JAXAプロジェクトマネージャーが語る「私たちのミッション2006」
ロケット・輸送システム

M-Vロケット
森田 泰弘
M-V(エムゴまたはミューファイブ)ロケットは、全段固体の多段式ロケットとしては世界最高性能を誇り、これまで主に科学目的の衛星や惑星探査機を打ち上げてきました。最近では、2003年5月に小惑星探査機「はやぶさ」、2005年7月にはX線天文衛星「すざく」、そして、2006年2月には赤外線天文衛星「あかり」の打ち上げにそれぞれ成功しており、信頼性にも実績で胸をはれる段階に入っています。

日本のロケット開発は、1955年に東大・糸川教授のグループが小さなペンシルロケットの水平発射実験を行ったのが始まりです。この小さなロケットはやがてラムダロケットとして開花し、1970年には我が国初の人工衛星「おおすみ」の打ち上げに至ります。やがて、M-Vロケットの登場により、我が国でもようやく本格的な惑星探査が可能となりました。M-Vロケットのように全段固体のロケットで惑星探査ミッションを遂行することは世界でも最先端の技術であり、M-Vロケットはペンシルから始まったわが国の固体ロケット開発の集大成と言えるでしょう。

M-Vロケットは、科学衛星や惑星探査機の打上げを通して日本の宇宙科学の発展に貢献してきました。科学ミッションには打ち上げる軌道に特殊性があります。例えば、惑星に探査機を打ち上げる場合、地球と惑星はそれぞれ異なる軌道を回っていますから、ロケットを打ち上げるチャンスは数年に一度しか巡ってきません。しかも、ウインドウ(打ち上げ可能な日数)は10日間くらいです。その限られた短いチャンスを確実にものにするためには、実用ミッションのスケジュールとは独立していて、かつ、即時打ち上げ性を有するロケットが必要です。世界をリードする宇宙科学を今後もJAXAが推進していくためには、M-Vのような信頼性の高い固体ロケットが最良の選択といえるでしょう。

わたしは、我が国が独自に発展させてきた日本の固体ロケット技術とM-Vロケットを誇りに思います。今後、さらにこの技術を継続・発展させ、将来は木星探査など壮大な科学ミッションの実現にも貢献したいと考えています。

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