宇宙航空研究開発機構
宇宙航空研究開発機構(JAXA)では大学生等を対象に「第2回航空機による無重力実験コンテスト」にチャレンジする実験テーマの募集を行っていましたが、30件の応募がありました。
このたび、有識者による選考委員会による選考の結果、下記のとおり無重力実験を実施する6テーマを選定しましたので、お知らせします。
(注)
本教育プログラムは、無重力実験への大学生等の参加を通じて、宇宙環境利用に関する理解を深めるとともに、将来の宇宙開発を担うべき人材の育成に寄与することを目的としています。
飛行機を放物線飛行させることで、機内には約20秒間の無重力(無重量)状態が作り出せます。飛行機に搭乗し、この20秒間の無重力環境を利用して、地上ではできない様々な科学技術実験や文化的実験を行います。
テーマ名 | 代表提案者 (代表提案者学校名) |
---|---|
ミルククラウン形成に及ぼす重力加速度の影響 | 渡健介(東京都立科学技術大学) |
重力変化時の血圧調節における前庭系のはたらき |
粟津ちひろ(福井大学) |
国際宇宙ステーションで着る新しい機能を持つ衣服設計のための実験 〜微小重力環境下の水分移動挙動と形状変化〜 |
小川芽久美(日本女子大学) |
微小重力下での磁性流体を用いた磁界解析実験 |
阿南隆史(東京大学) |
微小重力環境における線香花火の火花の飛び方 |
市村豊(学習院大学) |
Sound Wave Sculpture II |
小野綾子(東京芸術大学) |
2004年 | 10〜12月 | 提案者による実験装置の製作・技術調整。 | |
12月以降 | 航空機実験の実施。実験結果の検討。 | ||
2005年 | 3月 | 成果報告書の提出。 |
(1)実験手法 | ||
(1)パラボリックフライトによって得られる微小重力環境、フライトパターンを有効に利用するものであるか。 | ||
(2)実験装置が目的を達成できる機能を持つ/持たせられるものであるか。 | ||
(2)科学的内容 | ||
(1)論理展開及び実験計画に一貫性があり、提案する実験目的に合致し たものであるか。 | ||
(2)学生提案としてフレッシュさ、独創的なアイディアが見られるか。 | ||
(3)提案する実験装置により成果が得られそうか。 | ||
(3)芸術的内容 | ||
(1)芸術的に優れているか。 | ||
(4)実施体制 | ||
(1)指導教員を必要とする実験の場合、適切な指導教官が支援しているか。 | ||
(2)実験装置が大掛かりな場合、大学等から実験装置製作に係わる支援が得られるか。 | ||
(5)実現性(搭載性) | ||
(1)搭載条件(安全性、リソース)を満たしているか。 |
実験テーマ名 | チーム名 | 提案者 (○:代表者) | 学校名 | 実験の概要 |
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ミルククラウン形成に及ぼす重力加速度の影響 |
(チーム名無し) |
○渡健介 林貴昭 白鳥英 |
東京都立科学技術大学 | 様々な重力環境においてミルククラウンを形成し、その形成過程における重力加速度の影響を調べ、ミルククラウンの形成メカニズム解明に必要な実験データの取得を目的とする。 実験は、液滴を射出する装置に試料(シリコーンオイル)を搭載しCCDカメラで試料の射出からミルククラウンの消滅までの撮影を行う。 |
重力変化時の血圧調節における前庭系のはたらき |
岐阜大学医学部・福井大学医学部 合同研究チーム |
○粟津ちひろ 後藤太郎 松田朋子 |
福井大学 | 重力の受容器官である前庭系が血圧調節に関与していることがラットの実験において見出された。ヒトにおいても前庭系を介した血圧調整系が存在し、それが重力変化時の血圧調節において重要な役割を担っているという仮説を実験で証明することを目的とする。 実験は、ヒトを対象としGVS(前庭系微弱電気刺激)を実施し心電図・血圧のデータを取得する。 |
国際宇宙ステーションで着る新しい機能を持つ衣服設計のための実験〜微小重力環境下の水分移動挙動と形状変化〜 |
日本女子大学大学院多屋研究室 |
○小川芽久美 久保響子 中村加奈子 |
日本女子大学 | 近い将来、人類がISS等の宇宙空間で生活を行い、生活空間を快適にするためには生活関連の技術開発が必要である。地上実験では取得不可能な微小重力下での衣服材料と衣服デザインの最適化のための基礎データを取得し、飛行士の要求が高い温熱的な着心地を解明することを目的とする。 実験は衣服の素材を3種類準備し、それぞれの通気性について検証する。又、あわせて衣服内環境および皮膚温を測定する。 |
微小重力下での磁性流体を用いた磁界解析実験 |
東京大学航空機実験2004 |
○阿南隆史 山本竹志 野村哲史 鈴木俊夫 菱井彩乃 井出和幸 |
東京大学 |
微小重力下で磁性流体に働く重力の影響をなくすことにより、地上とは異なった磁性流体の形状変化を観察し、表面張力と静磁エネルギーが及ぼしている影響について解析することを目的とする。 実験は、磁性流体に電磁石で制御した磁界をかけ、ビデオカメラを使って形状変化を記録する。 |
微小重力環境における線香花火の火花の飛び方 |
学習院大学理学部線香花火研究会 |
○市村豊 水上一也 |
学習院大学 |
線香花火の火花の飛び方に対する重力の影響を定量的に調べることを目的とする。 実験は、チャンバー内に花火を取り付けて点火し、火花の画像とチャンバー内の気体の対流をカメラで撮影する。 |
Sound Wave Sculpture II |
スペースアート会議(CSA) |
○小野綾子 田島裕輝 |
東京芸術大学 |
宇宙での長期滞在者の豊かな精神生活の糧として芸術の想像力や感性への刺激を探る。無重力でしか成立しえない新たな造形表現を行い、音波による物体の動きを調べることにより今後の芸術表現の可能性を開くことを目的とする。 実験は、円筒筒内に衝撃LEDと鈴などを封入し、正弦波を与えて造形表現を行うと共にこれを記録する。 |
選定委員 | 現職(専門分野) |
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細矢 治夫 (委員長) | お茶の水女子大学 名誉教授 (化学) |
岡田 益吉 | (財)国際高等研究所 副所長、筑波大学名誉教授(生物学) |
北郷 悟 | 東京藝術大学 美術学部 彫刻科 助教授 (文化・芸術) |
小林 康徳 | 元宇宙科学研究所教授(宇宙工学) |
高柳 雄一 | 電気通信大学 教授、広報担当学長補佐(宇宙科学全般) |
竹内 伸 | 東京理科大学 基礎工学部材料工学科 教授 (物理学) |
中丸 邦男 | 元宇宙航空研究開発機構嘱託(宇宙技術開発全般) |
高木 隆司 | 神戸芸術工科大学 芸術工学研究科 (物理学) |
宇宙航空研究開発機構 広報部
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