宇宙航空研究開発機構
本日開催された宇宙開発委員会調査部会において、下記のとおり報告をいたしました。
平成15年11月29日のH-IIAロケット6号機打上げ失敗の原因究明の一環として、固体ロケットブースタ(SRB-A)の回収の可能性を検討するため、海洋科学技術センター(4月より独立行政法人海洋研究開発機構)から専門的助言及び技術指導(第一次から第三次探索作業の探索船への乗船を含む)等の協力を得て、次の通り探索作業を実施してきた。
(1)第一次探索作業(平成15年12月31日〜平成16年1月1日、平成16年1月5日〜7日、1月16日〜1月21日)
SRB-Aには着水後から音波を発信するように設計された音響ビーコンが装着されており、当機構が準備したビーコン探査用音波受信機を6,000m級深海曳航カメラシステム(ディープ・トウ)に装着し、船舶にて曳航して音響ビーコンの探索を実施した。
2ヶ所(南側及び北側)の海域から音響ビーコンと思われる音波が確認され、当該海域にはSRB-Aと同様に音響ビーコンを搭載した第1段ロケットが水没しており、解析によりSRB-Aが第1段ロケットより遠くへ(南側へ)落下すると考えられることから、南側にSRB-Aが水没していると推定した。南側の海域について引き続き探索作業を実施し、以下の結果が得られた。
上記の100m四方の範囲を更に絞込むためには、海面から約6,000m下のディープ・トウの水中位置を正確に測定する必要があるが、第一次探索時に準備した測位システムの精度上、これ以上の絞り込みは困難であることから、海中を自力で航行できる水中ロボットを使用した探索に切り替えることとした。
国内では深度6,000mにて使用可能な水中ロボットが無かったことから、米国フェニックス社所有の水中ロボットに当機構が準備した音波受信機及びノルウェー製水中測位装置を追加装備して、第一次探索作業で絞り込んだ箇所を重点的に探索した。第二次探索では、2月20日からビーコン探査用音波受信機による探索を実施したが、音響ビーコンの音波を受信できず、音響ビーコンの寿命が切れたものと考えた。このため、音波の反射波による探索に切り替えたが、第一次探索時に見られた強い反射波の反応を再確認できなかった。また、カメラによる探索にて幾つかの人工物の画像を取得したが、第一次探索において画像を取得した物体は確認できなかった。ただし、第一次探索で取得した画像に類似した物体の至近距離からの画像を取得したが、ロケットの部品ではなかった(図2)。
使用した機材は、探索深度が仕様上のほぼ限界深度であったことから、通信装置、水中測位装置等に相次いで不具合が発生しており、水中ロボットの位置検出が不正確なために必要な捜索範囲を網羅できていない可能性が否定できなかった。当時、我が国で深度6,000m級の運用実績のある海洋科学技術センター所有の有人潜水調査船「しんかい6500」の定期整備が完了する状況にあり、訓練潜航が計画されていたことから、その機会を利用して「しんかい6500」による探索に切り替えることとした。
「しんかい6500」の訓練潜航機会を利用して、第一次探索作業で絞り込んだ箇所を中心に広い範囲について探索作業を実施した。
「しんかい6500」には音波送受信機が搭載されており、周囲約150mの範囲について音波の反射波による物体の探索を実施することができる。また、「しんかい6500」の搭乗員による目視探索及び搭載されたビデオカメラによる探索が可能である。さらに確実に探索範囲を網羅するために、海底に通信中継器(トランスポンダ)を設置し、水中測位精度の向上を図った。
「しんかい6500」による探索の結果、音波送受信機に物体らしき反射反応が幾つかあったものの、近付いて目視及びカメラにて確認すると海底の地形の起伏や小さな人工物(灯油缶等)であり、第一次探索時に確認された強い反射波の反応は見られなかった。
また、「しんかい6500」の目視及びカメラによる探索にて、直径70〜80cm程度の半円状の生物が見つかり、その他にも人工物(箱、ロープ、袋等)や生物が見つかったが、第一次探索において画像を取得した物体やSRB-A関連部品は発見されなかった。また、取得データ(音波送受信機のデータ、動画、スチール写真)を詳細に解析したが、SRB-A関連部品は発見できなかった(図3)。
3月15日 | 那覇港出港 |
16日〜19日 | 熱帯低気圧による海況不良のため、迂回して回航 |
20日 | 測位精度向上のための通信中継器(トランスポンダ)設置 |
21日 | 海況不良により待機 |
22日 | 第1回潜航(探索) |
23日 | 第2回潜航(探索) |
24日 | 第3回潜航(探索) |
第一次探索時に「音源を絞込んだ海域」について詳細な探索を行い、「SRB-Aの部品らしき画像が取得され」、かつ「音波受信機にて強い反射波の反応が見られたこと」等から、SRB-Aの主要部品の水没地点の範囲がほぼ100m四方の範囲に絞り込まれたと考えた。しかし、第二次及び第三次探索にてSRB-Aの部品の発見に至っておらず、その要因として、それぞれ次のことが考えられる。
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