宇宙航空研究開発機構
本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。
国際宇宙ステーション(ISS)を利用して行うライフサイエンスおよび宇宙医学実験において、各国宇宙機関が実験装置やリソースを相互に提供しあうことにより最大の科学的成果を得ることを目的として、実験支援機関が国際的に実験テーマを募集、選定する制度である。(別紙1参照)
実験支援機関は以下の7つの宇宙機関である。
◇ NASA(米国) ◇ JAXA(日本) ◇ ESA(欧州) ◇ DLR(ドイツ) ◇ CSA(カナダ) ◇ CNES(フランス) ◇ NSAU(ウクライナ)
1997年に第1回の公募が開始され、現在までに4回の公募が実施された。日本は第2回(1998年)公募より参加しており、これまでに12テーマが採択され、うち9テーマが打上げに向けて準備中である。(別紙2参照)
宇宙開発委員会利用部会が平成15年6月にとりまとめた「我が国の国際宇宙ステーション運用・利用の今後の進め方について(中間報告)」の指摘事項
前項に示す宇宙開発委員会利用部会の指摘事項等を踏まえ国際調整を行った結果、第5回の公募では次の方針で行うこととなった。
国際宇宙ステーションでライフサイエンスおよび宇宙医学実験を遂行する上で、参加する各国宇宙機関が相互に実験装置及びリソースを提供しあうことにより、科学的成果を最大限に得ることができる。具体的には自国の所有しない装置等を利用することが可能になる。
募集開始 | 平成16年2月18日 |
仮申し込み締め切り | 同 3月18日 |
募集締め切り | 同 4月23日 |
書類予備審査 | |
国際事務局へ応募書類提出 | 同 5月5日 |
国際科学・技術評価パネルによる審査 | 同 5月〜6月 |
JAXAによる最終選定(優先順含む) | 同 7月頃予定 |
国際ライフサイエンス戦略会合での国際間調整 | 同 9月頃予定 |
- 各モデル生物ごとに2004年末から2006年の間のシャトルフライトを利用して順次打ち上げが実施される予定である。
(ヒト対象医学テーマのみ2007年頃を予定)
第5回ライフサイエンス国際公募に先立ち、そのモデル生物の一つである C.elegans(線虫)が宇宙実験において有用であることの確認と、実験技術の確立を図ることを目的とし、フランス航空宇宙研究所(CNES)が計画している国際共同実験へ日仏の宇宙協力の一環として参加する。これはソユーズのタクシーフライトを利用して行うものであり、他の宇宙機関としてはNASA及びCSAが参加する。
国際公募ではなくCNESと各参加機関との各々2国間協力協定による。
実験機会・装置はCNESが提供し、JAXA、CSA、NASAは資金や実験技術で協力し、実験試料(C.elegans)は各機関が実験目的にあわせて持ち寄り提供する。
フライト: | ソユーズ宇宙船(8S)によるタクシーフライト (打上げ予定:2004年4月19日、回収予定:同年4月29日) |
装置: | CNES保有のインキュベータ及び飼育容器 |
軌道上実験期間: | 6日間 |
実験方法: | 複数種のC.elegansを打上げ、軌道上で孵化、成長させ回収。 地上でゲノム解析などを実施し微小重力の影響を解析する。 |
研究成果の報告: | 平成17年5月予定 |
「微小重力のC.elegansの初期発生、筋発達過程に及ぼす影響と重力感受機構のゲノム解析」 C.elegans はゲノムや細胞の分裂過程がすべて明らかになっているという特徴により初期発生から老化までの過程や筋発達の研究がゲノムレベルで効果的に行える。そこで、重力との関連性を最新の解析技術を用いて研究することにより宇宙滞在で特に問題となる筋萎縮と重力感受機構の関係につながる知見の獲得を目指す。また、この研究を通してヒトの高齢化や筋萎縮など医学問題への将来的な展開が期待できる。
日本の応募総数 (括弧内は国際応募総数) | 日本のフライト候補テーマ選定数 (括弧内は国際選定総数) |
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第1回ライフサイエンス 国際公募(1997) |
日本は不参加 | |||
第2回ライフサイエンス 国際公募(1998) |
発出 | 1998.6.1 | 39(165) | 5(39) |
応募締切 | 1998.9.10 | |||
選定 | 1999. 4.25 | |||
第3回ライフサイエンス 国際公募(1999) |
発出 | 1999.8.31 | 25(112) | 1(12) |
応募締切 | 1999.11.22 | |||
選定 | 2000.4.26 | |||
第4回ライフサイエンス 国際公募(2001) |
発出 | 2001.5.16 | 15(120) | 6(24) |
応募締切 | 2001. 8.20 | |||
選定 | 2002. 1.23 | |||
第5回ライフサイエンス 国際公募(2003) |
発出 | 2004. 2.18 | 今回の募集 | 今回の募集 |
応募締切 | 2004. 4.23 | |||
選定 | 2004. 9月予定 |
選定 | 代表研究者と所属 | テーマ標題と準備状況 | 担当宇宙機関と実験装置 | 実験準備状況 |
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第2回 | 石原 昭彦 | ラットの骨格筋繊維および脊髄運動のニューロンに及ぼす微小重力ならびに神経筋活動の影響 | NASA ARC | 実験計画書制定済。実施待ち |
京都大学 | 宇佐美テーマおよびDr.Zerath (CNES) との合同実施に向けて準備中。 | AEM | ||
人間科学部 | ||||
宇佐美 真一 | 微小重力の前庭系神経伝達機構に及ぼす影響 | NASA ARC | 実験計画書制定済。実施待ち | |
信州大学 | 石原テーマおよびDr.Zerath (CNES) との合同実施に向けて準備中。 | AEM | ||
医学部 | ||||
古澤 壽治 | カイコ生体反応による長期宇宙放射線曝露の総合的影響評価 | JAXA | 実験計画書制定済み | |
京都工芸繊維大学 | カイコ卵収容容器の開発検討中。 | CBEF,放射線ディテクター | ||
繊維学部 | ||||
第3回 | 大西 武雄 | 哺乳動物培養細胞における宇宙環境曝露後のp53調節遺伝子群の遺伝子発現 | JAXA | 実験計画書制定済み |
奈良県立医科大学 | 谷田貝テーマとの協同実施を目指し、実験運用要求を検討。 | CBEF, MELFI | ||
医学部 | ||||
第4回 | 谷田貝 文夫 | ヒト培養細胞におけるTK変異体のLOHパターン変化の検出 | JAXA | 実験計画書制定済み |
理化学研究所 | 大西テーマとの協同実施を目指し、実験運用要求を検討。 | CBEF, MELFI | ||
加速器基盤研究部 | ||||
高沖 宗夫 | 破骨細胞分化因子(RANKL)遺伝子制御領域内の重力感受エレメントの同定 | JAXA | 実験計画書作成中 | |
宇宙航空研究開発機構 | 実験計画の詳細化作業実施中。 | CBEF, MELFI | ||
ISS科学プロジェクト室 | ||||
若林 和幸 | 重力によるコムギ芽生え細胞壁のフェルラ酸形成の制御機構 | JAXA | 実験計画書作成中 | |
大阪市立大学大学院 | 実験計画の詳細化作業実施中。 | CBEF, MELFI | ||
理学研究科 | ||||
二川 健 | 蛋白質ユビキチンリガーゼCblを介した筋萎縮の新規メカニズム | JAXA | 実験計画書作成中 | |
徳島大学 | 実験計画の詳細化作業実施中。 | CBEF, MELFI | ||
医学部 | ||||
James Todd Pearson | 鶏胚の卵絨毛尿膜の血管新生を刺激するのは重力か?あるいは酸素濃度か? | JAXA | 実験計画書作成中 | |
国立循環器病センター | 実験計画の詳細化作業実施中。 | CRIM or CBEF | ||
心臓生理部 |
ARC : | NASA Ames Research Center, JSC: NASA Johnson Space Center, CSA: Canadian Space Agency, |
AEM : | Animal Enclosure Module, (NASAの 小動物飼育装置) CBEF: Cell Biology Experiment Facility, (JAXAの細胞培養装置) |
MELFI : | The Minus Eighties Degree Celsius Laboratory Freezer for the International Space Station,(ISS共通の冷凍冷蔵庫) |
CRIM : | Commercial Refrigerator Incubator Module (NASAの小型恒温装置) |
宇宙航空研究開発機構 広報部
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