プレスリリース

プリント

SRB-Aノズルに関する中長期的課題への取り組み状況について

平成16年3月8日

宇宙航空研究開発機構

本日開催された宇宙開発委員会調査部会において、下記のとおり報告をいたしました。

 平成12年6〜11月に開催されたH-IIAロケット評価専門家会合では、H-IIA に関する技術的事項に関する調査審議が行われた。これを受けて平成12年12月に宇宙開発委員会技術評価部会において、報告書「H-IIA ロケットの打上げ前段階における技術評価について」がとりまとめられた。
 この中で、SRB-Aノズルに対し

  • アルミ含有量の少ない推進薬組成への変更
  • 侵食の詳細データを取得して評価すること
について中長期的に取り組むことを助言されている。
 これらに対するこれまでの取り組み及び今後の検討方針等について以下に示す。

1.アルミ含有量の少ない推進薬組成の検討

 地上燃焼試験(QM3)以前の検討により、ノズル部のライナアフト(CFRP製断熱材)における局所エロージョンの発生要因のひとつとして、燃焼ガス流中の酸化アルミニウム(アルミナ)粒子の偏在の可能性が考えられていた。
 アルミニウムの含有量を減らした推進薬への変更は、推進性能の低下や燃焼振動のリスク増加に加え、これまで蓄積してきている燃焼特性、経年変化特性などの諸物性の評価から始まる推進薬とモータの再開発が必要となること及びアルミニウム含有量を減らすだけによる局所エロージョン低減への効果の程度が明確でないことから、第一段階として、3機関連携事業融合プロジェクト信頼性向上共同研究プロジェクトの枠組みの中で、局所エロージョンのメカニズムの解明とアルミナによる影響の定量的評価について、平成13年度より取り組んできた。
 また、今回の事故原因究明においても、ノズル部のライナアフトに深い溝が形成された場合、アルミナを含む燃焼ガスが流れ込むことにより、局所エロージョンが加速する可能性が示唆されている。
 今後、引き続き、燃焼ガス中のアルミナと局所エロージョンの相関を十分に評価した上で、必要があればこれまで設計等の改善として抽出した局所エロージョン低減方策に加え、推進薬成分の研究を行っていく。

2.侵食に関する詳細データの取得・評価

 ノズルに関する定量的設計技術を構築するため、3機関連携事業融合プロジェクト 信頼性向上共同研究プロジェクトの枠組みの中で、ノズル用材料諸特性の把握、ノズル設計における数学モデルの向上等の研究を平成13年度より取り組んできた。局所エロージョンに関する詳細メカニズムの解明についてもこの一環として取り組み、小型固体モータ燃焼試験等により、局所エロージョン発現に寄与する要因あるいは低減の方策などに関する研究を実施してきた。この研究成果はH-IIAの開発および今回の原因究明にあたって有効に活用されている。
 飛行後のSRB-Aの回収については、試験機1号機において、SRB-A後部アダプタに音響ビーコンを搭載するとともに、探索を試みた。その結果、落下海域が深さ4,500m程度の深海であることもあって、SRB-Aの一部部品の発見・画像取得はできたものの、本体の発見は出来なかった。一方、試験機1号機において取得された飛行データから、ノズルの断熱性能は良好であったとの評価を行った。これらを踏まえ、2号機以降は探索の困難さ及び費用の観点から回収は試みていない。

 今回の6号機不具合を受け、打上げ再開後のSRB-Aに関する詳細データ取得について、これまでの経験を踏まえ、次のような方法を検討していく。

  1. 飛行時のテレメトリ・データの拡充により、侵食に関する詳細なデータを蓄積する。
  2. 飛行後のSRB-Aの探索・回収作業については、飛行データの拡充によって達成可能な確認・評価内容、探索に係る費用等を勘案し、実施の必要性について、今後、引き続き検討をすすめる。
    なお、探索にあたっては、今回の探索結果より、詳細な場所の特定及び回収までの作業が難航することが予想されるため、探索の効率化・確実化のためには、以下のような対策を講じることが必要と思われる。
    a)航空機によるSRB-Aの着水点の目視確認を行い、水没地点を直接的に絞り込む。
    b)大深度の探索作業に対しても信頼性の高い機材を事前に準備し、使用実績を積むとともに所要の機材の継続的な整備・改良を行うことによって、探索作業の確実化を図る。



宇宙航空研究開発機構 広報部
TEL:03-6266-6413〜6417
FAX:03-6266-6910