現在入社5年目。最初の3年間は種子島宇宙センターにてロケットの打ち上げと宇宙センターの企画・管理系の業務についておりました。昨年4月に筑波のロケットの研究開発センターに異動して以来、今回で2回目となるロケット班の構造系担当として種子島に戻ってきました。
H-IIBロケットは人を乗せたまま宇宙へ飛び立つことはできませんが、実は整備や点検作業のために人が乗り込める“秘密の搭乗口”がいくつかあります。私が立っているのはそのうちのひとつ。直径5.2メートルの第1段目と直径4メートルの第2段目をつなぐ結合部分です。つい先ほど、ここからロケットに乗り込み第2段ロケット側の機器類の取り付け状況の確認をしたところです。
私は打ち上げ時には発射台近くの地下の管制室にて発射管制作業や飛行時のデータ評価を担当する予定ですが、ロケットに乗り込む瞬間は打ち上げの瞬間と同じく私の仕事のクライマックスのひとつです。
理由のひとつにはその作業の重要性があります。
ロケットはひとたび発射台を離れると、何がおきても発射台に戻して修理することができません。また、飛行中のデータから何らかの異変がわかったとしても、後から太平洋の海底から現物を回収して検証することはなかなかできないため、事前の確実な点検と確認によって万全の状態で打ち上げに臨むことが何よりも重要です。
もうひとつの理由としては技術者としての想いがあります。
ロケットの中から外側を眺めたときの感覚は特別なものです。近い将来、有人ロケットを開発したあかつきには、コクピットで打ち上げを待つ宇宙飛行士の視界はまさにこんな感じなのだろうなという気分にさせてくれます。またロケットは、このまま乗っていれば宇宙へ行ける“乗り物”なんだという実感が改めて沸くとともに、この実感の延長線上に有人ロケットを捉えられる瞬間でもあります。
さて、そんな未来のロケットを作るためには、われわれ若手が日々の開発業務からいかに知識と経験に裏づけられた開発スキルを身につけられるかが重要だと感じています。
私がH-IIBロケットの担当として現在の部署に就いた時点では一通りの開発試験は終了していたこともあり、新しいロケットを丸ごとひとつ開発する経験を積む機会は少し先になりそうですが、それまでの間は不具合や技術課題の解決を成長の機会ととらえています。これらの問題は起こらないにこしたことはありませんが、発生してしまったとしても、それらはわれわれ若手エンジニアを確実に育ててくれます。
予定されている打ち上げスケジュールを確保しつつ、確実な処置を施すという一連のトラブル解決のプロセスそのものを経験することがまず何よりも重要です。そしてこのプロセスにおいては、通常現場作業では決して踏み込まない製造工程や設計思想にまで踏み込んだ考察が求められることもあるため、いわば開発を追体験することで技術スキルを身につけられるまたとない好機となるわけです。
それでは長くなりましたが「こうのとり」がいつか宇宙飛行士という「赤ちゃん」を運ぶ日を夢みつつ、まずは確実にH-IIBロケット2号機の打ち上げ成功を目指し、日々の仕事に励むことにしたいと思います。今後とも応援のほどよろしくお願いいたします。
[2010年12月27日 更新]