プレスリリース

プリント

宇宙パートナー制度の事業提案の選定結果について

平成16年12月15日

宇宙航空研究開発機構

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。


  1. 報告事項
    「宇宙パートナー制度」の事業提案を審査する選定委員会を11月30日に開催し、今年度分6件の事業を選定したことについて報告する。

  2. 経緯
    (1)   中期計画及び年度計画(平成16年度)において、「新しい発想で新たな宇宙利用を開拓するため、新機関を中心に大学・研究機関・産業界がチームを作って活動するための仕組み」を整備・運用することとした。

    (2) これを踏まえ「宇宙への参加を容易にする仕組み(宇宙オープンラボ)」を実現する施策のひとつとして、産学官連携事業の創出を目指した「宇宙パートナー制度」を整備し、容易にアクセスできるWebサイトを今年6月に開設、本格的な活動を開始した。

    (3) 「宇宙パートナー制度」は、宇宙オープンラボ参加者が、特定の事業の創出を目指す産学官連携チーム(「ユニット」と呼称)を結成し、Web上での情報・意見交換を通じて事業化を目指すものである。機構は、チーム作りの支援や技術アドバイスなどを行うほか、下記選定基準に照らして選定された事業提案について、ユニットが新産業創出を目指して事業化を進めるための呼び水として、宇宙オープンラボの研究資金を提供し、機構とユニットが共同研究を実施するもの。

    (4) 6月以来「宇宙パートナー制度」を活用して約20件のユニットが結成され、この中から締切日までに14件の事業提案が提出されて、今般選定委員会を開催するに至った。

  3. 選定手順及び選定基準
    (1)   選定手順
    外部有識者を含む選考委員会で、14件の提案の中から事前に書類審査で絞り込んだ9件につき、事業提案内容についてヒアリングを行い、審査により6件を選定した。

    (2) 選定基準
    わが国産業競争力の強化や宇宙利用の拡大に資する案件であることが前提であり、新規技術の獲得やビジネスモデルの構築等の実現可能性が高い案件について、独自性・新規性、チームワーク、実現可能性、社会・産業への貢献度を選考基準として、各提案について総合的に検討し、決定した。

  4. 今回選定された案件
    (1)通信衛星を利用した高精細映像の配信事業
    ユニット名: Go!Satelliteユニット
    メンバー: 福田築 宇宙通信(株)技術本部開発統括部長(ユニットリーダー)
    上林憲行 東京工科大学メディア学部教授
    結城崇史 東京工科大学メディア学部講師
    山崎年正 シスコシステムズ(株)先進ソリューション開発部プログラムマネージャ
    内田真理子 東京大学大学院博士課程在籍 及びJAXA職員
    概要: 送信データを分割し複数の通信衛星の中継器を利用してデータ配信を行うことにより、等価的な広帯域伝送(〜数百Mbps)サービスを実現することを目標とする。本事業化研究では、地上部分のデータ分割・集約装置及び訂正符号ソフトウェアの開発、衛星を使っての実証試験を行い、ビジネスモデルの検証を行う。商業通信衛星の空きトランスポンダを束ねることで、広帯域伝送を実現できれば、衛星本体の新規技術開発を行うことなく、遠隔地医療、デジタルシネマ配信等のサービスが可能となる。


    (2)宇宙での生活支援技術
    ユニット名: 近未来宇宙暮らしユニット
    メンバー: 多屋淑子 日本女子大大学院・家政学部被服学科教授(ユニットリーダー)
    成田千恵・小川芽久美 日本女子大学多屋研究室
    沼田喜四司 (株)ゴールドウィンテクニカルセンター技術主席
    松本信二 シー・エス・ピー・ジャパン(株)代表取締役社長
    松村秀一 東京大学建築学専攻助教授(宇宙建築研究会)
    東レ(株)、松下電器産業(株)、浜松ホトニクス(株) 他5社 及びJAXA職員
     
    概要: 現在及び近未来の宇宙滞在において心身の健康を維持するため、日本の優れた民生技術を応用し、宇宙での暮らしを安全・快適に支える画期的な生活支援技術の開発を目指す。幅広い分野からなる企業参加型の研究会を実施し、宇宙化のために必要な情報収集やデータの整理を行い、技術間の融合を探り、宇宙化を検討する。有望なテーマは、産学官連携により試作品への展開も図る。民生技術の宇宙化への可能性のみならず、得られた成果の地上へのスピンオフも狙う。


    (3)宇宙X線検出器の微量分析への応用を目指した読み出し系の開発
    ユニット名: 宇宙X線検出器の微量分析等の産業への応用ユニット
    メンバー: 中山哲 エスアイアイナノテクノロジー(株)技術第5グループ課長(ユニットリーダー)
    田中啓一 エスアイアイナノテクノロジー(株)係員 及びJAXA職員
    概要: JAXA特許保有の宇宙X線検出技術を、産業用のX線微量分析のセンサーに応用する研究。実現すれば従来方式の感度を飛躍的に向上させ、ppmレベルの微量元素の非破壊分析が可能となる。次世代ウエハー汚染検査等の産業分野への応用が大いに期待できる。本事業化研究では、まず微量分析用のセンサーの開発に必須となる多画素素子の読み出し系に焦点を絞って開発を行う。


    (4)ISS〔国際宇宙ステーション〕内での映像撮影機材のレンタル事業の研究
    ユニット名: スペースフィルムズユニット 
    メンバー: 高松聡(個人)(ユニットリーダー)
    井上充夫(株)イマジカ テレビ本部プロダクション技術部撮影グループ副部長
    野津仁(株)イマジカ テレビ本部CM事業部 他 及びJAXA職員
    概要: ISS〔国際宇宙ステーション〕に商業目的でいつでも利用できる高精細カメラを常設して、CMをはじめとした商業ニーズに迅速に対応する等により継続的なビジネス創出を目指し、試験運用とビジネスモデルの実証を行う。一般国民からは遠い存在である宇宙を、映像という親しみやすい形で、宇宙のしきいを低くする試みである。


    (5)プラネタリウムを活用した宇宙エンターテイメントビジネス
    ユニット名: プラネタキッズユニット
    メンバー: 大平貴之(個人)(ユニットリーダー)
    平間陽一郎 ソニーテクノクリエイト(株)営業戦略統括
    澤田直人 ソニーテクノクリエイト(株)コンテンツクリエーション課チーフディレクター
    湯本博文 学習研究社 教材開発室長
    西村俊之 学習研究社 大人の科学編集部編集長 及びJAXA職員
    概要: ユニットリーダーがこれまで独自に設計・開発し、科学館などで上映してきた世界最高水準(500万個)の星を投影できる可動式プラネタリウム「メガスター」をベースに、JAXA研究成果や宇宙映像、CGを組合せて、ディジタルプラネタリウム構築を狙う。魅力的な宇宙教育コンテンツを、科学館などに提供するビジネスモデルの構築を目指す。JAXAの科学部門や教育部門と連携し、ソフトウェアやコンテンツの開発を行う。


    (6)超小型衛星による低コスト・迅速な宇宙実証・利用プロセス確立プロジェクト
    ユニット名: CubeSatユニット
    メンバー: 中須賀真一 東京大学航空宇宙工学専攻助教授(ユニットリーダー)
    川島レイ UNISEC(NPO法人大学宇宙工学コンソーシャム)事務局長
    林孝 三井物産エアロスペース(株)宇宙・航空産業チーム課長代理
    黒木聖司 創価大学教授 及びJAXA職員
    概要: 超小型衛星を活用したビジネスモデルの構築を目指し、産学官連携による衛星の開発・実証を行う。リードタイム(開発期間)を1〜1.5年に短縮して宇宙へのしきいを下げ、新規技術の迅速な宇宙実証を実現することで、新たな宇宙利用法の創出を目指すプロジェクト。事業化の観点からは、超小型衛星に搭載するカメラから得る地球画像を使ったコンテンツビジネス等が考えられ、さらに広くアイディアを募集して新たなビジネスモデルの構築を図る。



宇宙航空研究開発機構 広報部
TEL:03-6266-6413〜6417
FAX:03-6266-6910