プレスリリース

プリント

YS-11退役機を次期国産旅客機開発に活用

平成18年11月13日

宇宙航空研究開発機構
株式会社日本航空

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)では次期国産旅客機実現のための研究開発を続けております。先日9月30日で国内路線から退役したYS-11型機が日本航空(JAL)からJAXAへ、旅客機構造設計技術の継承・発展の必要から研究用として譲渡されます。

 11月14日、JALからJAXAへ譲渡を行います、以下ご報告致します。





1.対象型式 YS-11型機(旧 登録記号 JA8788)
昭和48年就航より今年5月の最終運航日まで、33年間で約57,000時間を飛行した機体。
「おが」の愛称で親しまれ、国内路線を運航。
2.搬入場所・期日 航空宇宙技術研究センター 調布飛行場分室
平成 18年 11月 14日(予定)
※ 機体を複数に分割し、陸路にて夜間に搬送いたします。
3.使用目的  旅客機の構造設計や安全性の技術開発のための技術データ(構造疲労データ等)の蓄積、次期国産旅客機構造への複合材適用に向けた研究を目的とします。


 JAXAでは、退役したYS-11機体について最新の構造解析・計測技術、試験装置を用いて研究することにより、その成果を次期国産旅客機開発へつなげるとともに、今後も研究開発を継続し我が国の旅客機開発技術をさらに発展させていきます。




問い合わせ先:
宇宙航空研究開発機構 航空プログラムグループ 企画推進室
〒182-8522 東京都調布市深大寺東町7-44-1 Tel:0422-40-3958 Fax:0422-40-3281
株式会社日本航空  広報部
〒140-8605 東京都品川区東品川2-4-11 Tel:03-5460-3105 Fax:03-5460-3108



参考情報

YS-11型機は、ご存知のとおり昭和37年8月30日に初飛行し、昭和39年8月に航空局の型式証明を得て、路線就航をいたしました。
 JAXA(旧航空宇宙技術研究所)におきましては、YS-11型機の開発に関し、昭和36年からの全機静強度試験をはじめとして昭和46年までに各種(注1参照)の試験を実施してまいりました。
 試験で得られた疲労損傷データは設計変更等でYS-11型機実機に反映されることとなりました。

 一方、YS-11に続く次期国産旅客機の実現を目指した研究開発プロジェクト(経済産業省/NEDOプロジェクト「環境適応型高性能小型航空機研究開発」)においても、JAXAはこれまで蓄積してきた独自技術をベースとした高付加価値・差別化技術の研究開発を通じてプロジェクトに貢献しています。

 今般、入手したYS-11退役機体の運航履歴や整備・修理記録を整理するとともに、実機の経年劣化、損傷の実態を調査して開発時の想定との比較研究が可能になり、日本で初めての航空機のライフサイクルに関するデータベースを作ることが可能となります。

 また、JAXAとしては、搬入されるYS-11型機の機体を構造的に調べ、構造を複合材化した場合の重量軽減の効果を確認するなど、次期国産旅客機開発に向けて、特に胴体及び客室構造、あるいは主翼構造の安全設計に役立てることを検討しています。

注1:
昭和36年〜39年
昭和37年〜38年
昭和37年〜40年
昭和38年〜39年
昭和38年
昭和39年〜40年
昭和42年〜44年
昭和45年〜46年
:全機静強度試験
:主翼疲労試験(図1参照)
:胴体疲労試験(図2参照)
:前脚及び主脚疲労試験
:鳥衝突実験
:部分胴体疲労試験
:A-300型部分胴体疲労試験
:A-500/600型主翼疲労試験




図1 YS-11型機主翼の疲労試験



図2 YS-11型機胴体内圧繰り返し荷重試験


宇宙航空研究開発機構 広報部
TEL:03-6266-6413〜6417
FAX:03-6266-6910