プレスリリース

プリント

国際宇宙ステーション飛行継続に向けたNASAの対応について

平成15年12月3日

宇宙航空研究開発機構

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。


1. 報告事項

 平成15年11月7日(日本時間)に、米国航空宇宙局(NASA)が公表した「国際宇宙ステーション飛行継続に向けたNASAの実施計画書」(NASA's Implementation Plan for International Space Station Continuing Flight)(以下「ISS実施計画書」)について概要と今後の対応を報告する。

2. ISS実施計画書の内容

(1)位置付け

  • NASAは、コロンビア号事故調査委員会(CAIB)報告書の勧告等を踏まえ、スペースシャトル計画のみならず、国際宇宙ステーション(ISS)計画においても改善事項の抽出・検討を実施。
  • NASAは、コロンビア号事故から学んだこと(lessons learned)を如何にISS計画に反映させるかについて検討し、ISS実施計画書として文書化。
  • NASAは、先に公表した「スペースシャトル飛行再開実施計画書」をCAIB報告書への対応の第1分冊(Volume 1)、ISS実施計画書を第2分冊(Volume 2)と位置付け。
  • NASAは今後、ISS実施計画書を適宜改訂の予定。
  • 本検討に際して、NASAは、本部の取りまとめのもとジョンソン宇宙センター(JSC)、ケネディ宇宙センター(KSC)、マーシャル宇宙飛行センター(MSFC)、ステニス宇宙センター(SSC)からの参加を得てチーム(CFT:Continuing Flight Team)活動を実施。

(2)構成・概要

  • ISS実施計画書の構成は、添付(目次)のとおり。
  • 第1部(Part 1)では、CAIBの勧告(Recommendation)の意図をISS計画に水平展開し、NASAの対応内容を記述(第1部対応概要)。CAIB勧告29件のうち、12件を他の勧告に統合し1件(射場関連)をISS計画への適用無しとして、計16件に集約して検討。
  • 第2部(Part 2)では、NASAのマネジメント文化やプロセスの見直しを行う活動の中で、改善を要する事項を記述(第2部対応概要)。NASAは今後、CAIBの気付き事項(Observation)への対応内容も追加予定。
  • 第2部に記述されたNASAのISS改善活動(13件)は以下のように大別される。
    1. 安全管理・審査プロセス等の見直しに関するもの
      • ウェーバ(特認)等の妥当性と許容性の再確認(ISS-1)
      • 危険報告(ハザードレポート)の不適合許容根拠の再確認(ISS-2)
      • 飛行準備の認証プロセスの改善(ISS-3)
      • 重要品目リストの再確認(ISS-4)
      • 安全報告システムに対する認識の改善(ISS-11)
      • 品質保証プロセスの改善(ISS-12)
    2. 開発・運用に関するもの
      • 異常解決プロセスの再確認(ISS-5)
      • システムの性能傾向把握の改善(ISS-6)
      • ハードウェアの寿命管理の改善(ISS-7)
      • ISSのハード・ソフトの機能改善(ISS-8)
      • ソフトウェアの開発・維持プロセスの改善(ISS-10)
    3. リスク管理に関するもの
      • 緊急時行動計画の見直し(ISS-9)
      • リスク管理手法の改善(ISS-13)

3. ISS実施計画書を踏まえたJAXAの検討

 ISS実施計画書に基づくNASAの措置状況の確認、JAXAとしての自主的な対応の検討を継続実施していく。



ISS実施計画書


目次 (抜粋)

序文

概要

NASAの対応概要

第1部-コロンビア号事故調査委員会(CAIB)勧告に対するNASAの 対応第2部-ISS継続的改善アクション-他の是正処置

第1部-コロンビア号事故調査委員会(CAIB)勧告に対するNASAの対応

(省略) 【注: CAIBの29件の勧告(Recommendation)のそれぞれについて、勧告の意図をISS計画に水平展開し、NASA ISSプログラムの対応内容をまとめたもの。
勧告29件のうち、12件を他の勧告に統合し、1件(射場関連)をISS計画への適用無しとして、計16件に集約して検討がされている。】

第2部-ISS継続的改善アクション-他の是正処置

付録A-NASAのISS飛行継続チームのプロセス


概要(Summary)

 コロンビア号事故調査委員会(CAIB)はコロンビア号事故の直接および間接的原因について調査し、その結果をCAIB報告書として2003年8月に公開した。CAIB報告書はスペースシャトルプログラムだけでなく、NASA全体にとってもクリティカルな問題について取り扱っている。NASAは所見を受け入れ、勧告を受け入れ、報告書に応じる。さらにNASAは、国際宇宙ステーション(ISS)を含めた他のプログラムへの、この報告書の適用性について分析している。

 スペースシャトル飛行再開計画チーム(Space Shuttle Return to Flight Planning Team)は、シャトルを安全に飛行再開させるために必要な対策に重点的に取り組んでいる。ISSプログラムの担当者たちはその重要な取り組みに全面的に参加し、彼らによる成果はNASAによるCAIB報告書への対応の第1分冊(NASAのスペースシャトル飛行再開とその後に向けた実施計画)に記されている。さらにNASAは、是正措置を積極的に実施する目的で、組織の徹底的な評価に取り組んでいる。NASAはCAIB報告書の検討と、その中でISSプログラムに適用すべき部分の識別、それらの部分についての取り組みが行われていることを保証させた。ISS飛行継続チーム(Continuing Flight Team:CFT)を組織した。本文書(NASAによるCAIB報告書への対応の第2分冊:NASAのISS飛行継続に向けた実施計画)の目的は、これらの所見と、必要なアクションの完了に向けた我々による進捗を文書化するものである。

 第1分冊と同様、第2分冊も、我々が各項目に取り組む上で必要な活動を理解するのに伴い、発展し続ける。我々は計画の変更や、CAIB報告書から得たISSプログラムにも関連する教訓の実施経過を反映するために、第2分冊を定期的に更新する予定である。第2分冊の更新には改善事項への対応や、間もなく発表されるCAIB報告書の残りの分冊によって追加されるあらゆる教訓も含まれる。コロンビア号事故とCAIBの調査結果から得た教訓の活用は事故直後に開始された。CAIBが調査を実施している間、ISSプログラムはそれ自体のプロセスと運用の徹底的な調査を、継続的な改善実施の下で開始した。目的の1つは、最小化されていないリスクの存在の識別と、残存リスクを幹部/上層部に認識させる(management attention)の取り組みであった。CAIBが最初の調査結果を発表した際、ISSプログラムはそれらのISSへの適用性について評価した。他の継続的な改善活動は、3年間のクルー滞在によるISS運用と、5年間のISSシステム運用から得た経験に由来している。

 飛行継続チームによる評価と実施計画組織(Implementation Plan Organization)
 飛行継続チーム(CFT)はCAIBによるあらゆる勧告と気付き事項を、そのISSへの適用性について評価した。CAIB勧告のいくつかは、スーペスシャトルの設計またはプロセスに限定されたものであった。他はNASA全体としての安全および技術的プロセスに影響を与えるものであった。CAIB報告書は、ISSプログラムに適用可能な貴重な教訓を提供している。本分冊の第1部ではISSに適用すべきCAIB勧告について述べている。それらの勧告のいくつかはISSには具体的に適用できないが、そこに根ざす意図はISSプロセスの改善に役立つ、貴重な見識を与える。第2部では、ISSプログラムにおける数多くの継続的な改善について述べている。CAIBの気付き事項については、次の改訂版の第2部で取り扱う予定である。

 勧告に根ざす意図が、別の勧告について書かれた第1部や、継続的な改善について書かれた第2部において扱われる場合、テーマについて述べる文脈の場所については参照がつけられる。

 IMCE評価からの利益享受
 CAIB報告書はISS外部独立評価委員会(ISS Management and Cost Evaluation:IMCE)について、いくつか言及している。IMCEはISSプログラムの費用、スケジュール、技術、および管理インフラの徹底的な審査を実施した。このタスクフォースは大統領の2002年会計年度(FY2002)予算案の直接的な結果として組織され、ISSのフルポテンシャルと国際的なコミットメントを果たすために必要なコスト管理を実行することと、ISSプログラムの信頼性を回復することが根底にあった。委員会はISSプログラムの独立的な評価を実施し、2001年11月1日に発表されたIMCE報告書の中で、NASAへ12の勧告を提示した。それらの勧告はISSプログラム管理と費用管理改善のためのロードマップとなった。

 IMCEによる所見と勧告に対応して、ISSプログラムは信頼性があり効率的な費用見積りと管理システムを実施し、それは費用とリスクを管理するための構造化され統制されたプログラムを提供した。

 ISS運用は続行中
 コロンビア号の喪失を受けたスペースシャトルの飛行中断は、ISSプログラムに多大な影響を与えた。スペースシャトルによって提供されるはずであった機能の損失は、ISS組立の遅延や、補給と研究に必要な積荷量を大幅に縮小する結果となった。地球へ回収する量(down mass)の低下は故障したハードウェア、科学研究の成果、環境サンプルの回収機能に影響を与えた。これらの問題に対して、ISSの有人運用を継続させる計画が策定され、ISSパートナー国によって同意された。この計画では、ロシアのプログレス補給船が積荷の補給に使われ、同国のソユーズ宇宙船がクルーの交代に必要となる。この計画は全てのパートナー国による協力と努力によって実施されている。

 2003年10月18日、ISSに向け第8次長期滞在クルーがロシアのソユーズ宇宙船によって打ち上げられた。コマンダーのマイク・フォールとフライトエンジニアのアレクサンダー・カレリの2人は、ISS上で192日間過ごす予定で、研究やISSシステムの維持を行う。第7次長期滞在クルーコマンダーのユーリ・マレンチェンコとISSサイエンスオフィサーのエドワード・ルーは185日間の軌道上滞在を終え、2003年10月28日に地球へ帰還する。ISSクルー交代時の訪問クルー(タクシークルー)メンバーとして、欧州宇宙機関のスペイン人宇宙飛行士のペドロ・デュークはISSに8日間滞在し、様々な実験を行う。ISSプログラムチームは今後もミッション実施に力を注ぐと共に、クルーを安全に支援する。

 ISSのパートナーシップは強力である
 ISSの国際パートナーシップは、NASAがスペースシャトル飛行再開の活動に取り組む間、ISSにクルーを滞在させ安全に運用するという挑戦のためにさらに強力なものとなった。スペースシャトルの飛行中断はISS運用にとって困難ではあるが、ISSを建設したパートナーシップの精神は、この困難な時期においてもISSを維持できるであろう。

 ISSプログラムの統合された国際的性格とその運用は、プログラム構造の全レベルにおける明瞭な意思伝達と調整の必要性を強調した。統合された国際的性格による、ISSプログラム成功の1つのキーは、プログラム構造のあらゆるレベルにおいて、国際パートナー間に明確な意思伝達と調整を確立し維持してきたことであった。我々がISS運用で経験を積むにつれ、より一層の効率性向上につながる意思伝達の向上を実感した。スペースシャトルの飛行中断と、それに伴う打上げ重量(up mass) と回収重量(down mass) の制約が、パートナー国間の意思伝達にさらなる改善をもたらした。

 NASAが今後も国際パートナーと密接に協力し、常に話ができる状態を保つ間、ISSプログラムはコロンビア号から得た教訓の成果として、プロセスの改善とその強化を実施する。これらの変革は国際的協定の枠組みの中で実施される予定である。

 結論
 ISS CFTの実施計画書初版は、コロンビア号事故から得た教訓についての今日までの審査結果と、ISSの継続的改善活動についてまとめたものである。本実施計画書は最近の対応実施を識別し、ISSプログラムの改善とリスク最小化を考慮した技術的、管理上のオプションの概要を述べ、解決策が策定中である今後の活動の識別を行うものである。

 ISSの今後の飛行において、クルーと機体の安全は最優先事項である。コロンビア号とそのクルーの犠牲から学ぶと同時に我々は、スペースシャトルが飛行中断となっている間にも、米国、ロシア、その他の国際パートナーの宇宙飛行士が宇宙を飛んでいることを忘れてはならない。彼らがISSを運用し、研究を実施するための安全な環境を提供することは我々にとっての最も大きな挑戦なのである。

対応概要(Response Summary)
第1部-コロンビア号事故調査委員会(CAIB)勧告に対するNASAの対応

以下に、コロンビア号事故調査委員会(CAIB)の勧告に対する飛行継続チーム(Continuing Flight Team:CFT)の対応概要を、報告書中の順序に従って示す。各々の回答の具体的な詳細は、この実施計画(implementation plan)の次のセクションで詳述する。この計画はまだ最終版ではなく、定期的に更新する予定である。

熱防護システム

R3.2-1
全ての外部燃料タンクの熱防護システムからの破片脱落、特にバイポッド支柱が外部燃料タンクへ取り付けられている箇所に重点をおいて、その発生源において取り除くための積極的なプログラムを始めること。[RTF]

この勧告はスペースシャトル打上げ時に発生する浮遊するハードウェアによる脅威について述べたものであるが、国際宇宙ステーション(International Space Station:ISS)プログラムはISS機体とその他の輸送機の安全もまた、制御不能なハードウェアによる脅威の防止にかかっていると認識している。ISSは軌道上の機体と輸送機(ソユーズ宇宙船、プログレス補給船、ATV(Automated transfer Vehicle)、宇宙ステーション補給機(H-II Transfer Vehicle))による破片の発生を防止するように設計されている。さらに、外部汚染物質の発生の制限も要求している。

潜在的な破片発生源に関連した脅威を排除するための運用ステップが取られている。既存のリスク最小化手段がこの潜在的なハザードの管理と評価のために講じられている。ISSプログラムマネージャ、設計技術者、クルー、フライトコントローラ、訓練インストラクター、それに安全チームはこのリスク最小化の保証を今後も行っていく。

R3.3-2
RCC(Reinforced Carbon-Carbon)やタイルを、耐衝撃性を有するよう改良し、機体の破片による軽微な損傷に耐える能力を向上させるためのプログラムを始めること。このプログラムは、現在の材質での実際の耐衝撃性と、起こりうる破片の衝撃による影響を明らかにすること。[RTF]

この勧告の根本的な意図は、第2部のISS継続改善アクションISS-8に述べられている。

R3.3-1
全てのRCCシステム構成品の構造的な強度が保たれていることを確認する総合的な検査計画を開発し、実行すること。この検査計画には最新の非破壊検査技術を取り入れること。[RTF]

この勧告の根本的な意図は第1部、R4.2-4に述べられている。

R6.4-1
国際宇宙ステーション(ISS)へのミッションについて、ISSの近傍あるいはドッキングした時に使用可能な機能を用いて、タイルとRCCの両方を含む熱防護システムの可能な限り広い範囲の損傷を検査し、緊急修理を実施するための実用的な方法を開発すること。

ISS以外のミッションにおいては、可能な限り広い範囲の損傷シナリオに対処するための総合的自律(ISSから独立した)検査および修理方法を開発すること。

適切な利点と機能を利用することによって、全てのミッションにおいて早い時期に、軌道上での熱防護システムの検査を遂行すること。

最終目標は、全てのミッションにおいて、ISSミッション時に正しい軌道に到達できない、あるいはドッキング失敗、ISS分離中や分離後の損傷等の可能性に対処する十分な自律的能力を持つことである。[RTF]

ISSプログラムはスペースシャトル・プログラムと協力して、スペースシャトル熱防護システムの検査と緊急修理の手法の開発に取り組んでいる。ISSプログラムは、軌道上機体検査要求と実施の詳細について妥当性の評価を行った。これらの要求はスペースシャトルが飛行中断していることを考慮し、不適切となった。この状況に対して、ISSプログラムはISS上の機材を利用した外観画像検査の実施のための体系的なアプローチ法を開発した。

ISSプログラムはISS上の機材を使って、ISSの外観検査を定期的に実施する計画を制度化した。外部カメラによるISS外観検査は完了した。結果は、ISSの外部ハードウェアはおおむね予定通りに機能していることを示し、重大な不具合は出ていない。ロボット機材とクルーの観察による残りの外観検査は、完了・解析され、結果が報告されなければならない。これらの検査は2004年4月までには実施されることが見込まれている。検査が実施される頻度は、検査による結果を基に設定、調整される。

R3.3-3
翼前縁構造サブシステムへの軽微な損傷を伴っていても、地球大気への再突入を成功させるための機体の能力を、可能な範囲で向上させること。

この勧告の根本的な意図は第1部、R4.2-4に述べられている。

R3.3-4
RCC部材の本当の材料特性を理解するために、破壊試験と評価によって使用中のRCCの材料特性の総合的なデータベースを開発すること。

この勧告の根本的な意図は第1部、R4.2-4に述べられている。

R3.3-5
RCC部材に対する射点の亜鉛下塗材(塗料)の浸食を最小限にするために、射点構造物のメンテナンスを改善すること。

この勧告はISSには当てはまらない。

R3.8-1
RCCのメンテナンスの判断が、スケジュールやコストや他の事項に左右されず、部材の規格に基づいて決定されるように、十分な予備のRCCパネル組立及び関連部品を準備しておくこと。

ISSには強化炭素複合材(RCC)は使われていないが、生命維持と運用維持の提供に必要な多数のシステムがある。スケジュールの圧迫に従って下される決定を最小限にするための予備部品の重要性に重点をおき、ISSプログラムはその予備部品の準備計画とプロセスの妥当性について調査した。ISSプログラムの計画とプロセスは妥当であると判明した。

シャトル事故後、コロンビア号事故調査委員会の勧告への対応として、ISSプログラムの節約計画が、スペースシャトルの飛行中断期間の延長に合わせて調整されていることを確かめるために、補給保全計画の評価を行った。このプロセスは中断期間の延長に伴って継続され、予備部品の製造に影響を与えるクリティカルな決定が行われる。これら多数のクリティカルな軌道上交換ユニット(orbital replaceable unit:ORU)の予備部品は、軌道上に前もって配置されている。コロンビア号の喪失以後、寿命に限りのある品目と大型のORUの供給能力は、プログレス補給船とソユーズ宇宙船の能力に制限されている。

R3.8-2
破片衝突による熱防護システム損傷評価用の、コンピュータ解析モデルを開発・検証および維持しておくこと。これらのツールは、機体が破片によって受ける可能性のある衝突損傷に関する、現実的かつタイムリーな評価を提供するものである。軌道上での検査と修理等の是正措置を行う際の基準を確立すること。

CAIBのアクションがシャトルへの破片衝突に特有のものであったことに対し、ISSプログラムは、軌道上の運用、不具合の解決、そして意思決定プロセスに用いられるあらゆるISS解析モデルとツールの評価を開始した。ISSプログラム委員会は、モデルの基本的条件、制約、範囲が理解でき許容できるものであることを確認するため、モデルの審査を実施している。ISSプログラム委員会は、彼らの評価の結果必要だと識別されたいかなる強化についても対処する。

R3.4-1
画像システムを改善し、シャトル打上げから少なくとも固体ロケットブースタ分離までの過程で、予想される上昇方位角において有用なシャトルの画像を最低3種提供できるようにすること。これら項目の運用ステータスを、今後の打上げのための許可基準に含めるものとする。これに加えて上昇中のシャトル画像を提供するための、船や航空機の使用を検討すること。[RTF]

この勧告の根本的な意図は第1部、R6.3-2とR6.4-1に述べられている。

R3.4-2
分離後の外部燃料タンクの高解像度画像を入手・ダウンリンクするための機能を備えること。[RTF]

この勧告の根本的な意図は第1部、R6.3-2とR6.4-1に述べられている。

R3.4-3
機体翼前縁部の下側および、両翼の熱防護システムの前方部の高解像度画像を入手・ダウンリンクするための機能を備えること。[RTF]

この勧告の根本的な意図は第1部、R6.3-2とR6.4-1に述べられている。

R6.3-2
軌道飛行中の各シャトルの飛行画像を標準要求とするための、国家地図作成局(National Imagery and Mapping Agency: NIMA) との協定書を改訂すること。[RTF]

ISSプログラムは、ISSの外観状態についての軌道上評価の支援に国家の機能を活用する。

NASAは既にNIMAとの間で、各機体の状態についての軌道上評価を標準要求とする協定書を締結している。NASAは組織コミュニティ間において、機体の状態についての評価を行う国家の機能の適切な活用についての議論を開始した。同様にこの取り組みは、ISSの状態を確認するため、要請に応じてISS機体にも適用された。

このアクションが機密情報の受け取りと取り扱いを伴う可能性があるため、その実施中には適切なセキュリティ保護対策が講じられる。

R3.6-1
各機体の組込み式補助データシステム(MADS)の計装・センサシステムに対し、最新のセンサ及びデータ収集技術を取り入れて維持及び改良を行うこと。

ISSプログラムは、機体の耐用年数を通じて機体性能特性データが必要であることを認識している。ISSはシャトルに比べテレメトリに大きく依存しているが、それはISSが軌道上に継続して留まるためである。ISSシステム性能評価のための計装機器は運用テレメトリ要求と組み合わせて、統合されたテレメトリ機能を提供する。

ISSプログラムは、機体性能特性を知るための計装を評価した。耐用年数を通じたISS機体性能の、構造的性能などのクリティカルなエリアを識別する我々の能力を強化するための構想が評価されている。

R3.6-2
組込み式補助データシステム(MADS)を再設計すること。新たに設計されたシステムは技術的な性能情報と機体の健全性に関する情報を含み、また、特定のデータの記録またはダウンリンク(あるいは必要ならばその両方)を行うために飛行中の再設定を可能とする機能を持つこと。

この勧告はR3.6-1への対応に統合されている。

R4.2-2
Shuttle Service Life Extension Program (シャトル耐用年数延長プログラム:SLEP)及び潜在的に耐用年数40年となることも考慮し、機体の全ての配線(アクセス不可能な配線も含む)を検査するための最新の手法を開発すること。

ISSシステムの性格は、物理的な配線検査を軌道上で実施するよう指示できるものである。いったん運用されると、ISSの配線がさらされる環境は、軌道上の使用状態に左右される。船内の配線は日々の作業内で操作されるハードウェアの近くであれば、損傷に耐えられるようになっている。通常のISSシステム維持の一環として、配線の混み合った場所への定期的な検査を実施する計画が行われている。船外の配線は、地球低軌道での流星塵および軌道上デブリ環境において運用できるよう設計されている。

軌道上のISS部品は取り付けられてから5年しか経っていないが、ISSプログラムは、老朽化の問題への対応として、定期的な配線検査を追加で実施するべきか否か評価する。

R4.2-1
ボルト・キャッチャーフライトハードウェアそのものの検査及び認定を行うこと。[RTF]

この勧告の根本的な意図は、第2部のISS継続的な改善アクションISS-12に述べられている。

R4.2-3
全ての最終工程(クローズアウト)及び外部燃料タンクの中間タンク部分の手動スプレー過程には、最低二人の従業員が立ち会うこと。[RTF]

ボーイング社のハードウェア作業工程で使われるISSの手順書を審査し、クリティカルな手順の品質管理に関するCAIB勧告を満たすことを確認した。これらの指針は、ケネディ宇宙センター(KSC)で作業する全ISSプログラムハードウェアに適用する予定の標準的な手法と手順(Standard Practice and Procedure)として定形化しているところである。KSCで作業する全ISSプログラムハードウェアへ適用を拡大するための文書類は、2003年11月に発表する予定である。ISSはKSCでの全フライトハードウェアの独立した最終工程を要求する。

R4.2-4
流星塵および軌道上デブリに関して、スペースシャトルも、ISS用に計算されたものと同程度の安全性で運用すること。流星塵及び軌道上デブリに対する安全基準については、「ガイドライン」から「要求」へ変更すること。

流星塵および軌道上デブリ(MMOD)はISS、シャトル、その他の宇宙船における継続的な懸念と考えられている。ISSは流星塵と軌道上デブリに長期間さらされることを想定して設計されている。ISSには強固なシールド防御と運用手順が実施されており、MMODが誘引するクルーや機体を脅かすリスクを最小化するため、今後の組立ミッション中にはこれらが実施される予定である。さらに、ISSのハードウェアはMMODシールドによってプログラムの寿命を増強できるように設計されている。

R4.2-5
ケネディ宇宙センター品質保証担当部署とUSA社は、「異物混入」について分かりやすい産業標準の定義に統一し、「プロセス中の異物」といった誤解を与える可能性のある定義を共存させないこと。[RTF]

ISSプログラムの技術者たちはシャトルの技術者たちと協力して、CAIB報告書へ対応するための適用可能な基準の審査と、異物混入(FOD)制御計画を策定している。シャトルの技術者たちとの密接な協力は、飛行運用とISS性能に対するFODのリスクを最小限にするための一貫した共通的なアプローチを保証するものとなる。

R6.2-1
利用可能な資源に見合ったシャトル飛行スケジュールを採用し、これを維持すること。スケジュール上の期限は大切な管理上のツールではあるが、スケジュールを守るために起きるかもしれない新たなリスクを認識し、理解し、受け入れるためにも、期限を定期的に見直す必要がある。[RTF]

我々の最優先事項は常に安全に飛行し、ミッションを成功裡に達成することである。我々は必要なマイルストーンが達成されたときにだけ飛行し、スケジュールの都合によって駆り立てられるものではない。

ISSプログラムは利用可能な資源に見合った開発および運用スケジュールを採用した。このスケジュールはシャトルのそれに連携したものでなければならない。これら2つのプログラムのトップレベルのスケジュールは共同(シャトルとISS)プログラム要求管理会議(joint PRCB)のアクションを通して、統合されリスクの評価が行われる。さらに、いくつかのISSプログラム管理プロセスとツールの実施を通じて、技術的、コスト的およびスケジュール的なリスクとそれらの最小化計画が定期的に評価される。データはひとつのNASA管理情報システム(Management Information System)に保管されることによって、宇宙飛行事業部(Space Flight Enterprise)の上級管理者たちがリアルタイムでスケジュール実施インジケータとリスク評価を実質的に評価できるようになっている。

R6.3-1
ミッション・マネージメント・チームに対して、打上げ・上昇以降に直面する可能性のあるクルーと機体の安全上の非常事態に関する訓練を実施すること。これらの非常事態にはシャトルもしくはクルーの喪失や無数の不確定・未知な事態を含むこと。この際、ミッション・マネージメント・チームにはNASAの契約業者ラインや様々な場所における支援部隊を組織し、連絡を取ることが要求される。[RTF]

シャトルのミッション・マネージメント・チーム(MMT)と同様に、ISSミッション・マネージメント・チーム(IMMT)は軌道上のISSの運用に関するプログラムの監視とマネージメントに責任がある。CAIBの勧告への対応として、ISSプログラムはIMMT関連の訓練計画の妥当性を含め、IMMTの設置取り決め及びプロセスを精査し、改訂を行う作業を開始した。さらに、MMTとIMMTの共同プロセスの統合をより確かなものとするため、ISSプログラムは共同シミュレーションの事例の意味でスペースシャトルプログラム(SSP)に参加し、スペースシャトルMMTが計画しているすべての軌道上の訓練に全て参加する予定である。

R7.5-1
技術的な要求及び当該要求に関するウェーバ(特認)の全てに責任を負う独立した技術・工学専門機関(Technical Engineering Authority)を設置し、統制のとれた系統的な手法によって、シャトル・システムのライフサイクルを通して危険を認知、分析、管理すること。独立技術・工学専門機関は最低限以下の事を行うこと。
  • 全スペースシャトル・プログラムのプロジェクトと要素に関する技術標準の開発と維持
  • 全技術標準について、ウェーバを許可する唯一の機関となること
  • サブシステム、システム及び事業(enterprise)レベルでの、傾向分析とリスク分析の実施
  • 不具合モード・影響分析・ハザード報告システムの構築
  • 統合的なハザード解析の実施
  • 異常なイベントと異常でないイベントとの識別
  • 独立した打上げ準備状況の検証
  • 勧告R9.1-1で要求されている再認証プログラム条項の承認
技術・工学専門機関はNASA本部から直接出資されるが、スケジュールやプログラムの費用については無関係とすること。

R9.1-1で要請されているように、スペースシャトル飛行再開(RTF)の前に、NASAは改善された組織的構造と管理手法へと我々を導き、CAIBの勧告7.5-1から7.5-3を実施するための確固としたマイルストーンを持つ包括的な計画を策定する。今後数ヶ月のうちに、NASAは議会へオプションとマイルストーンの策定に関する進捗を報告することになっている。ISSプログラムはこのプロセスに関与している。

NASAはCAIBの勧告7.5-1と7.5-2に対応するために必要な組織的変更に全力で取り組む。これらの変更の実施とその制度化のプロセスには予算の経路、要求の所有権の決定、飛行準備完了認証責任の識別などの検討と、NASAの飛行センターの費用、スケジュール、技術事項の責任の明確化などが含まれる。

R7.5-2
NASA本部の安全・ミッション保証局(S&MA)は、スペースシャトル・プログラム全体の安全組織に対しての直轄的権限を持ち、独立したリソースを持つこと。

この勧告への対応はR7.5-1への対応に統合されている。

R9.1-1
R.7.5-1, R7.5-2, R7.5-3で述べた、独立技術・工学専門機関および、独立安全プログラム、再編成されたスペースシャトル・インテグレーション・オフィスを定義し、設立し、業務を移行し、実施するための詳細な計画を立てること。更に、NASAは予算査定プロセスの一環として、その実施活動状況について議会に年次報告を提出すること。[RTF]

この勧告への対応はR7.5-1への対応に統合されている。

R7.5-3
スペースシャトル統合(インテグレーション)オフィスを再編成し、機体を含むスペースシャトル・プログラムの要素全体を統合出来るような機能を持たせること。

ISSプログラムでは、必然的にプログラムの統合に集中することが必要となる。ISSの統合機関として、NASAはISSの設計、開発、運用及び利用に関する統合プロセスの多国間定義を取りまとめてきた。様々な国・組織の文化や協力関係が融合しているため、確実にISSプログラムの目的を達成させ、全ての懸案と異常をタイムリーに解決するためには、プログラム統合機能が重要であるということをNASAは認識している。

R9.2-1
2010年以降にシャトルを運用する前に、材料、コンポーネント、サブシステム及び、システムレベルについて、機体の再認証を開発し、実施すること。再認証の要求は耐用年数延長プログラム(SLEP)に含むこと。

この勧告の根本的な意図は、第2部のISS継続改善アクションISS-7で述べられている。

R10.3-1
技術図面と異なる全てのクリティカルなサブシステムの最終工程写真に関する暫定的なプログラムを開発すること。軌道上でのトラブルシューティングで画像の即入手が可能となるよう、最終工程写真システムをデジタル化する[RTF]

ISS運用では、ISSシステムの遠隔検査や保守と同様に、複雑な組立運用の支援において、最終工程画像の要求に重要な関心を払うことが必要となる。画像はさらに、システム性能解析と故障時検査の支援にも用いられる。ISSプログラムは打上げのために組み立てられる際に、ハードウェアの画像を取得する要求を設定した。約5年間のISS運用から得た教訓により、最終画像の重要性が強調され、最終画像要求の強化へとつながった。
KSCでインテグレーション作業が行われている国際パートナーのモジュールの飛行前の画像は既存の要求に応じて取得される。さらに、現在審査が行われている飛行前の画像計画は、将来用いられる全てのモジュールやハードウェアが、ISSプログラム画像要求に完全に準拠していることを確実にするために実施される。軌道上のコンフィギュレーション変更もまた最終画像要求および手順を含んでいる。

R10.3-2
以下を含むシャトルの技術図面システムを改善するための長期的プログラムに必要な適切な資源を提供すること。
  • 図面の精度の査定
  • 全図面をコンピュータ支援図面(CAD)システムに変換する
  • 技術的変更を組み込む

ISSでは、技術データ(例えば、図面など)の開発、管理、そして迅速なアクセスが重要である。ISSプログラムの当初からの全体的な戦略は、電子図面システムの開発と運用であった。ISSの図面はビークルマスターデータベース(Vehicle Master Data Base:VMDB)に存在する。VMDBは1995年から運用されている。VMDBのPDFファイルの一部は、ISS電子文書マネージメントシステム(Electronic Document Management System)と呼ばれる新しいプロダクツデータマネージメントシステムに統合されることが現在予定されている(FY2004年の第1四半期)。このツールによって、異なる情報源からの文書の統合の改善が図られる。

対応概要(Response Summary)
第2部-ISS継続的改善アクション-他の是正措置

NASAはコロンビア号事故調査委員会(CAIB)の所見を受け入れ、勧告に従い、報告書の内容を快諾する。我々はまた、計画管理の文化とプロセスの根本的な再評価にも着手しなければならないと認識している。この実現のため、NASAは総力を上げて、我々の発展に伴って国際宇宙ステーション(International Space Station:ISS)がさらに改善できるような、CAIB勧告内外の追加アクションの識別に取り組んでいく。ここに示した今後のISSの継続的改善アクションは、我々が単にCAIBが認識した項目を評価するだけでなく、プロセスや手順の改善できる側面を識別するために率先的に行動していることを示すために含めたものである。第2部は、CAIBによって提示された他の関連情報を追加するためだけではなく、報告書の改善気付き事項への対応を追加するためにも、今後更新される予定である。

ISS-1
ISSプログラムは、すべてのプログラムのウェーバ(特認)、デビエーション(逸脱)、除外事項の妥当性と許容性について評価すること。

ISSプログラムは、すべての部局に対し、プログラム要求に対する上記の特例的取扱の審査を行い、それらが約5年間にわたる軌道上でのISS運用の経験を踏まえても有効か否かを判断するよう指示した。さらにISSプログラムは特例的取扱について、特例的取扱全体が更なるリスクを生むかどうかという観点で評価する。短時間で破局的状況に陥る安全上のリスクを生むような特例的取扱には特に注意が払われている。スペースシャトルと異なり、ISSの機体はクルーを安全に打上げるための要求はない。このため、ISSプログラムが直面するリスクの性格は異なる。

ISSプログラムは、ウェーバ、デビエーション、除外事項とプログラムによって許容される関連リスクの定期的な審査を行う計画を策定する。

ISS-2
ISSプログラムはその分類によらず全ての危険報告(ハザードレポート)の不適合を審査し、それらの「許容されるリスク」の許容の論理的根拠を評価すること。

ISS安全要求への不適合は、ISSとそのクルーの安全上のリスクの原因となる。安全要求が満たされない事例において、設計とその適用についての慎重な審査が実施された。その結果、運用制御が許容できるとみなされた場合、リスクを正当化し許容するため安全要求からの逸脱報告(NCR)が作成される。コロンビア号事故の結果として、ISS安全審査委員会(Safety Review Panel:SRP)は、ISSプログラムが許容した安全上のリスクについて再検討するか否かを決定するため、各NCRの審査を実施した。

ISS-3
ISSプログラムはその飛行準備の認証(Certification of Flight Readiness:CoFR)プロセスを評価し、改善の必要な項目を識別すること。

ISSプログラムは飛行準備完了認証(CoFR)プロセスの妥当性を評価し、飛行の実施やISS運用の継続を判断するための、リスク審査方法の改善を促す勧告を作成するチームを結成した。この評価には承認決定を行う際に認証組織によって用いられるキーとなるプロセスのプロセス審査、文書化の審査及び監査を含む。ISSプログラムの管理者(マネージメント)は2003年9月に初回勧告を精査し、ソユーズ宇宙船のステージ運用準備審査会(Stage Operations Readiness Review: SORR)と飛行準備審査会(Flight Readiness Review: FRR)の実施の際に、勧告の多くを実施した。

ISS-4
ISSプログラムは、約3年間のクルー滞在を伴ったISS運用から得た経験に基づき、その重要品目リスト(Critical Items List:CIL)及びCILに関連する故障モード影響解析(Failure Modes and Effects Analysis:FMEA)を認可した論理的根拠の再確認を開始した。

このプロセスは7Sソユーズ宇宙船のステージ運用準備審査会と飛行準備審査会の間に、全てのプログラム部局がISSの環境監視機能関連の懸念を徹底的に議論したことで、成功裡に実行された。ステージ運用準備審査会で、ISS環境監視の妥当性についての懸念がもたらされたとき、これらの懸念は自由に議論され、リスク最小化のための全ての可能な手段が講じられたことを確認するというアクションが識別された。懸念事項と軽減策は飛行準備審査会で徹底的に議論され、NASA経営陣によって第8次長期滞在クルーの打上げを進める決定が下された。

ISS-5
ISSの異常(anomaly)解決プロセスを評価し、適切な要求が整備されていること及び異常解決プロセスが効果的に運用されていることの確認を行うこと。

ISSプログラムは、ISSの組立や長期の維持設計に適用することの妥当性を判定するため、現行のISSの異常を調査し解決する要求について評価した。評価の結果、異常の評価と追跡に役立つ方法をISSマネージメントに提供するというアクションだけでなく、異常の解決プロセスの改善及び異常の解決策と文書化の一貫性を確認するためのアクションがいくつか勧告された。これらの勧告されたアクションの多くは既に実行されている。残された勧告を実行するためアクションスケジュールが策定され、ISSプログラムの管理者(マネージメント)へ提出された。

ISS-6
ISSシステム性能の傾向の把握要求と実施状況を評価し、改善のため提案を行うこと。

ISS性能のトレンドを監視することは、そのサブシステムの運用時間が増え、全体の複雑さが増すにつれますます重要になってきている。全シャトルの飛行中断とISSへの補給にもたらされる影響は、この観点での懸念を高めている。ISSプログラムは、システム性能の傾向を把握し継続的に改善する活動に着手し、ISSの計画管理、意思決定及びリスクマネージメントにも適用できるような、システム性能の傾向を把握・追跡・管理・報告・審査し、活用する機能とプロセスの改善を図っている。

これらの改善により、対策なしでは故障または壊滅的な事故へとつながる傾向あるいは反復する事象を検知し、対処できるようなISSプログラムの能力を促進することが期待されている。性能傾向データは、また、補給、補用品の準備、信頼度予測、資源管理のような支援的計画管理にも用いられる。これらのデータはさらに、打上げおよびインクリメントの準備に用いられるほか、ミッション支援と異常解決にも用いられる。性能傾向の把握は、また、リスク評価とリスクマネージメントの基礎であると考えられている。

ISS-7
全スペースシャトルの飛行中断を踏まえ、ISSプログラムは、(地上または軌道上の)ハードウェアを審査し、それらがハードウェアの必要条件と認証条件に合致していることを検証すること。耐用年数期限が近づいているものには、適切なアクションを取ること。

ケネディ宇宙センターで打上げを待つISSのハードウェアのうち電力系のバッテリーや太陽電池パネルなどいくつかは有効寿命がある。軌道上の限られたハードウェアセットは定期的に交換がされるよう設計されており、したがって使用期限を左右する認証範囲が設定されている。全スペースシャトルの飛行中断にともない、ISSプログラムはハードウェアの認証範囲を組織的に審査し、必要なアクションを取った。

ISSプログラムは、他の大きなシステムに組み込まれていない補用品に関する地上保管中の予防保全要求を策定した。しかし、いったんトラスセクションのような大きなシステムに組み込まれたハードウェアに対する地上保管中の予防保全要求は存在しない。コロンビア号事故による打上げの延期によってISSプログラムは、打上げを待つ組み込まれたハードウェアへの予防保全要求の評価と定義づけに取りかかった。ISSプログラムは、ISSに組み込まれた際にハードウェアが要求どおり機能するという自信を得るために、これらの要求を満たすためのアクションを取っている。

コロンビア号の悲劇が起きた週に、認証寿命を持つ全ての軌道上ハードウェアの審査が行われた。追加の試験または解析によって認証寿命を延長できるものについては、試験と解析方法が承認され、実施された。それが不可能なものについては、それらの品目を許容できる方法で継続して使うことを容認するための戦略と正当な理由付けが策定された。

ISS-8
ISSの運用から得た教訓を精査し、クルーの安全とミッションの成功へのリスクを大幅に最小化させるあらゆるISSハードウェアとソフトウェアの強化策を識別すること。リスクを減少させるハードウェアまたはソフトウェアのさらなる改修を識別するため、ISSシステムチームの調査を実施すること。

ISSの設計強化は、対象品目をISSプログラム要求に合致させるための変更以上の変更、クルーの安全とミッション成功のリスクを大幅に低減するための変更と定義されている。ISSプログラムは、可能な設計強化についてのボトムアップ式の審査を行い、いくつかを実施事項として採択してきた。ISSの設計強化に係る審査完了時には、全ての改修提案をリスト化し、ISSの計画された製品性能改善(Planned Product Performance Improvement:P3I)プロセスへの入力情報として利用される。

ISS-9
コロンビア号事故から得た教訓に基づいてISSプログラムと関連組織の緊急時行動計画(Contingency Action Plan)を見直し、それらの改訂を行うこと。

ISSプログラムはコロンビア号事故から得た教訓を反映するため、2003年3月〜7月にかけて、ISS緊急時行動計画の大々的な見直しを実施した。ISSプログラム室とISS関連部・室の職員がこの計画の見直しと改訂作業に参加した。活動の結果、ISSプログラムマネージャは2003年7月29日にISSプログラム緊急時対策計画を承認した。NASAはキーとなる職員が緊急時行動計画を良く理解していることを確実にするため定期的にISS緊急時行動計画の見直しと、緊急時シミュレーションを実施する。

ISS-10
ISSプログラムの航空電子機器およびソフトウェアの管理組織は、より生産性が高く、精度の高い飛行ソフトウェアの提供のため、今後もソフトウェアの開発・統合方法を発展させること。さらに、ISSソフトウェアのアップリンクと長期の維持プロセスは、継続中のISSソフトウェア機能向上活動から得た教訓を反映し更新すること。

ISSはソフトウェア開発プロセスの改善への取り組みを開始した。ソフトウェア技術機関(Software Engineering Institute:SEI)の性能完成モデル(Capability Maturity Model:CMM)は「判断の目安」として、各開発者のプロセスの完成度を文書化するのに用いられている。ISSソフトウェア開発の取り組みはスペースシャトルプログラムの飛行ソフトウェアの指導に従って、評価レベル5の達成を目指している。

現在まで、125万行以上のソースコードが開発され、飛行中は最小限の問題しか発生していない。軌道上のソフトウェアの機能向上から得た教訓は、引き続きソフトウェア管理プロセスの改善に適用される。

ISS-11
ISSプログラムは職員による業務上および軌道上の安全の懸念報告を容易にするための対策をいくつか実施した。

ISSプログラムは既に構築されたNASAの安全報告システムへの職員の認識を高めるというアプローチで対策を実施した。目標は、職員が安全に関するいかなる懸念についても報告できるよう奨励し、またNASAの安全報告システムプログラムの有効性について職員が認識していることを確実にすることである。ISSプログラムは今後も、安全に関する懸念について報告するための方法を職員に認識させるとともに、改善が識別された際には意思疎通の方法も修正していく。

ISS-12
ISSプログラムは、ISSの開発および運用に関する品質保証面を改善するため、勧告を作成する活動を開始した。

ISSプログラム品質保証(Quality Assurance:QA)のミッションは、ISSプログラムが要求と実行プロセスを遵守するという必要な規律の維持を保証するもので、それゆえ全ての技術的卓越性とISSとそのクルーの安全に貢献するものである。
目標達成のために、高品質のプロセスが整備され、効率的なQA活動が実施されなければならない。ISSプログラムはいくつかの分野において、QAの役割の強化が必要なことを識別した。これを達成するための具体的な活動が実施されている。

ISS-13
ISSプログラムはプログラムの重要なリスクを追跡するためのプロセスの評価を、現行のISSリスク管理ツール、特に統合リスク管理アプリケーションを使って行い、必要に応じて改善を提案する。

ISSプログラムは、安全、品質、信頼性の分野における、許容され、緩和され、解決された全てのリスクの再評価を行っている。重大なリスク(例えば短期間で生じる破局的事態)がどのようにして許容されたのか、また、さらなるリスク低減のため、再度未解決として、アクションを取る必要がないか評価するためである。これらの項目はプログラムリスクのトップ項目としても定義され、広く認識させるため現行のISS継続的リスクマネージメントプロセスにも乗せられることとなる。


宇宙航空研究開発機構 広報部
TEL:03-6266-6413〜6417
FAX:03-6266-6910