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木星の大赤斑をレポートしながら・・・

寺田:もし宇宙へ行けたら何がしたいですか?

木星の大赤斑(提供:NASA/JPL/University of Arizona)
木星の大赤斑(提供:NASA/JPL/University of Arizona)

中川:大好きな木星に向かって歌ったり、自分のブログを更新しまくりたいですね。できれば、木星の大赤斑にロケットごと突っ込んでいただき、レポートしながら死んでいきたいと思っています。私の理想の死に方は、木星の大赤斑に突っ込んで死ぬことなので(笑)。片道切符でいいので、絶対に宇宙へ行きたいです!

寺田:そのブログ更新には通信衛星が使われると思いますが、私たちの今の生活にも、宇宙が活用されていることをご存知ですか?

中川:最近、電話番号を入力するだけで相手の居場所が分かるアプリとかあるじゃないですか。自分でも試してみたら、相手が居る場所の番地まで分かっちゃうからビックリして、GPS衛星すごかりし!と思いました。

寺田:私は以前、「みちびき」という日本版GPS衛星の開発を担当していましたが、「みちびき」があると、自分の車が走っている車線まで識別できるようになるんですよ。高速道路では、逆走による事故が年間で1000件くらいあって、その防止にも貢献するだろうと期待されています。そのほかにも、例えば「だいち」という地球観測衛星は、東日本大震災の時に津波による被害状況を把握するのに大変役立ちました。このようにJAXAの衛星が活躍しているんです。

中川:「だいち」が撮った画像はニュースで見たことがあります。衛星だからできること、衛星じゃないとできないことがあるんですね。宇宙から撮った地球の写真はよく見るんですが、地球の分からないところが何もない、まるで地球を支配してしまったような時代がいきなり来たという感じがして、すごいなあと思います。でも私はメカニックに弱く、これまで人工衛星のことを意識したことがありませんでした。これからは人工衛星のことも勉強させていただきたいなと思います。

生きているうちにたくさんのビックリを!

寺田:宇宙のことでどんなことを知りたいですか?

生命の存在が期待される火星(提供:NASA/JPL/MSSS)
生命の存在が期待される火星(提供:NASA/JPL/MSSS)

中川:知りたいことは山ほどあります。最近は、インターネットでいち早くいろいろな情報が分かるので、毎日すごく刺激的ですよね。例えば、周囲に惑星がある恒星系が見つかったり、ホットジュピターやダイヤモンドでできた惑星が見つかるなど、素晴らしい発見が次々とあります。でも何といっても、早く生命体が見つかってほしいですね。それと、ダークマターについては何度本を読んでもよく理解できないので、「こういうことですよ」とはっきり分かるような発見があればいいなと思います。

寺田:地球外生命については、火星を探査中のNASAの「キュリオシティ」に期待が集まっていますね。

中川:「キュリオシティ」によって微生物か何か生命の痕跡が見つかるだろうと思っていました。でも、キュリオシティが着陸したゲールクレーターでは、生命に必要なメタンが発見されなかったので、シビアな展開になっているようですね。火星着陸に成功した時点で、何か発見してくれるだろうと楽観的に思ったので、「あれ、やばいぞ」という感じです。何も生命が見つからなかったら、地球が本当に孤独な存在になっちゃうじゃないですか。この広い宇宙に地球のような星がすでに存在するのですから、遠すぎて私たちに見えないだけで、きっとどこかに生命が存在する星があるはずです。キュリオシティにはまだまだ期待したいと思います。

寺田:2014年には「はやぶさ2」を 、有機物や水の存在が考えられるC型小惑星に向けて打ち上げる予定なので、そこでも生命に関する新しい発見があるかもしれません。

小惑星探査機「はやぶさ2」(提供:池下章裕)
小惑星探査機「はやぶさ2」(提供:池下章裕)

中川:はい、期待します。宇宙の中で生命が誕生するためには、ハビタブルゾーンという水が存在する環境が必要なんですが、これだけ広大な宇宙ですから、生命誕生の条件に合った星がいくらでもあると思うんですよね。実際に、地球に似た惑星も発見されているので、意外とあっさり地球外生命が見つかるような気もしています。地球に住む私たちが孤独ではないということを、早く知りたいです。

 それに、宇宙で生命が見つかれば、さらに宇宙の研究や開発が活性化すると思います。少し話が逸れますが、人間が宇宙に行くような科学技術は、この100年で急激に進化しています。人が宇宙に初めて行ったのはたった50年前です。これって不思議なことだと思いませんか? 江戸時代は300年もあったのに、そのような大きな変化はありませんでした。でもこの100年でパソコンができたり、インターネットが普及したりして、「何これ!?」と少し怖い気がします。地球がこの急な変化についてこられないんじゃないかとも思いますが、きっと私たち人類に今必要なことなんでしょうね。

 私はいつ死ぬか分からないという意識を常に持っていますが、宇宙規模で考えたら、その寿命なんてほんの一瞬です。だから、生きているうちにできるだけたくさんのビックリをしたいですし、いろんな知識を得たいので、特に宇宙に関することがどんどん進歩してほしいと思っています。

人類が宇宙へ行くことに理由はない

寺田:本当に宇宙に詳しいですね。どういうところで知識を得られているんですか?

中川:宇宙のニュースは、インターネットから得ることが多いです。情報が早いですから。それと、以前番組で共演させていただいた国立天文台の渡部潤一先生の本がとても好きで、出版される度に読んでいます。「超ひも理論」などは何度読んでも意味がよく分からないんですが、宇宙に関しては、難しくて理解できなくても、読んでるのが好きです。分からなくても楽しいというのは、宇宙以外にはないですね。宇宙は果てしない好奇心に満ちていて、私にとって永遠のロマンです。

寺田:これからの宇宙ミッションにはどんなことを期待しますか?

中川:過去に惑星が発見された時にリアルタイムで知ることができた人、その時に生きていた人がうらやましいです。「今、まさしく宇宙に生命が発見された」という、人類史上最大のニュースをぜひ生で目撃したいから、まずはキュリオシティに頑張ってほしいです。そのほか、ぜひ実現してほしい技術は、遠くにある惑星も探査できるように、次元をきゅっと縮めてしまうワームホールの技術です。次元を隣同士で折り曲げるとか、次元に穴を開けるとか、その方法はよく分からないけれど、それがないとUFOも地球には来られないだろうから、きっとその技術はどこかにあると思うんですよね(笑)。

 あとはやっぱり、民間の人も気軽に宇宙へ行けるようになってほしいですね。「正月旅行はどこに行く?」「宇宙だよ」なんて会話する日がきてほしいなあと思います。そして、私を木星に連れて行ってほしいです。そんな遠くの惑星に行くのは技術的に無理だと言わないで、何とかお願いします!と本気で思っています。片道切符でいいから、どうしても行きたいんです!

寺田:我々もよく惑星探査を計画する時に、「なぜ人類は宇宙へ行くのか?」と問われることがありますが、それはもう人間の性(さが)だからなんですよね。中川さんはまさに本能で宇宙へ行きたいんですね。

中川:「なんで?」とか言っちゃったら何もできないから、そう聞く人は図鑑を読んでもっと宇宙を知ってほしいと思いますね。宇宙へ行くことは、人類という生命体にしかできないし、生命体の進化の証だと思いますので、「なんで?」と言っている人には、「おととい来やがれ!」と思うんです(笑)。JAXAの方たちは、私たちの希望をすべて背負って、日々、開発なさっていると思いますので、「なんで」とか、「お金がかかる」という言葉は無視して、人類の進化の発展をぜひお願いします。宇宙に関しては、お金という概念をなくしちゃっていいんじゃないかと、個人的には思っていますから。

もっと宇宙への窓を開いてほしい

寺田:JAXAに何か要望があればぜひ教えてください。

中川:やっぱり、日本の宇宙開発をストップしないでほしいです。「はやぶさ」で世界的功績を残したことも、同じ日本人としてすごく嬉しかったので、これからも日本には頑張ってもらいたいですね。特に、日本人に月へ行ってほしいという希望があります。月の有人宇宙探査をぜひやってほしいです。アメリカがかつてアポロで月へ行ったので、再び行く意味がないと言う人がいるかもしれないけれど、私はそうは思いません。日本のロケットが日本人を乗せて月へ行き、日本人がリアルに月を見せてくれたら、私だけでなく、すべての日本人が感動すると思うんです。

 それから、年齢や学歴などにとらわれず宇宙飛行士に応募できるようにしてほしいです。もちろん、経験と知識のある人は必要ですが、学力がなくても、ものすごく探究心が強くて頭のいい人はいっぱいいるので、周りからの推薦があれば宇宙へ行けるというような、特別なシステムに変えてほしいですね。そうしたら、私もぜひ応募したいと思っています。一般人にも宇宙への窓をもっと開けてもらって、普通の人もバンバン宇宙へ行けるようになればと思います。

寺田:JAXAの活動をもっと知ってもらうためにはどうしたらいいと思いますか?

中川:NASA TVのような、JAXA TVというのを開局して、テレビでずっと宇宙のことを放送するチャンネルがあってもいいんじゃないかと思います。そこでJAXAの活動の様子や成果が見られて、間にドキュメンタリー番組がバンバン入って。その番組は何度も繰り返し再放送してもいいんですよ。時には無音で放送してもいいし、難しくて無機質な説明でもかまいません。

 それから、私たち民間人からすると、実際に宇宙へ行った方が話しているのを聞くのが、宇宙を知る、あるいは、宇宙のことを知りたいと思うきっかけになると思うので、JAXAの宇宙飛行士にもどんどん出演してほしいですね。私が深海に行った時も、テレビで映しきれなかった深海の様子がありましたので、行った人にしか分からないことがきっとあるはずです。JAXA TVで宇宙に関する番組を1日中見て、宇宙にどっぷり浸かれたら最高だと思います。

子どもたちに宇宙のワクワク感を伝えたい

寺田:今年の抱負を聞かせてください。

中川:昨年はデビュー10周年で、アジアツアーを開催しました。その時にアニメソングを歌ったら、日本語にもかかわらず、みんな総立ちでジャンプしながら大声で歌ってくれたんです。その時に、国境も性別も世代も飛び越えて、歌という人間にしかできないことで、みんなを笑顔にすることができるんだ。笑顔は世界共通で、地球は一つなんだとすごく感じました。だから、今年もそのような、国境を問わず、みんなを笑顔にする活動をしたいと思っています。

 また、今年の夏には、私がプロデュースするプラネタリウムの作品が、コニカミノルタプラネタリウムで上映されます。2010年の夏に続き2作目です。私が宇宙を知るきっかけを作ってくれたのがプラネタリウムで、まだ小学校で脳が柔らかい頃に宇宙と出会えたことがとても良かったと思っています。だから私も、「宇宙ってすごいなあ!」と子どもたちが好奇心を持つきっかけになれるような作品を作りたいと思っています。知識を得てワクワクする側から、今は大人として、子どもたちに何かワクワクすることを伝えたいという意識に変わってきたので、どのような内容にしようかと今から楽しみです。

 何かを知れば知るほどそれが経験値になりますので、宇宙のことももっと知りたいし、どんどん調べたいです。そしてそれを、未来をつくる子どもたちに託したいですね。将来自分の子どもが生まれたら、プラネタリウムにどんどん連れて行って、木星のこともバンバン教えますよ(笑)。

寺田:ぜひ(笑)。今日はどうもありがとうございました。我々も中川さんの期待に応えられるよう頑張ります。

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