです。「だから、それをちゃんと作るのが、あなたの仕事ですよ」と先生に言われ、何も分からないところから始めました。
――今の宇宙開発を見て感じることは?
ペンシルをやっている頃は、みんなが仲間でした。ロケットの設計をしていても、電気通信は何をやっているか、測量は何をやっているか、すべて知っていました。他のチームの仕事をよく理解しなければ、物事がうまく進まないからです。ところが最近は、そういう横の連絡が薄くなっているように感じます。組織が大きくなると縦割りになって、「自分の仕事はこれだけ」となりがちですが、横のコミュニケーションがうまくいかないと、成功はなかなか難しいと思います。
――若い技術者へのメッセージは?
「言い訳を絶対にするな」と言いたいです。そのためには、自信を持ってやりなさいと。人が5時間調べるなら、自分は1日調べるくらい、あらゆることを調べ、自信を持って与えられた役割をやってほしいものです。そして、それで失敗をしてもめげてはいけません。人間は失敗をするのが当たり前なんです。めげる暇があったら、なぜ失敗したのかという原因を追求し、それを訂正していけばいいんです。失敗を積み重ねて成功に結びつけていけるように、自信を持ってやってほしい。
私には、それを実現するための信条『5つのやってはいけないこと』があります。まず「当てにするな」。人を当てにしてはいけません。次に「慌てるな」。そして、「あせるな」、「諦めるな」、「頭にくるな」。この、「あ」で始まって「な」で終わる5つの言葉です。頼れるのは自分だけだということを肝に命じて実力をつけ、何事にも恐れずチャレンジしてほしいと思います。

1959年9月、カッパ7型の地上燃焼試験の実験班。前列左から4人目が糸川教授、最後列左から5人目が垣見氏
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