こうのとり2号機/H-IIBロケット2号機特設サイト

プロジェクトコラム:こうのとり(HTV)

こうのとり(HTV)の設計・開発から打ち上げを経てその後の運用まで、様々な立場でこうのとりに携わるスタッフのコラムをお届けします。

虎野 吉彦 / 担当:HTVプロジェクトチーム プロジェクトマネージャ(HTVプロジェクトの統括)

前回のミッションで、初号機(HTV技術実証機)はほぼ完璧な成功を納めました。皆さんは「今回(2号機)は余裕」と思われるかも知れませんが、私は「今回のほうが厳しい」と思っています。と言うのも、初号機に失敗はつきもので期待度は(多分)98%だったのに成功しました。すると2号機は成功して当然、100%の期待度になってしまいます。万が一失敗したら「1回成功したのに何してるんだ、たるんでるんじゃないか」と言われます。予算が減る中で、失敗も許されない状況になっています。
私が一番心配するのは、この様な状況が関係技術者、作業者等に良くないプレッシャーにならないかと言うことです。人間が一番力を発揮するのは、油断を伴わないリラックス状態です。2号機の打ち上げや飛行管制にはこの良い意味でのリラックス状態で臨んで欲しいと思っています。
一方、特別点検を実施することにもなり、これにも注力する必要が出てきました。新鮮な目で点検して問題の有無を確認し、必要なら是正して、連続成功を目指します。

[2010年12月16日 更新]

和田 恵一 / HTVプロジェクト 開発員

「こうのとり2号機」(HTV2)の軌道計画、及び飛行運用に携わっています。「こうのとり1号機」(HTV技術実証機)から本業務を担当していますが、打ち上げ前に実施する「こうのとり」(HTV)の軌道計画は、最も気を使う作業のひとつです。これにより、H-IIBロケットの打ち上げ時刻や、国際宇宙ステーション(ISS)へのランデブ接近のためのマヌーバ計画などが決定しますので、注意深く立案し、チーム全員で入念に評価・確認しています。
2009年9月に打ち上げられた「こうのとり1号機」の運用中に、国際宇宙ステーションからの映像に初めて「こうのとり」の姿がぼんやりと見えた時、計画した軌道通りに飛んできてくれたことに感謝すると同時に、自分たちチームの軌道計画は間違ってなかったんだ、という安堵の気持ちでいっぱいだったことを思い出します。
「こうのとり」の役割は物資輸送ですが、一方で、人を運ぶことのできる有人宇宙船の要素がたくさん詰まったすばらしい宇宙機でもあります。「こうのとり」の運用に携わっていると、日本初の有人宇宙船の開発と運用の実現が近づいていることを肌で感じることができます。
近い将来、「こうのとり」と同じくらい優れた有人宇宙船を開発・運用できるように、まずは「こうのとり2号機」の成功を目指して、チームメンバーと共にしっかり頑張りたいと思います。応援よろしくお願いします。

[2011年1月21日 更新]

坂下 哲也 / HTVプロジェクトチーム 主任開発員(補給キャリア与圧部システムインテグレーション/与圧カーゴインテグレーション)

新春早々、種子島で最後の与圧カーゴを搭載してきました。与圧部のハッチも無事に閉まり、いま「こうのとり2号機」(HTV2)はH-IIBロケット2号機のてっぺんの衛星フェアリングの中で静かに打ち上げを待っています。(1月14日現在)
「こうのとり2号機」の与圧部は、よりたくさんの荷物を積むために荷物棚や空調配管などの内装を「こうのとり1号機」から大幅に改修しました。見た目にはあまり判りませんが、一皮めくると全く違った設計と言って良いほどです。そこに積み込む荷物も「こうのとり1号機」にはなかった国際宇宙ステーション搭乗員の飲料水が加わりました。種子島宇宙センターの水道水を所定の水質になるように調製して輸送用の水バッグに詰めました。国際宇宙ステーションで水を受け取る立場となるNASAの担当者も種子島に来て、一緒に水の調製や充填工程、水質の確認を行いました。また飲料水を入れるバッグの梱包方法も、バッグを開発したNASAと協力して、自分たちでも驚くほどの早さで設計、共同試験を行って設定することができました。太平洋を挟んだチームワークの賜物です。もちろん水や食糧、着替えといった生活必需品だけでなく、国際宇宙ステーションシステムの交換用部品や、国際宇宙ステーション本来の目的である実験装置、試料をたくさん積み込んでいるのは言うまでもありません。
「こうのとり2号機」のインテグレーションではたくさん新しいことがあったので、「こうのとり1号機」に劣らずワクワクしました。そうそう、船内の照明も新しくLED照明を開発して取り付けてましたっけ。
準備は整いました、これからが本番です。
キッチリ荷物をお届けして、国際宇宙ステーションのゴミをいっぱい詰め込んで無事にミッションを終えられるようがんばります。皆さん、いっそうの御声援をよろしく御願いします。

[2011年1月21日 更新]

佐々木 宏 / HTV2運用管制隊射場班長兼計画管理班長

10年以上かけた開発の苦労を実らせた「こうのとり1号機」(HTV技術実証機)のミッション成功から約1年経ちました。関係者一同、慢心せずに自分の与えられた職務をきっちりこなして、実運用機の最初である「こうのとり2号機」の準備を進めてきました。設計チームは技術実証機の不適合の対策のみならず設計の改善を、運用チームは訓練を通した技能向上と運用の効率化を行ってきました。また、製造企業も細心の注意を払ったモノづくりで、見事な機体を作り上げてくれました。
スペースシャトルや欧州補給機(ATV)の打ち上げが遅れている中、当初の計画通りに「こうのとり2号機」の打ち上げを迎えています。実直に準備してきた成果と言えるでしょう。さらに、遅れてくるスペースシャトルの受入れのための軌道上での移設作業や滞在期間延長など、新しい取り組みもNASAから求められています。このことは、日本の宇宙技術力に対する信頼の証しと言えると思います。
今後の日本の有人宇宙開発への道筋を確たるものにするためにも、このような環境の中HTVミッションのひとつひとつを確実に成功させていくことが重要と考えています。この高い使命感で、関係者一同「こうのとり2号機」のミッションに臨みます。

[2011年1月21日 更新]

三宅 正純 / 有人宇宙環境利用ミッション本部ヒューストン駐在員事務所 所長

ヒューストンに駐在して丸2年になりますが、国際宇宙ステーション(ISS)の運用・利用に関する国際調整会議のJAXA代表として、NASAや他の国際パートナーと、ジョンソン宇宙センターの運用管制センターで日々の調整を行っています。今回はこうのとり2号機(HTV2)の打ち上げ、ISSにドッキングした後、ヨーロッパの補給機(ATV2)やNASAのスペースシャトルが続けざまに打ち上げられ、ISSにドッキングするという非常に過密なスケジュールとなっているため、HTV2の遅れやトラブルが他のパートナーに影響を与えない様、今まで以上に緊密な情報連絡とリスク管理が重要になっています。「きぼう」日本実験棟やこうのとり1号機(HTV1)の運用実績で築いたNASAの運用部隊との信頼関係、人脈はバッチリなので、どんなに困難な調整事項が起きてもチームワークで解決できる自信はありますが、あとは体力勝負ですね。また、苦労を共にしたNASAの仲間と、管制センターの中で喜びを分かち合えるよう頑張りたいと思います。

[2011年1月21日 更新]

深津 敦 / ファンクションマネージャ(機械・推進系担当)・技術支援班長

「こうのとり」の開発・製造中は、機械系・推進系のとりまとめを行っています。そしてミッション中は運用チームを技術サポートすることが業務です。
私は、「こうのとり1号機」が、宇宙を飛行する姿をみた時に、きれいだなあと感じました。国際宇宙ステーション(ISS)にたどりつけば、「こうのとり」が実際に飛行する姿を宇宙飛行士が撮影してくれます。みなさんも、JAXAのアーカイブで見ることができます。この姿をぜひこれからも継続してみなさんに見てもらいたいと思いました。
今回の「こうのとり2号機」も、ISSに行くまでは前回と同じように飛行する計画です。しかし、だからといって2号機が簡単というわけではありません。たとえば今回は飛行する季節も違うので、太陽との位置関係など飛行中の環境は同一ではありません。
また、「こうのとり」はISSとランデブー飛行を行うので、自分の都合だけではなく、ISSともうまく連携ができなければいけません。
そして今回のミッションでは、ISSに辿り着いてから、曝露パレットに乗せて輸送した船外貨物の移送に、カナダの特殊目的ロボットアーム(SPDM)という新しいロボットアームを使います。さらに、2月の下旬にはスペースシャトルの打ち上げも予定されているので、スペースシャトルがISSに滞在中は、「こうのとり」の取り付け場所を変えます。
従って、今回も初めて打ち上げるミッションのつもりで、気持ちを引き締めて、運用チームをサポートし、成功につなげたいと考えています。
今回もまた、美しく「こうのとり」が羽ばたく姿を見てもらえるように、頑張りたいと思います。

[2011年1月21日 更新]

原田 正行 / HTVプロジェクトチーム(プロジェクト管理担当、計画管理班長代理)

5年間に及ぶジョンソン宇宙センターにおけるHTV国際調整支援業務、また帰国後のHTV運用管制設備担当を経て、今年からプロジェクト管理を担当しています。
難しい開発に直接携わる技術者でもなく、安全に飛行させる運用管制要員でもないので、いつも後方や側面からのお手伝いしかできません。面倒な雑務は全部こちらに任せて、最前線のスタッフのみなさんは打ち上げ前の確認、打ち上げ後の運用に専念してください。ミッション成功に繋がるみなさんの力を確信しています。

[2011年1月21日 更新]

内山 崇 / HTVプロジェクトチーム フライトディレクタ(係留中リード)

一昨年になりますが、「こうのとり」1号機がミッションを完遂して以来、NASAに対する我々の説得力が格段に増しました。元来日本製品が有している品質の高さを、宇宙輸送船という新しい分野においても実績で示すことができ、国際宇宙ステーション(ISS)への定期便という役割を確立し、NASAの信頼も勝ち得ました。
“連続成功”これが我々フライトコントロールチームに課された使命です。1号機から1年ちょっと。1号機を実際に飛ばすことで初めて分かった「こうのとり」の"くせ"を分析して熟知し訓練を重ねてきました。我々チームは、いまでは「こうのとり」をすっかり飼いならしています。1号機のときは途中熱を出したりもしましたが、2号機では処方箋を出してもらったので大丈夫。宇宙ゴミに襲われたとしても、ひょいっと避けて飛んでいきます。
「こうのとり」ミッションの醍醐味は、JAXAやたくさんのメーカがフライトコントロールチームとしてALL JAPANで一丸となり、国際宇宙ステーションという世界のフィールドで、宇宙飛行士を含むアメリカ・カナダ・ヨーロッパの仲間たちと協力して行うところです。
仕分けという網に掛かり傷を負うこともありましたが、決して絶滅させることなく、将来は人をも宇宙へ運ぶことができる「こうのとり」に育てていきたいです。まずは連続成功! 一歩一歩です。

[2011年1月19日 更新]

中井 俊一郎 / 株式会社IHIエアロスペース 宇宙技術部宇宙利用技術室主幹

私たちの会社では、機体の軌道や姿勢を動かす推進系、実験機器を載せて「こうのとり」(HTV)から引き出す曝露パレットなど、HTVの中で特に「動き」が多い部分を担当しています。その為なのか、初号機(HTV技術実証機)では地上試験で数多くの不具合を起こし、周囲にもご心配とご迷惑をおかけしました。ただ度々面倒を起こす駄々っ子のようだった初号機に比べ、2号機は今までのところ素直な良い子です。2号機も、きっとミッションを達成できると信じていますが、その日まで気を緩めることなく、皆で厳しく見守り続けたいと思っています。

[2011年1月19日 更新]

田邊 宏太 / HTVプロジェクトチーム フライトディレクタ(HTV2号機リードフライトディレクタ)

HTV飛行管制チーム(HTV Flight Control Team:HTVFCT)は、2009年11月のHTV1ミッション完了直後からHTV2ミッションに向けての準備を進めてきました。具体的には、HTV1ミッションで得られた様々な飛行データの解析評価、NASAのISS飛行管制チームやクルーと協調し、HTV1の経験やHTV2を取り巻く飛行条件を考慮したフライトルールや運用手順の更新、そしてチームとして更なるスキルアップを目指した数多くの訓練・シミュレーションの実施などです。新メンバーも加わったHTVFCTには、厳しい訓練の中でも常に明るく前向きでチームの和を大切にする雰囲気があり、このメンバーとならどんな不測の事態が起きても解決し、前に進む力があると確信しています。
HTVのミッションは、幸せを運ぶ「こうのとり」の如く、宇宙ステーションに滞在するクルーや宇宙ステーションを維持するために必要となる様々な物資や装置を確実に届けることが求められています。私は「継続こそ力なり」という言葉がHTVやHTVFCTにはぴったりだと感じています。近い将来、日本版有人宇宙船への道を拓く力を示すためにも、まずは「こうのとり2号機」のミッションを成功させて後続号機につなげることが我々に与えられた使命です。失敗が許されない状況でプレッシャーも感じますが、この素晴らしい宇宙船と飛行管制チームの能力を信じ、平常心を心掛けてミッションに臨みます。

[2011年1月17日 更新]

鈴木 桂子 / 宇宙環境利用センター 主任開発員

勾配炉ラックの射場輸送前最終確認、および射場でのHTVへの引き渡しまでの作業を担当してきました。
勾配炉ラックは、「きぼう」日本実験棟で既に実験が行われている流体実験ラックや、細胞実験ラックと同時期に開発が開始された実験ラックで、今日に至るまでJAXA、メーカそれぞれ何代にも渡る人々の間をバトンタッチされながら開発・整備がされてきました。私が引き継いだときには実験装置は完成し打ち上げに向けた最終艤装(ぎそう)が残るのみとなっていました。そこから最終確認、射場作業を経て「こうのとり2号機」へ引き渡しましたが、それができたのも今まで勾配炉ラックを開発・整備してきた方々がいればこそのこと。ラックの大きさ、重さ以上の多くの人たちの想いがつまっていると思うと、共にようやくここまで来たとの感慨を抱いています。
種子島での射場作業は初めての経験でした。1日の仕事が終わり、夜道を帰る途中に見える射点の赤色灯と、空一面に広がる天の川の美しさが印象に残っています。種子島での作業ではメーカの方々、HTVプロジェクトや種子島宇宙センターのみなさんのサポートを受け、何とかラックをHTVに引き渡すことができました。
今まで本ラックに関わった皆さん、ありがとうございました。
「きぼう」日本実験棟に到着後、勾配炉ラックはチェックアウトを経て実験を開始します。今後、温度勾配炉の本領を発揮し、いろいろな実験が行われることを楽しみにしています。

[2011年1月14日 更新]

増田和三 / 
三菱重工業株式会社名古屋誘導推進システム製作所 HTVプロジェクトエンジニア 兼 SHOT後方支援班リーダー

HTV2号機の製造は初飛行前の今から2年程前に始まりました。
プロジェクトの台所事情を支える業務。技術要求の主旨を熱く語る設計。必要時期に材料・部品を調えることに奮闘する資材。ひとつひとつの部品を丁寧に組立てる工作。そして、出来上がりを愚直に確認する品証。全ての部門の努力でHTV2号機を作り上げてきました。
昨秋の初号機HTV技術実証機の成功。 宇宙飛行士の“Thank you for the beautiful golden shiny vehicle.”との言葉はHTV担当者の意識を高め、大きく成長させてくれました。
今春のまだ肌寒さが残る深夜の小牧工場。 推進モジュールを載せたトレーラが筑波に向けて静かに出発しました。
夏の暑い陽の中の港。筑波宇宙センターでの熱真空試験を終えたHTV本体(電気モジュールと推進モジュールの結合形態)の出港を見送りました。目的地の種子島宇宙センターでは、一足先に到着していた与圧部と非与圧部とともに、特別編成チームSHOT(Successive HTV Launch Site Operation Team)が待っていました。 射場作業が始まり、2回目となるSHOT隊員の一挙手一投足には慎重さに加え自信が溢れていました。
そして初冬の種子島。ひとつひとつの作業を着実にこなし、HTV2号機はフライト形態に仕上がりました。
今、H-IIBロケット2号機の上で静かにその時を待っています。
その脇でSHOT隊員は打ち上げの瞬間までHTV2を謙虚な気持ちで見守ります。
ものづくり屋としての最高の賛辞である「金ぴかのきれいな宇宙船をありがとう」の言葉を再び聞けることを信じて。

[2011年1月6日 更新]

中村友亮 / 三菱重工業株式会社名古屋誘導推進システム製作所 工作部組立一課組立二係飛昇体組立一班

私は「こうのとり」の組立・機能試験作業に従事している作業者です。「こうのとり」は大きな製品でありながら繊細な作業が多く、精度や正確さが要求され、更に、高額な機能品も多い事から、慎重に作業を行っております。また、機能試験では、取り付けた機能品の電気系統・ガス系統の異常の有無を確認し、製品の健全性を確実に保証していきますが、不注意や、確認ミスにより不適合を見逃すと「こうのとり」だけではなく、国際宇宙ステーション(ISS)で生活している方々の命にかかわるため、日々一つ一つ確実な作業を心掛けています。
「こうのとり2号機」の推進モジュールは、「こうのとり1号機」と同様に工場での完成後、筑波宇宙センターで試験を行い、最終組立機能試験を種子島宇宙センターで実施しています。「こうのとり3号機」の工場での組立試験と「こうのとり2号機」の出張作業が重なり、非常に忙しく厳しい状況でしたが、スケジュール通り進めることが出来、大きな達成感を味わいました。この仕事は大変やりがいを持てる仕事で、この仕事に携われることに感謝し、この先「こうのとり」が無事に羽ばたいていけるよう支えていきたいと思います。
私は「こうのとり」の作業を通じて自身も日々成長していることを実感できました。すべては「こうのとり」を支えている皆様、そして数多くの応援があっての事だと痛感しています。これからも、「こうのとり」を作るメンバー一丸となって確実な作業を行い、「こうのとり」が夢と荷物を無事に宇宙に運び、国際宇宙ステーション(ISS)で生活している方の笑顔を地球に配信して頂ける様、努力していきたいと思います。

[2011年1月6日 更新]

松本 博貴 / 三菱重工業株式会社名古屋航空宇宙システム製作所 宇宙機器技術部 装備設計課 社員

私は三菱重工業に入社以来6年、宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)の与圧部環境制御系設計・運用に携わっています。
「こうのとり」の与圧部は人が宇宙服無しで活動できる空間となっており、地上と同じ1気圧、常温に保つよう環境制御が行われます。特に、宇宙では微小重力となり空気の対流が起きない(重い空気が軽い空気の下に行かない)ために、放っておけば酸素が与圧部内に行き渡らず宇宙飛行士が酸欠になる恐れがあります。そこで与圧部内には空気循環ファンを設置しており、強制的に空気を攪拌(かくはん)することで酸素を隅々まで行き渡らせるように設計してあります。
また、「こうのとり」の与圧部には、実験用ラック、システム補給品、宇宙飛行士の衣服や食料等を搭載しており、これらの物資を確実に国際宇宙ステーション(ISS)まで届けることが「こうのとり」に課せられた使命となります。特に、今回の2号機には宇宙飛行士向けの飲料水を初めて搭載しています。この飲料水は種子島の水をろ過して精製し、NASAの多項目に渡る水質基準を全てクリアした高純度の水です。この飲料水の精製プロジェクトは様々な関係者の方々と共に苦労の連続でしたが、最後はNASAの担当者を納得させる水質の水を作ることができました。この国産の飲料水が初めて宇宙に届けられることが、今回のミッションの注目点の一つと考えています。
打ち上げも目前に迫りミッションの準備が最終段階を迎えておりますが、宇宙飛行士が与圧部で快適に作業し、また種子島の水から作った飲料水をおいしく飲んでもらえるように、最後まで全力で頑張りたいと思います。

[2011年1月6日 更新]

千葉 隆文 / 三菱電機株式会社 HTV量産機プロジェクト部長

三菱電機はHTVの誘導制御系・電力供給系・通信データ処理系の各電子機器が搭載されている「電気モジュール」の製造、試験及びHTV運用支援を担当しています。2009年9月のHTV技術実証機の打ち上げ、ランデブードッキングの成功、そして、その後の運用ミッション完遂。その興奮も覚めやらない中、鎌倉の工場ではHTV2号機用電気モジュール製造、試験の最終段階を迎えていました。HTV技術実証機からの改善点を盛り込みつつ、スケジュールをキープしながら製造、試験の実施及び運用計画の立案、検証を進めてきました。そして、その過程で実施した品質改善の活動は、HTV2号機の品質を更に向上させ、ミッション成功への確固たるステップとなりました。HTV2号機の打ち上げ、ミッション成功に向けて、射場部隊及び運用部隊の関係者一同、最終段階の作業を進めています。応援よろしくお願いいたします。

[2011年1月6日 更新]

堀田 成紀 / 担当:HTVプロジェクトチーム 主任開発員(飛行運用担当)

HTVには開発当初から携わり、ランデブ系の設計/試験業務を経て、2009年からHTVプロジェクトにて、飛行運用を担当しています。振り返ると、社会人人生の7割近くの時間、HTVに携わってきたことになり、いっぱしのエンジニアとしてHTVに育ててもらったようなものです。そのため、昨年の初号機(HTV技術実証機)の成功は感無量でした。
いよいよ打ち上げまで一か月を切り、HTV2号機のフライトに向けて気持ちも高まってきました。初号機のフライト前は、何か想定外のことが起こるのではという不安と緊張の中、スムーズなフライトは敢えて期待せず、どんな困難があっても克服して国際宇宙ステーション(ISS)に必ず到達するという気持ちでした。今回は初号機で学んだ様々な経験を生かして、前回よりも質の高いフライトを目指したいと考えています。初号機ミッション完了以降、フライトの質向上を目標として、運用準備を進めてきました。HTVにおけるフライトの質とは、「時間通り」に「安定」して「安全」に宇宙ステーションに荷物を送り届け、また計画通りに大気圏に再突入することだと考えています。これは、まさにランデブ飛行運用の技術を高めていくことであり、今後計画されているフライトに対してもっと信頼してもらえることになると思います。ランデブ飛行中は緊張の連続ですが、「安定」かつ「安全」な「時間通り」のフライトを実現するため、気を引き締めて臨みたいと思います。

[2011年1月5日 更新]

小鑓 幸雄 / 担当:HTVプロジェクトチーム サブマネージャ(HTVプロジェクトの統括補佐)

新しく素敵な名前「こうのとり」を付けてもらった、HTV2号機の打ち上げに向けた運用準備作業は着々と進んでおり、チーム員の士気が次第に高まって来ているのをひしひしと感じます。初号機(HTV技術実証機)の成功を受けて、ビギナーズラックと言われないように皆全力で取り組んでいます。
継続して成功するためには、個人の専門能力の向上はもちろんのこと、モチベーションの育みと維持。ベクトルを揃えてチームとして仕事をすること。それと、緊張感の中でもユーモアを楽しめる笑顔のある職場が大切と考えています。HTVプロジェクトチームは、まさにこれがぴったり当てはまります。
現在の計画ではミッション中に、日の丸「HTV」の他、アメリカの「スペースシャトル」、ロシアの「プログレス」、そしてヨーロッパの「ATV」と世界のすべての宇宙輸送船が「国際宇宙ステーション」に次々と停泊する予定です。このためにHTVは2か所の停泊ポートを往復するなど、チャレンジングな運用を行います。様々な圧巻シーンを是非ご期待ください。
2号機が軌道上の役目を終えて大気圏で燃え尽き、フライトディレクタの「ミッションコンプリーテッド」の声が上がるまで、関係者一同一生懸命頑張りますので、初号機の時にも増して応援をよろしくお願いします。

[2010年12月21日 更新]