文部科学省及び宇宙航空研究開発機構は、平成17年10月11〜13日に北九州市国際会議場において、「第12回アジア太平洋宇宙機関会議」(APRSAF-12)(別添)を開催いたしました。
この会議は、主にアジア太平洋地域の21カ国、7国際機関から、約120人の参加を得て開催され、各国の宇宙開発の動向に関する情報交換や、災害低減に関する共同プロジェクトの提案などについての活発な意見交換が行われました。
最終日(13日)に各分科会における議論を集約し、別紙のとおり勧告が採択されましたので、お知らせいたします。
〔APRSAF-12の結果概要〕
本会合は、全体会合において各国の代表者から各国における宇宙開発等に関する現状の紹介がなされた後、4つの分科会と防災特別セッションに分かれて意見の交換が行われました。
各分科会及び防災特別セッションにおける主な結論は以下のとおりです。
【地球観測分科会】
- "Sentinel-Asia"(※1)構築のためのパイロットプロジェクトを決定し、この計画の具体的な実施に向けた取組を進めることとした。
(※1)「アジアの監視員」。災害管理目的の衛星データ利用ネットワークの構築を目指した取組。
【通信分科会】
- ブロードバンド衛星通信賞を創設すること、衛星通信に関するワークショップを開催(平成18年中頃)することに合意した。
- 通信衛星の能力向上の重要性を認識し、WINDS(※2)等を利用したパイロットプロジェクトを次回のAPRSAFに提案することに合意した。
(※2)「超高速インターネット衛星」。固定超高速衛星通信技術の開発・実証および固定超高速衛星通信ネットワーク機能の検証を行うことを目的とした衛星。平成19年度の打上げを予定。
http://www.satnavi.jaxa.jp/project/winds/index.html
【教育普及分科会】
- 国際水ロケット大会、国際宇宙教育フォーラムを引き続き開催するとともに、国際ポスターコンテストを開催することに合意した。
- 持続可能な開発のための宇宙利用の重要性について、一般公衆、特に若い世代への認知と、政策決定者の理解を得られるよう引き続き活動していくことに合意した。
【ISS分科会】
- 国際宇宙ステーション(ISS)の日本モジュール(きぼう)を活用した共同研究実施の可能性について意見交換を行うとともに、次回会合に向けて日本からより詳細な情報提供を行うともに、次回会合までの間に協力枠組みを検討するための会合を開催することに合意した。
【防災特別セッション】
- アジア地域における防災危機管理システムの構築に向け、各国が協力して取り組んでいくことが合意された。
- この取り組みを具体的に推進するための共同プロジェクトチームを出来るだけ早期に設置すること、その第一段階として"Sentinel-Asia"パイロットプロジェクトを2年間実施することに合意した。
- 参加機関のコンタクトポイントを今年中に登録すること、平成18年2月頃を目途に準備会合を開催することに合意した。
別紙
第12回アジア太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF-12)の勧告(仮訳)
エンドユーザーのニーズに応えるような、効果的で効率的な宇宙利用の情報やツールを作り出し、それらを提供することにより、宇宙からの恩恵を社会に普及する重要性を強調し、
域内における宇宙コミュニティをさらに拡大する重要性を認識し、
アジア太平洋域内で発生した地震と津波による多くの犠牲者と甚大な被害に弔意を表明し、自然災害による被害を防ぎ、安全で安心な社会を実現するために宇宙利用を進めることの必要性を確認し、
すべてのAPRSAF-12参加国は、以下の勧告を採択した。
- 防災危機管理システム構築が時機に適ったものであることにかんがみ、できるだけ多くの宇宙機関、防災機関、その他の関連地域機関、国際機関の参加を得て、APRSAFの枠組みの中に防災危機管理システムを構築していくための具体的な国際協力を強化すること
- 上記防災危機管理システムの構築に向けた具体的なステップをとっていくこと、また、その第1のステップとして、『アジアの監視員(Sentinel Asia)』パイロットプロジェクトを実現すること、そのため、プロジェクトを実施する詳細案を作成するための共同プロジェクトチームを出来るだけ早期に設置すること
- 防災のための利用を含め、アジア太平洋地域が恩恵を享受するように、超高速インターネット衛星(WINDS)の利用促進を加速すること
- 持続可能な開発を促進するための宇宙利用の重要性について、さまざまな教育、啓発活動を通じ、一般国民、特に若い世代、及び政策決定者の理解を得る努力を継続すること
- ISS「きぼう」利用の具体的提案を募り、また、教育イベントを実施して、ISS「きぼう」の利用を促進するためのアジア・太平洋諸国の意見交換を進めること
- 宇宙科学、宇宙技術及びその利用を、活用して恩恵を享受するアジア太平洋地域における能力を強化するための人材育成活動を拡充すること
- 勧告を実施するための予算獲得を検討すること
- ワーキンググループから提案があった行動計画を実施していくよう努める
Recommendations of the twelfth session of the Asia-Pacific Regional Space Agency Forum (APRSAF-12)
Stressing the importance of maximizing space benefits for the society through the generation and provision of effective and efficient space-derived information and space-based tools to respond to the needs of end-users,
Recognizing the need to further expand the space community in the region,
Expressing deep condolences for the recent loss of numerous lives and enormous damages suffered in the Asia-Pacific region resulting from earthquakes and tsunamis and recognizing the need to promote space utilization toward the realization of the safe and secure society by minimizing damages caused by natural disasters,
The participants of APRSAF-12 adopted the following recommendations:
- To strengthen international cooperation to take concrete actions toward the establishment of a disaster risk management system within the framework of APRSAF, recognizing the timeliness of establishing such a system, with the participation of as many entities as possible such as space agencies, disaster management agencies, as well as relevant regional and international entities;
- To take concrete steps toward the establishment of the above disaster risk management system, and as the first step, to implement "Sentinel Asia" pilot project through the formation of the joint project team at the earliest possible date in order to refine the details of the implementation of the project;
- To accelerate the promotion of the applications of the Wideband InterNetworking engineering test and Demonstration Satellite (WINDS) for the benefit of Asia-Pacific region, including those for disaster management;
- To make continuous efforts to increase awareness among the general public, especially youth, and decision-makers of the importance of space applications to promote sustainable development through variety of education and awareness activities;
- To encourage further coordination among countries of Asia-Pacific region to promote the utilization of ISS/JEM, by soliciting concrete proposal for the ISS/JEM utilization and carrying out educational events;
- To enhance capacity building activities to strengthen the capability of the Asia-Pacific region to use and benefit from space science and technology and their applications;
- To explore possible funding opportunities for the implementation of the recommendations;
- To work toward the implementation of actions proposed by the working groups.
別添
第12回アジア太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF-12)について
1.アジア太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF)の概要
APRSAFは、1992年に開催されたアジア太平洋国際宇宙年会議の閉会宣言における日本からの開催提案を契機に、1993年より、現在の文部科学省及び宇宙航空研究開発機構(JAXA)の共催により毎年開催。
アジア太平洋地域における宇宙利用の促進を目的として、各国宇宙関係機関及び政府関係者の参加を得て、
各国の活動報告、将来計画に関する情報交換、並びに具体的な協力活動の構築に向けた議論を行っている。
過去4回は、アジア太平洋諸国の宇宙機関との共催により海外で開催したが、今回は、5年ぶりの日本開催となる。
なお、
同会議のプログラムの一環として、日本・アジア太平洋地域の青少年を対象とした宇宙関連事業の普及・啓発を目的に、国際水ロケット大会が開催される(
詳細は参考2)。
2.第12回アジア太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF-12)の概要
(1) 日程・場所
平成17年10月11日(火)〜13日(木)、北九州国際会議場
(2) 参加者
国内:宇宙開発委員会・松尾弘毅委員長代理(総合議長)、
文部科学省・森口研究開発局長、宇宙航空研究開発機構・立川理事長他
アジア太平洋諸国:宇宙関係機関長をはじめ政府関係者、防災機関等の利用機関、産業界等
(3) テーマ・内容
テーマ:「Maximizing Space Benefits for the Society」
(宇宙からの恩恵のさらなる社会への還元を目指して)
内 容:
・宇宙技術を利用した災害管理・低減への貢献
・宇宙を題材にした教育による青少年啓蒙普及 等
(4) プログラム構成(詳細は参考1)
10月11日
全体会合(歓迎挨拶、各国代表スピーチ)
10月12日
分科会(地球観測、通信衛星応用、教育普及、ISSの4分科会と宇宙を利用した災害低減に関する特別セッションを開催)
10月13日
午前:全体会合(各分科会からの報告、勧告等のとりまとめ)
午後:テクニカル・ツアー(北九州エコタウン他)
参考2
アジア太平洋地域宇宙機関会議第1回国際水ロケット大会開催概要
- 日時
平成17年10月15日(土) 9:00〜18:00(予定)
小雨決行
- 場所
水ロケット製作会場 :北九州国際会議場
水ロケット打上げ会場:延命寺臨海公園野球場(小倉北区赤坂海岸)
- 主催
文部科学省、宇宙航空研究開発機構
- 協力
(財)日本宇宙少年団、北九州市、(財)日本宇宙少年団北九州分団及び福岡分団
- 競技内容
日本及びアジア・オセアニア各国の中学生約60名が、ペットボトルで水ロケットを手作りし、飛行距離を競う。
- アジア、オセアニア各国 約10名
(マレーシア、インドネシア、スリランカ、オーストラリア、ベトナム、韓国、タイ、中国、インド他を予定)
- 九州各県 8名
- 日本宇宙少年団北九州市公募 約20名
- 日本宇宙少年団福岡分団 約20名
- 見学
水ロケット打上げ(13時から延明寺臨海公園野球場)は見学自由
※ 当日雨天の場合、大会実施の有無のお問合せは、北九州国際会議場(TEL092-541-5931)までお願いします。