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第2回宇宙ステーション教育利用ワークショップの開催結果について

平成16年9月1日

宇宙航空研究開発機構

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。


1.報告事項

 「第2回宇宙ステーション教育利用ワークショップ〜好奇心を刺激せよ!国際宇宙ステーション〜」の開催結果の概要について報告する。



2.開催目的

 宇宙開発委員会利用部会報告「我が国の国際宇宙ステーション運用・利用の今後の進め方について」(平成16年6月)において、教育利用について資源を配分して積極的に実施すべきとされたことを受け、小中高大学での授業や地域活動における宇宙ステーション等を利用した多彩な実践例を紹介するとともに、講演者・参加者からの意見を取りまとめて今後の推進方策に反映する。



3.開催概要

(1)日時:平成16年(2004年)8月8日(日)13:00〜17:15
(2)場所:千葉大学西千葉キャンパス・けやき会館
(3)主催:宇宙航空研究開発機構
(4)後援:文部科学省、日本科学教育学会
(5)内容:プログラム(添付資料−1)参照
(6)参加者:129名(小中高大学の教員33名、科学館職員・公務員12名、学生27名、一般57名。講演者・スタッフは除く。)
(7)開催形態:第28回日本科学教育学会年会との同時開催


4.開催結果概要

 宇宙ステーションを小中高大学での授業や地域活動に利用している方々から、実践活動と成果、課題の報告が行われた。また、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の教育支援活動に関して意見交換が行われた。

 アンケートの高い回収率(76%)からうかがえるように、本ワークショップ参加者の意識は非常に高く、JAXAへの期待も大きいものであった。

 高校生を始め多くの方々から、JAXAには宇宙環境利用における教育プログラムを新規にあるいは継続して実施して欲しいとの強い要望が出された。



4.1 発表概要

(1)教育と宇宙との組織・分野を超えたつながり
 文部科学省初等中等教育局から教育・研究機関の連携施策等を推進する旨の挨拶があり、JAXAからは、宇宙環境利用・有人宇宙活動等に関連して、これまでに実施された教育支援活動と教育連携活動の紹介があった。


(2)基調講演「宇宙が教えてくれること」 (鈴鹿国際大学短期大学部 佐治晴夫学長)
 人間存在の根源との関わりにおける宇宙研究の成果と意義、および科学的思考の重要性について話された。宇宙ステーションの教育利用に、芸術系など多分野の人が参画してくれれば宇宙への関心が健全な形で発展することが期待され、リベラル・アーツ(一般教養)としての宇宙ステーション利用を希望すると述べられた。


(3)宇宙ステーションを「学ぶ」
 文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール制度などにおける高校とJAXAとの連携活動の成果と波及効果について、高校の先生と生徒から発表された。高校生からは進路を考える契機になったとの発言があった。


(4)宇宙ステーションと「話す」
 宇宙ステーションの宇宙飛行士とアマチュア無線やビデオ回線を通して会話できる教育プログラムについて、成果と実施上の課題等について紹介された。子供たちの未来への夢を育んでいけるような素材が「宇宙」にはあり、宇宙ステーションでは英語学習・環境学習・社会学習を取り込み、世界的視野を持つ子供を育てることができるので、その貴重な素材を有するJAXAには積極的に教育支援活動を行って欲しいと述べられた。


(5)宇宙ステーション等を「使う」
 宇宙ステーション搭載のデジタルカメラを利用した撮影プログラムでは、環境、英語、地理など複合的学習効果のあることが報告された。またスペースシャトルを利用した高校生によるタンパク質結晶成長実験では、文科系の生徒も含め、高度な学習内容と課題をチームで乗り越えていくことにより全人教育にもつながったことが紹介された。航空機を利用した無重量実験・体験では、実験成果とともに子供にとっては心に残る感動体験であったことが報告された。発表者から、誰でも公平に参加できるような、地域・学校の差によるハンデがない教育プログラムを希望するとの意見が出された。


(6)宇宙ステーションを「見る」
 宇宙ステーションの肉眼観測をきっかけとした経路同定の取り組みや、宇宙開発や宇宙科学への関心を高める教材として開発された人工衛星観測ソフトウェアなどの紹介がなされた。宇宙が好きな生徒も、学校での学習内容との相違・乖離により、高校の頃からだんだん宇宙から縁遠くなることが多く、そういった生徒を救えるような働きかけをJAXAに期待するとの意見が述べられた。


(7)宇宙ステーションを「創る」
 宇宙と宇宙ステーションをテーマとして、学生や地域の親子が芸術作品を創り出す様々な実践が報告された。宇宙からの視点を取り入れ、自分も宇宙という存在の一部であることを体感できるという効果も得られたことが紹介された。


(8)米国の宇宙ステーション教育者会議への参加報告
 米国で開催された第10回宇宙ステーション教育者会議の内容が紹介された。全米から集まった教育者による実践報告を中心として、NASA職員による講演や教材紹介、ジョンソン宇宙センターの見学等が行われる教育者の学習の場であったことが報告された。



4.2 ワークショップ参加者からの主なコメント

  • ワークショップに参加して感動した。宇宙に興味を持ち、それを通して科学、芸術、環境、命の大切さ、平和などについて全国の子供たちが考えてくれたら大変すばらしい。そうなることを期待している。宇宙は子供にとって学びの原点だ。(会社員、女性。小学校教諭、男性。)
  • 向井宇宙飛行士の短歌コンテストのような日本独自の表現(文化)を大事にして継続して実施して欲しい。各種プログラムに参加していく中で、芸術性、科学的思考、人間の能力、宇宙開発の意義などに気付き、生涯の問いにつながっていくと思う。(高校教諭、男性)
  • 科学教育が必要なのは子供だけでなく、親が楽しめ、大人が夢を持てるような場も必要だと思う。参加しやすくするために、学校単位でなく個人レベルでも参加できるような教育プログラムも増やして欲しい。(主婦、女性。大学教諭、男性。)
  • 実際にすごい活動をされている先生方がたくさんおられるのを知り、これから私も行動したいと思う。(高校教諭、男性)
  • 学校、博物館、科学館など、様々な教育機関と積極的に交流し、宇宙開発を通して、日本全体の科学レベルを向上させて欲しい。(科学館職員、女性)
  • 宇宙ステーションだけでなく、ロケットや衛星に関係する教育プログラムも実施して欲しい。(会社員、女性)


5.今後予定されている教育プログラム

  • JAXAとして、各教育機関・各教育関係者との連携の輪を徐々に広げるとともに、まず期待に応えるためにも、宇宙環境利用における教育プログラムおよび宇宙ステーションの教育利用を、継続して推進する所存である。
  • JAXA宇宙環境利用センターで実施中の平成16年度の教育プログラム
    • 第2回航空機による無重力実験コンテスト
    • サイエンスパートナーシッププログラム(2件)
    • スーパーサイエンスハイスクール(3校)


(参考資料) ワークショップ予稿集[PDF 437KB]



添付資料

第2回宇宙ステーション教育利用ワークショップ

- 好奇心を刺激せよ!国際宇宙ステーション -
[ プログラム ]


■会期: 平成16年(2004年)8月8日(日)  13:00〜17:15 (受付12:00-)
■会場: 千葉大学西千葉キャンパス・けやき会館
■主催: 宇宙航空研究開発機構(JAXA)
■後援: 文部科学省、日本科学教育学会

12:00 開会挨拶
13:00 開会挨拶
13:05 来賓挨拶  文部科学省 初等中等教育局視学官 井上示恩
13:10  基調講演  「宇宙が教えてくれること〜最新宇宙研究から新しい教育を考える〜」
鈴鹿国際大学短期大学部 学長 佐治晴夫
13:40 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の国際宇宙ステーション(ISS)関連教育プログラム
JAXA宇宙環境利用センター長 吉冨進
13:55 実践報告 1 ISSを「学ぶ」
1.「スーパーサイエンスハイスクール高崎女子高校におけるJAXAとの連携活動報告」
群馬県立高崎女子高等学校 教諭 高橋滋

2.「教室でできる落下無重力実験〜スーパーサイエンスハイスクール研究交流会での取り組み〜」
富山県立富山高等学校2年生 川島裕嗣、福井県立高志高等学校2年生 荒井未来
14:20 実践報告 2 ISSと「話す」
1.アマチュア無線交信ARISSの実践と教育的効果
 「子どもに夢を『国際宇宙ステーションとの交信』」
神戸市立平野小学校 元校長 三木博志


2.ISSライブ交信教育イベントの企画と実施
 「地方の子供たちへも宇宙の夢を」 
南海放送? 総合企画部 副部長 宮本誠司
14:50
-15:05
<休憩>
15:05 実践報告 3 ISS等を「使う」
1.ISSデジカメ地球撮影プログラムEarthKAMの実践と教育的効果
 「ISS EarthKAM 〜私たちを見つめるもうひとつの目〜」 
 関西創価中学校・高等学校 教諭 池田勝利


2.「スペースシャトル宇宙実験教育プログラムの実践、成果、展開」
山口県立厚狭高等学校 教諭 児玉伊智郎


3.航空機無重力学生実験の成果とJAXAへの期待
 「理屈は分かりますが、やはり浮くのです!」 
お茶の水女子大学 卒業生 佐々木亜紀子

4.日本初の小中学生無重力飛行プロジェクト
 「航空機による無重力体験教室“さあ行こう君の小宇宙へ”報告」
日本宇宙少年団八雲ホシカミ分団リーダー 岩田伊知郎、亀山英嗣
16:05 実践報告 4 ISSを「見る」
1.ISSの観測による経路同定の取り組み 「ISSを『観測』したい 〜夢に近づくために〜」
東京工業大学工学部附属工業高等学校 教職員 小菅京


2.「人工衛星観測ナビゲータおよび地球観測ナビゲータの開発と科学教育における活用」
岐阜大学教育学部 教授 川上紳一

16:30  実践報告 5 ISSを「創る」
1.芸術系教育素材として宇宙・ISSを用いた実践
 「あすみが丘宇宙ステーション」 
東京藝術大学美術学部 教授 坂口寛敏
16:45 報告
「米国のISS教育者会議への参加報告」 
立教新座中学校・高等学校 教諭 古田豊
17:00 質疑応答・意見交換
17:10  閉会挨拶


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