JAXAプロジェクトマネージャーが語る「私たちのミッション2006」
ロケット・輸送システム

LNG推進系飛行実証プロジェクト
秋元 敏男
わたしたちが開発中のLNG推進系というのは、LNG(液化天然ガス、主成分は液体メタン)と液体酸素をロケットエンジンで燃焼させて推力を得る新しい推進系のことです。

これまでJAXAでは、H-IIAロケット第1段、第2段に使用されている液体水素と液体酸素を組み合わせた推進系や、M-Vロケットの各段などに使用されている固体ロケットを開発してきました。LNG推進系は、性能は液体水素推進系と固体ロケットとの中間程度ですが、液体水素に比べてLNGは密度が高いため、推進系全体を小さく出来る、宇宙空間での長期間の貯蔵に適している、安全性が高いなどの特性があり、液体水素推進系などと組み合わせることにより将来の多様な宇宙活動に対応した自在な宇宙輸送システムの構築を可能にします。わたしたちのプロジェクトは、LNG推進系開発の第一歩として小型のLNGエンジンを開発し、飛行実証してみようというものです。


エンジン燃焼試験の様子


欧米でも同種エンジンの基礎的な研究は行われていますが、飛行実証したものはなく、わたしたちはLNGエンジンでの世界のフロントランナーと言うことができます。逆に言えば、いままで誰も経験したことがないような技術的な課題が、開発の過程でたくさん出てきているということでもあります。また、わたしたちの開発するLNG推進系は、飛行実証の後、民間が開発中のGXロケットの第2段推進系として利用されることが予定されていますので、単なる飛行実証レベルではなく、実用に耐えうるレベルの性能と信頼性も確保しなければなりません。

今わたしたちは、開発の中で明らかとなった技術課題の現象把握や発生メカニズムの理解、対策の検討、効果の確認などを日々行いながら、新しいものを開発する技術者としての喜びと大変さを噛みしめているところです。

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