プレスリリース

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日欧協力としてのH-IIA/アリアン5政府ミッション
相互バックアップ検討状況

平成15年11月5日

宇宙航空研究開発機構

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。


はじめに

1. 基幹ロケット(日本: H-IIA、欧州: アリアン5)

  • 宇宙活動の自立性及び宇宙への独自のアクセス能力保持のため、国が開発/維持/向上
  • 政府ミッション(衛星)打上げに優先的に使用(原則)

2. バックアップの必要性

万一のトラブルによる政府ミッション打上げ中断リスクへの対応

3. 相互バックアップ

Aのロケットにトラブル発生時、緊急性のあるAの衛星をBのロケットが肩代わりして打上げる。肩代わりした場合、トラブル復旧後にBの衛星をAのロケットで打上げることにより相殺。

H-IIA/アリアン5 政府ミッション相互バックアップの意義

1. 相互バックアップの意義

  • 確実な打上げ手段/迅速な代替打上げ手段の提供
  • 打上げ機数の確保による、基幹ロケットの健全性確保

2. 日欧が協力することの意義

  • 双方向性のある対等な協力と互恵性が実現可能
    (背景理由)
    (1) 日欧とも自国/自域内にバックアップ機を持たない
    (2) 政府ミッションの規模、種類が類似(図1と図2)
    (3) 平和利用原則などの類似性

3. 相互バックアップの基本概念

  1. 基本的な考え方(前提)
    • 標準パターンを設定し、リスク管理上のメリット/制約条件を明確化
    • 双方向性の確保(今後、対象ミッションを選定)
    • 自国ミッションを優先(バックアップ打上げ引き受けを義務としない)
  2. 相互バックアップシステムとメカニズム
    • 窓口の一元化(図3)
      バックアップに移行した後も、政府ユーザーへの窓口業務は自国の打上げサービス提供事業者が継続して実施
    • 契約から打上げまでの各フェーズにおける、双方の作業内容と責任を定義(検討状況→ (3)バックアップの概念)

  1. バックアップの概念(ケーススタディ案)(図4)
    • バックアップ用意の決定時期:衛星プロジェクトの開始時期
       ←衛星を両方のロケットに適合するように設計する必要性
    • 契約時期:打上げ22ヶ月前
       ←希望する打上げ時期の確保
       ←ロケット側解析作業期間の確保
    • レベル1バックアップ時期:打上げ10ヶ月前まで
       ←使わないかもしれない打上げ時期確保の限界
      ・打上げ時期を保証
    • レベル2バックアップ時期:打上げ10ヶ月前以降
      ・バックアップ状態の維持
      ・この期間中にバックアップが必要になった場合、直近で可能な打上げ時期を提供

4. 民間における検討

相互バックアップを効率的に機能させるための技術、運用、契約の共通化が必要(今後、検討を本格化)

  • 衛星設計に対する、ロケット相互適合性確保のための要求明確化
    (衛星/ロケットインタフェース、打上げ時の耐振動環境、等)
  • バックアップ側における打上げ準備作業要求

5. 法的側面の検討

  • 第三者損害賠償条約(宇宙損害責任条約)
    日仏双方とも国際条約を批准しており、かつ保険を含む国内制度も整備されているため、顧客となる政府ユーザーは完全に保護されていることを確認。
  • 当事者間損害賠償
    日欧とも、打上げ契約において、当事者間の損害賠償請求権を放棄させており、整合が取れている。
  • 税制面(消費税)での整合性
    打上げのための衛星の輸入及び打上げ事業に対して、欧州では非課税であるのに対し、日本では課税対象であり、今後の検討課題。
  • 安全管理基準
    日本では、高圧ガス取り扱いに関する安全管理基準が厳しい。

6. 政府レベルの枠組みの構築

本バックアップを公平かつ有効に機能させるためには、政府ミッションを包括的に扱うことが重要であり、政府レベルの枠組みの構築が必要。

7. 今後の課題

  • 相互バックアップの仕組みの詳細な検討
  • 運用効率化※1の利点と実現可能性の検討
    (※1: 双方のロケットの特性を活かして積荷を最適化すること)
  • 互換性のあるマニフェスト管理方法※2の検討
    (※2: 打上げ時期及び順序の決定に関する考え方及び責任の所在)
  • 法的制度の互換性/代替策の検討
  • 価格体系の検討
  • 民間は技術面、運用面、営業面※3で協力
    (※3: ロケット互換性検討の継続実施、契約条件の整合性、等)

H-IIA/アリアン5政府ミッション相互バックアップ検討会(参考)

  • 2002年初めにESA、CNES、アリアンスペース社が日本政府(内閣府、文部科学省等)を訪れ、相互バックアップの提案を行った。これを受けて日欧で検討会を発足。
  • 検討会メンバー
    日本側:NASDA(当時)宇宙輸送システム本部、企画部、国際部
    欧州側:アリアンスペース社東京事務所
  • 検討項目
    • 相互バックアップの意義と実現可能性
    • 具体的なバックアップ概念
    • 官民の役割
    • 今後の課題



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