プレスリリース

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「はやぶさ」地球スイングバイの実施と結果について

平成16年5月26日

宇宙航空研究開発機構

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。


■「はやぶさ」の概要

第20号科学衛星(MUSES-C)
  • 2003年5月9日 M-Vロケット5号機にて打ち上げ
  • 質量510kg
  • 主な搭載機器
      イオンエンジン
      サンプル採集装置
      近赤外線分光器
      望遠カメラ
      広角カメラ(2台)
      小型探査ロボット「ミネルバ」
      再突入カプセル(サンプル回収カプセル)
  • 2005年夏に「ITOKAWA」とランデブー、2007年6月に地球に帰還予定。


■はやぶさの技術実証要素

(1)イオンエンジンを主推進系とする惑星間の航行
(2)光学情報に基づく自動着陸を含む自律的な航法・誘導・制御機能
(3)微小重力下における表面試料の採集
(4)惑星間飛行からの直接地球大気圏再突入による試料回収


■はやぶさの軌道


■スイングバイの概要

イオンエンジン+スイングバイ 併用した技法は世界初
  • 地球最接近 5/19 15:22(日本時間)、東太平洋上空 高度3700km。
  • スイングバイにより太陽周回軌道速度30km/s→34km/sに加速。
  • カリフォルニア工科大学ジェット推進研究所(JPL)から軌道決定の支援を受けた。宇宙科学研究本部の軌道決定値とはきわめて正確に一致。JPLから実施の精度に賞賛の評価。
  • スイングバイ時、地球の夜側を通るため、30分間の「日陰」を経験。本格的なバッテリ運用を実施した。宇宙機用リチウムイオン電池の搭載は日本初。
  • 航法・理学観測用の搭載カメラ3台(望遠1、広角2)および近赤外線分光器により、月や地球を撮影。装置の較正と性能評価試験を実施した。

■スイングバイの実施状況

  • 精密軌道決定を行うため、3/31にイオンエンジンの運転を休止。
  • 4/20、5/12に軌道微調整を実施
  • 5/19 地球スイングバイ
  • 5/20-5/24 実施後の精密軌道決定。
  • リチウムイオン電池を含む全搭載機器は良好に動作していることを確認
  • スイングバイ時の目標点(再接近点)からの誤差は1km程度であったことを確認

■はやぶさ ミッション達成度

地球スイングバイ成功 → 150点達成
電気推進エンジン 稼動開始 (∵3基運転は世界初) 50点
電気推進エンジン 或る期間(1000時間)稼動 100点
地球スイングバイ成功 (∵電気推進+スイングバイは世界初) 150点
(自律航法に成功して)小惑星ITOKAWAとランデブー成功 200点
小惑星の科学観測成功 250点
小惑星にタッチダウンしてサンプルを採取 300点
カプセルが地球に帰還、大気圏に再突入して回収  400点
小惑星サンプル入手 500点

■写真1:地球(5/18 距離30万km)

(望遠カメラで撮影)

■写真2,3:月の画像

(望遠カメラで撮影)

■写真4:地球(5/19 午後3時頃,日本上空)

(望遠カメラで撮影)

■写真5:地球スイングバイ後(5/19 日本時間夜)

(広角カメラ,モノクロで撮影)






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