プレスリリース

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JAXA宇宙環境計測装置のCNES/Jason-2衛星への搭載について

平成17年10月12日

宇宙航空研究開発機構

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。


 仏国国立宇宙研究センター(CNES)及びJAXAとの協力の一環として、JAXAの宇宙環境計測装置(TEDA/LPT)をCNESのJason-2衛星へ搭載する。

1. 経緯
(1)CNES及びJAXAとの協力の一環として、CNESが開発した地表反射光観測装置(POLDER)を、みどり及びみどりIIに搭載した。
(2)日仏宇宙協力シンポジウム宇宙部品分科会第5回会合(17年4月13日)において、CNES側からJason-2衛星へのTEDA/LPTの搭載可能性について打診があった。その後、本年6月15-17日にパリで開催された第5回日仏宇宙協力シンポジウムにおいて、協力実現に向け最終調整を行うこととなった。

2. 日仏での宇宙放射線共同観測の意義(Jason-2へのJAXA/TEDA搭載意義)
 衛星の障害(特に電子部品への影響が深刻)につながる宇宙放射線環境の把握は重要課題である。JAXAでは、JAXA衛星の打上げ機会を最大限活用した観測を継続することにより、宇宙放射線の強度分布をモデル化し、衛星設計等への反映に努めている。今回のJason-2には、CNES側もCNESで開発した放射線計測装置(CARMEN)を搭載する予定であり、両計測装置の相互校正及びデータ交換によるデータの充実とともに、関連の解析研究の向上もはかれる。

3. JAXA/CNESの協力分担等
(1) JAXAの主たる分担は、TEDA/LPTの開発、CNESへの引渡し及びそのデータ処理等。
(2) CNESの分担は、Jason-2及びCNESが分担するミッション機器の開発、及び衛星運用等。
(3) なお、衛星の打上げは、NASAが担当する。

4. TEDA/LPTの開発の概要
TEDA/LPTの仕様
質量:  約7Kg  消費電力:  約15W
観測項目:  電子、陽子、α線
スケジュール:   CNESへの引渡時期:  2006年11月末
  打上げ時期:  2008年中旬

5. 今後の予定
CNES/JAXA間で了解覚書(MOU)を締結する。(本年内を予定)

(注)略号:
TEDA :Technical Data Acquisition Equipment
LPT : Light Particle Telescope (軽粒子観測装置)



参考1

JASON-2計画について

(LPT)
 電子(0.03〜20MeV)
 陽子(0.4〜250MeV)
 α粒子(0.8〜400MeV)


◇ミッション:海洋観測衛星(海表面トポグラフィ)

◇軌道:高度1336km、傾斜角66度、太陽非同期

◇質量:約500kg

◇打上年度:2008年度中旬予定( Delta-2 )

◇寿命:5年

◇JASON-2の参加機関及び分担表
NASA マイクロ波放射計、レーザー反射鏡、GPS受信機、打上げ
CNES 衛星バス、二周波レーダー高度計、CARMEN-2、DORISシステム、地上系(衛星運用及びデータ処理・配付等)
NOAA 地上系(データ処理・配付等)
EUMETSAT 地上系(データ処理・配付等)
JAXA TEDA/LPT(データ処理・配付含む)


参考2

宇宙環境計測の意義


 人工衛星の故障を誘発したり、宇宙飛行士に有害な影響を与える宇宙放射線の環境を計測するため、人工衛星に搭載する計測装置の研究・開発を行っている。

 現在は、電子、陽子、α粒子の粒子個数、エネルギーと方向の分布を高精度で計測できる、小型・軽量の「軽粒子観測装置」を中心に、宇宙環境観測機器の開発及び運用を進めている。

 その結果、取得したデータにより宇宙環境モデルを構築し、宇宙機の設計に反映することを目指している。



宇宙環境計測の実績と今後の計画

 これまで衛星にさまざまな環境計測装置を搭載しデータを取得してきた。今後もALOS搭載予定の軽粒子観測装置をはじめ、下記のような環境計測装置によりデータを取得する予定である。

衛星打上げ年度高度(約)搭載観測機器
きく5号 1987年8月 36,000km 放射線吸収線量モニタ、帯電電位モニタ、帯電放電モニタ、メモリ誤動作モニタ、集積回路モニタ、太陽電池セルモニタ、汚染モニタ
きく6号 1994年8月 8,000-38,000km 放射線吸収線量モニタ、重イオン観測装置、メモリ誤動作モニタ、集積回路モニタ、太陽電池セルモニタ、磁力計、帯電電位モニタ、汚染モニタ
みどり 1996年8月 800km メモリ誤動作モニタ、高エネルギー粒子モニタ、積算吸収線量計、帯電電位モニタ、重イオン観測装置、他
きく7号 1997年11月 500km 原子状酸素モニタ
こだま 2002年2月 36,000km 標準型放射線吸収線量モニタ
つばさ 2002年9月 250-36000km 標準型放射線吸収線量モニタ、重イオン観測装置、積算吸収線量計、他
みどりII 2002年12月 800km 放射線吸収線量モニタ、積算吸収線量計、他
ALOS 2005年度 700km 軽粒子計測装置、重イオン観測装置、他
ETS-VIII 2006年度(予定) 36,000km 積算吸収線量計、他
JEM 2007年度(予定) 400km 標準型放射線吸収線量モニタ、重イオン観測装置、他
GOSAT 2008年度(予定) 700km 軽粒子計測装置、他
Jason-2 2008年度(予定) 1,340km 軽粒子計測装置、他


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