本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。
1. はじめに
H-IIAロケット6号機の打上げ失敗に関しては、5号機までの成功にもかかわらず失敗に至ったことや開発過程で内在していた問題への対処が結果として及ばなかった可能性があることなどから、今後より確実にH-IIAロケットの打上げを行っていくためには、直接原因に対する対策を確実に実施していくだけでなく、信頼性向上に向けた取組みをさらに強化していく必要がある。
このため、信頼性向上を最優先課題と位置づけ、ロケット全体にわたり内在するリスクを抽出・評価し、的確に反映することを目的としてJAXA総点検委員会の下、H-IIAロケットの再点検を実施し、早期かつ確実な打上げ再開を目指すこととする。
2. 実施方針
- H-IIAロケットの信頼回復
信頼性向上を最優先課題と位置づけ、直接原因への対策だけでなく、ロケット全体にわたり、設計・開発にまでさかのぼって点検・評価を行うことにより、H-IIAロケットの信頼の回復に全力を尽くす。
- 過去にとらわれない謙虚かつ真摯な点検
開発過程で潜在的な問題があった可能性や過去の不具合への対処が不十分であった可能性に対処するため、過去の処置や予断にとらわれることなく、これまでの課題・不具合等を再評価し、必要と判断されるものについては適切な対策・処置を実施する。
- 迅速な点検・反映の実施
総点検のためにいたずらに期間を要することのないよう、効率的・効果的な点検・評価・反映を行い、早期かつ確実な打上げ再開を実現する。
- ロケット関係者・機関の結集
H-IIAロケットの再点検にあたっては、JAXAの総力をあげて取り組むことはもとより、外部有識者の参加を得るともに、製造メーカとの協同体制を構築することなどにより、ロケット関係者・機関が一体となって実施する。
- 継続的・定常的な信頼性向上活動への発展
H-IIAロケットの再点検は、打上げ再開までの一過性のものではなく、今後のロケット開発に際して継続的・定常的に取り組むべき信頼性向上の活動となることを目指し、主体性及び責任をもった体制により実施する。
3. 実施内容及びスケジュール
(1) 早期の課題抽出のため、以下の事項について重要課題への重点的取り組みを基本として、3月末を目途に検討を行う。
- 設計・開発段階から6号機までの製造・打上げ運用を通じて、既に識別されている課題に関して、ミッション達成への重要度や発生可能性等の再評価を含めたリスク評価と対策検討
- これまでの開発・製造・運用段階において発生した不具合に関して、処置内容やミッション達成への重要度を含めた再評価
- 致命的でない初期事項からミッション不達成に繋がる連鎖事項を検討するため、高温ガス漏洩、極低温ガス漏洩、電源異常の連鎖、信号線異常の悪影響等の初期事項から生じるリスク評価と対策検討
(2) 網羅的な課題の抽出のため、以下の事項について5月末を目途に検討を行う。
- 設計段階以降、これまでに得られたデータや経験・知見等を反映した詳細な故障モード・影響解析(FMEA)を実施し、設計段階における未評価項目や不十分な評価項目の抽出、検討
- LE-7A、SRB-A等の重要なサブシステムに関して、これまでの開発・製造・運用から得られた知見等に基づき、製造工程が品質・信頼性に及ぼす影響と重要な製造パラメータの再評価
(3) これらの検討結果を踏まえ、緊急度・重要度の高い項目は打上げ再開までに、また、中長期的課題として捉えることが適当な項目はスケジュールを明確にして反映することとして対策を講じていくこととする。
4. 実施体制
H-IIAプロジェクトチームは、今回の点検を今後継続的・定常的に取り組むべき信頼性向上活動と位置づけ、メーカとの協同体制を含めて主体性及び責任をもった取組みを進める。
点検チームは、これまでのH-IIAプロジェクト評価チームを拡大・発展させ、プロジェクトチーム以外のJAXA内有識者及びメーカ経験者を含む外部有識者の参加を得て、独立した体制により点検を行う。
H-IIAロケット責任者は、今回の点検とその結果の確実な実施に責任を持つ。