こうのとり2号機/H-IIBロケット2号機特設サイト

インタビュー:ミッションを支える女性

こうのとり2号機とH-IIBロケット2号機のミッションを支えるメンバーとして活躍する女性を代表し、JAXAで働く2人のインタビューをお届けします。


白石 紀子 (ロケット発射指揮者)

― ロケット発射指揮者とはどんなお仕事ですか?

ロケット発射指揮者(LCDR:Launch Conductor)の仕事は、打ち上げ4日前から行われる発射整備作業の指揮を取ることです。発射整備作業では、機体のクローズアウト、電気系の最終点検、火工品の結線やアーミング作業などを行った後、ロケットを射座まで運んで推進薬を充填して打ち上げを行います。これらの作業は推進系・電気系・機構系各系の作業者、設備を運用する作業者など多くの人たちの連携により実施されます。LCDRは射点の近くの地下にある発射管制室の中から打ち上げに向けて実施される全ての作業の進捗状況をモニタし、作業の開始指示や終了の確認を行います。また、推進薬充填が完了した打ち上げ直前のロケットに対して、打ち上げ時刻の270秒前に「自動カウントダウンシーケンス開始」の発令ボタンを押すのもLCDRの仕事です。

― お仕事で大変なことはどんなことですか?

問題等が発生した場合に干渉のないように作業を進めることもLCDRに求められています。特に打ち上げ直前のロケットに対しては、問題が発生しても時間内にトラブルを解決し、定められたロンチウィンドウ(打ち上げ可能時間帯)の中で打ち上げを行えるよう指示を出す必要があります。また、自動カウントダウンシーケンス開始以降に異常があった場合、手動の緊急停止ボタンを押してロケットの打ち上げを中止することも、LCDRに与えられた任務です。的確な判断をするために、ロケットや設備、打ち上げのオペレーションや制約について、さまざまなことを知っている必要があります。当日の緊張を克服し、任務を全うできるよう事前の準備が大変です。

― どんな時にお仕事のやりがいを感じますか?

ロケットが無事に「こうのとり」を軌道に投入し、打ち上げが成功したときの達成感は、それまでの大変さを忘れさせてくれます。長期間のロケットの製作・組立・整備を共に頑張ってきた人たちとその成果を一緒に喜ぶことができるのは、本当に幸せなことだと思います。ロケットが音と光と共に宇宙に向かって飛んで行く姿をたくさんの人に見てもらって、感動してもらえたら嬉しいです。

― こうのとり2号機/ H-IIBロケット2号機のミッションを応援してくださる皆様へのメッセージをお願い致します。

多くの方々に応援していただいたH-IIBロケット試験機の打ち上げ成功から、1年ちょっと。私たちはH-IIBロケットがより安全により確実に宇宙に行けるように開発と製造を進めてきました。H-IIBロケット2号機は「こうのとり2号機」を地上から宇宙へ運び、そこから「こうのとり2号機」が国際宇宙ステーション(ISS)に居る宇宙飛行士のところまで、地上からの荷物を届けます。私たちが作っているロケットが地上と宇宙を繋ぐ任務を無事に果たし、将来宇宙がもっと身近なものになるための確実な一歩となるように、打ち上げを一緒に見守ってください!



前田 真紀 (HTVフライトディレクタ)

― フライトディレクタとはどんなお仕事ですか?

フライトディレクタとは、種子島から打ち上げられた「こうのとり」(HTV)という大きな宇宙船を、安全に国際宇宙ステーション(ISS)まで飛行させるチーム(フライトコントロールチーム:FCT)の統括役です。フライトディレクタが統括役とはいえ、宇宙船の運用はチームワーク。複雑なシステムからなる「こうのとり」をフライトディレクタ一人で飛行させることはできません。10名以上の各サブシステムの専門家に現在の状況を確認し、その様々な情報のかけらを組み合わせて、そのときに最善の処置を判断します。最後に判断するのはフライトディレクタですが、チーム員全員のバックアップがあってこその判断です。

― お仕事で大変なことはどんなことですか?

運用中では、やはり、2つ以上の異なる処置が同時に必要になったときの判断です。2つ以上の処置を同時に行うことはできませんので、必然的にどちらかに絞らなくてはなりません。この判断を非常に早くやらなくてはいけないので、じっくり考えている暇はありません。10秒考えたら、「こうのとり」はあっという間に70km先まで飛んで行ってしまうので(JAXAの「こうのとり」は速いのです!)常に、できる限り早い判断を心がけています。
他には、「こうのとり」は国際宇宙ステーションへ向けて飛んでいくので、いろいろな調整ごとを英語で行わなくてはいけないことです。メールを書くにしても会議をするにしてもすべて英語なので、時々「今日の会議は日本語でやってくれないだろうか…」と思うこともしばしばです。

― どんな時にお仕事のやりがいを感じますか?

何をおいても一つのミッションをやり遂げた時です。訓練などで、度重なるトラブルを乗り越えて、無事やり遂げた時にも感じますが、それはあくまでも訓練。実ミッションとはやはり違います。私はまだフライトディレクタとしてミッションを経験したことがないので、「こうのとり2号機」が国際宇宙ステーション(ISS)と結合する時にはこれまでに感じたことのないやりがいを感じるかもしれません。
また、英語での調整は大変なのですが、そんな中で、一生懸命考えてこちらの思うことを伝え、相手にもきちんとわかってもらえたとき。また、我々が抱えている技術的な課題を共有し、NASA/JAXA一緒になってその対応策を考え、NASAにも協力してもらってその課題をクリアした時でしょうか。そんな時は、我々だけで課題を解決して乗り越えた時よりもうれしいですね。国内でも、たくさんの人の知恵を出し合って、一つの課題をクリアした時というのはやはり気持ちの良いものです。

― こうのとり2号機/ H-IIBロケット2号機のミッションを応援してくださる皆様へのメッセージをお願い致します。

技術実証機の打ち上げから約1年4ヶ月経ちました。「こうのとり2号機」は、すでに打ち上げに向けた準備は整っており、間もなく巣立ちの時を迎えます。今回は、技術実証機よりもよりたくさんの荷物を積んで国際宇宙ステーションへ羽ばたきます。私たちフライトコントロールチームは、その「こうのとり」の羽ばたきを遠くつくばから見守り、安全に飛行できるように支えるのが仕事です。皆さんの応援も、私たちフライトコントロールチームを含む多くの関係者の力となって、一緒に「こうのとり」を支えます。どうぞ暖かく見守って下さい。


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