プレスリリース

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高品質タンパク質結晶生成プロジェクト
第2回宇宙実験結果速報

平成15年11月19日

宇宙航空研究開発機構

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。


第2回宇宙実験の運用状況

軌道上

● 実験実施場所; 国際宇宙ステーション (米国実験棟)
● 実験実施期間; 約2ヶ月間
● 実験装置; ・GCF※1 3式 (69個のGCB※2を搭載)
・恒温槽(CGBA※3)
※1:GCF(Granada Crystallization Facility、タンパク質結晶生成装置)
※2:GCB(Granada Crystallization Box、タンパク質の結晶生成用のセル)
※3:CGBA(Commercial Generic Bioprocessing Apparatus)

打上

● 打上日時; 平成15年8月29日 10時47分(日本時間)
● 打上手段; プログレス補給船(12P)

帰還

● 帰還日時; 平成15年10月28日 11時41分(日本時間)
● 帰還手段; ソユーズ宇宙船(6S)




第2回宇宙実験の特徴

  • 高品質タンパク質結晶生成技術の確立のため、第1回宇宙実験で発生した不具合を改良して実施 ([第1回宇宙実験で発生した不具合と処置対策]参照)
  • STS-107ミッションで成果を喪失したテーマのうち、先導的応用化研究テーマの再実施
  • 新たな利用機関の参加(下表の色塗りの4機関) 
    利用機関と搭載タンパク質
    利用機関搭載タンパク質数
    理化学研究所
     横浜研究所ゲノム科学総合研究センター
     播磨研究所ハイスループットファクトリー
     播磨研究所ストラクチュローム研究グループ
    34種類
     13種類
     11種類
     10種類
    農業生物資源研究所 4種類
    蛋白質構造解析コンソーシアム※4(3社) 4種類
    先導的応用化研究(6テーマ) 10種類
    JAXA (リファレンス用標準タンパク質(各GCFに搭載)) 1種類
    合計 53種類(69個のGCBに搭載)
    ※4 【蛋白質構造解析コンソーシアム参加企業】
    エーザイ、 大塚製薬、 キッセイ薬品工業、 協和発酵工業、 三共、 塩野義製薬、 大正製薬、 大鵬薬品工業、 武田薬品工業、 田辺製薬、 第一製薬、 大日本製薬、 中外製薬、 日本新薬、 日本たばこ産業、 帝人、 万有製薬、 藤沢薬品工業、 三菱ウェルファーマ、 明治製菓、 持田製薬、 山之内製薬 (五十音順) (以上、日本製薬工業協会加盟22社)

  • 米国実験棟内の恒温槽(CGBA)の利用(NASAより無償借用)

第2回宇宙実験結果

顕微鏡観察による結晶生成結果の概要

 地上では結晶生成に至らない、または結晶は生成するが、回折データ取得に至らないタンパク質37種類(GCB42個)(下図A)のうち約3割にあたる11種類(GCB13個)のタンパク質(下図B)において、回折データ取得に供することができる単結晶が生成した

11種類のタンパク質:タンパク3000プロジェクト、イネゲノムプロジェクト、創薬に関連するタンパク質

取得した結晶の写真

地上で回折データ取得に至らなかったが、宇宙でX線回折に供することが可能な結晶が得られた例

取得した結晶の写真及び運用上の課題

宇宙で結晶は得られたが
回折データ取得に至らない例
宇宙で結晶生成に至らなかった例
(沈殿・アモルファス・オイル)

○運用上の課題
 約3割のGCBにおいて、GCB内のタンパク質溶液を保持するキャピラリ(細管)からタンパク質溶液の減少が認められた。原因については、現在調査中であり、調査出来次第対応策を検討する。

今後の予定

  • 第2回宇宙実験で得られた結晶については、利用機関において3ヶ月程度(平成16年1月末頃)を目処に、放射光施設等によるデータ取得及び結晶品質の評価を行った後、構造解析を実施し、6ヶ月〜1年後を目処に結果をとりまとめる予定。

  • 現在、平成16年1月下旬の打上げに向け、第3回の宇宙実験の準備作業を進めている。(搭載するタンパク質の最終決定は打上げの約1ヶ月前(平成15年12月下旬)を想定)



第1回宇宙実験で発生した不具合と処置対策


(参考)
バックアップチャート

プロジェクトの特徴と概要

■プロジェクトの特徴

  • ロシアとの商業利用契約とESAとの技術協力
  • 継続的、安定的な宇宙実験機会の確保
  • ポストゲノム時代への対応

■プロジェクトの概要

  • 実験実施場所: 国際宇宙ステーション サービスモジュール/米国実験棟
  • 打上げロケット: プログレス無人貨物船
  • 回収宇宙船: ソユーズ宇宙船
  • 実験実施回数: 2003年2月以降3年間、年2回(計6回)を予定
  • 実験実施期間: 2〜4ヶ月
  • 実験装置: GCF(Granada Crystallization Facility)(ESAより借用) 4回(2004年)以降は、高密度化した結晶生成ユニットの利用を予定

利用機関とJAXAとの作業分担と成果の帰属

相互の実施事項及び役割分担を明確にした共同研究体制を組み、成果は相互に分担する事項について単独で所有する。

<作業分担>

利用機関
  • タンパク質試料の準備
  • タンパク質結晶の構造解析による結晶特性の評価
JAXA
  • 結晶化条件の検討
  • 微小重力環境での実験装置の整備及び打ち上げ、軌道上運用、回収作業

<成果>

利用機関
  • タンパク質の発現・精製法
  • タンパク質結晶の構造及び座標データ
JAXA
  • 結晶化条件の検討システム技術
  • 軌道上結晶生成システム技術

実施体制及び国内利用機関との利用の枠組み(第2回宇宙実験)


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