宇宙航空研究開発機構
「はやぶさ」は、平成17年11月12日に、着陸・試料採取に向けた誘導航法機能の確認と、近距離レーザ距離計(LRF) の較正、および探査ロボット「ミネルバ」の投下を目的に、日本時間同日午前3時に地上からの指令でイトカワより高度約1.4kmから降下を開始しました。慎重に降下させるため速度を十分に落として誘導したことから、予想よりも約1時間降下に時間を要し、最低高度点への降下時刻をNASA 深宇宙追跡局網による運用時間帯に移動させました。誘導目標地点としては、当初、MUSES-SEA 域に近い地点を目標としていましたが、誘導方式の制約から地球方向の直下地点とならざるをえない方法であるために、この時刻変更により結果として、MUSES-SEA 域東側へと目標点を変更しました。
姿勢制御と、降下中の高度、速度の制御は概ね順調でした。最低到達高度は、レーザ高度計の指示値を換算すると約55mでした。
「はやぶさ」は、着陸に際して、表面までの距離とともに、斜め下4方向への距離を計測することにより、表面へ姿勢をならわせる操作を行います。「はやぶさ」は、このために近距離レーザ高度計(LRF) を搭載していますが、これについても、4ビームすべてについて、実際に小惑星表面について測定値が正しく得られ、レーザ高度計と同時に計測ができました。
探査ロボット「ミネルバ」は、所定の高度に到達したと思われた時点で、地上から切り離し指令が発信され、日本時間午後3時24分に実際にこれが行われ、その結果が同40分にJAXA相模原管制センターで確認されました。「ミネルバ」は、「はやぶさ」との通信が確保された状態で分離され、これは「はやぶさ」と「ミネルバ」の双方からの信号により確認されました。また、「はやぶさ」搭載の障害物検出センサにより、「ミネルバ」が探査機から分離されたことも確認されました。
「ミネルバ」の分離は、地上管制センターを介して行われたため、実際に分離されるまでの十数分間に「はやぶさ」のイトカワ表面上における位置がドリフトし、分離された時点で、高度は約200m 近くに達して、残念ながら「ミネルバ」をイトカワ表面にとどめることはできなかった模様です。
なお、「ミネルバ」は、その後も継続して「はやぶさ」との通信を保ち続けており、搭載機器の状況も把握されています。一両日中、なお詳細な検討を行い、継続してコンタクトをとり続ける予定です。詳細がわかりしだい、あらためて連絡いたします。
このほか、実際のMUSES-SEA 域での着陸・試料採取を行うには、日本国内からは可視ではないため、NASA 深宇宙追跡局網を用いる必要がありますが、本日の再リハーサルでは、この複数局を切り替えての運用性についても、実際のスケジュールの中で確認できたと考えています。
すでにお知らせしているように、「はやぶさ」は今後
1. 11月19日に、署名入りターゲットマーカを用いて第1回目の着陸と試料採取、
2. 11月25日に、第2回目の着陸と試料採取を
試みる予定です。
本日の再試験にあたり、協力をいただいた米国航空宇宙局(NASA) の深宇宙追跡局網に深く感謝いたします。
宇宙航空研究開発機構 広報部
TEL:03-6266-6413〜6417
FAX:03-6266-6910