プレスリリース

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人工衛星データを用いた硫黄島の地殻変動の試験的調査の結果について

平成18年11月14日

国土地理院
防災科学技術研究所
宇宙航空研究開発機構
気象庁

 硫黄島については、今年の8月頃より、GPS観測データが従来の沈降から隆起に転じたとする報告があった。
 火山噴火予知連絡会事務局(気象庁)は、衛星データを解析するためのグループ(衛星解析グループ)の設置準備を進めており、今回、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同し、地球観測衛星「だいち」(ALOS)に搭載されている合成開口レーダーの観測データを用い、硫黄島(東京都小笠原村)の地殻変動について試験的に調査解析を行うこととした。
 今回の調査は、衛星解析グループへ参加予定の国土地理院、防災科学技術研究所が中心となり、6月16日、8月1日、11月1日のデータを用いてそれぞれの間の地殻変動を解析した。結果は次のとおり。

○ GPS観測点「硫黄島1」付近を基準とし、以下のとおり相対的な変化が検出された。
(1)6月16日〜8月1日の間: 特段の変化なし。
(2)8月1日〜11月1日の間: 同島南東部海岸で数cm〜10cmの隆起。
北部中心部で数cmの沈降。

○ 衛星データの活用及び解析手法については、今後さらなる検討を進める予定。

 なお、硫黄島では、従来から活発な地殻変動が発生している。最近では2001年9月、10月及び2004年6月に海底噴火や小噴火が発生している。しかしながら、現在、火山性地震は比較的少ない状況で、火山活動は静穏に経過している。


 添付資料 
   別紙1 硫黄島の概略位置、観測点配置図、過去の火山活動について
   別紙2 硫黄島のGPS観測結果について(国土地理院)
   別紙3 硫黄島の衛星データによる地殻変動解析結果について(国土地理院)
   別紙4 硫黄島の衛星データによる地殻変動解析結果について(防災科学技術研究所)
   別紙5 火山噴火予知連絡会衛星データ解析グループについて



本件に関する問い合わせ先
気象庁地震火山部火山課火山対策官
国土地理院地理地殻活動総括研究官
防災科学技術研究所火山防災研究部研究員
宇宙航空研究開発機構防災利用システム室

山本哲也(TEL:03-3284-1749 FAX:03-3213-3648)
村上 亮(TEL:029-864-2477 FAX:029-864-2655)
小澤 拓(TEL:029-863-7749 FAX:029-863-7690)
森山 隆(TEL:03-3516-9112 FAX:03-3516-9160)
中村太一(TEL:03-3516-9109 FAX:03-3516-9160)



別紙1



硫黄島 記録に残る主な火山活動(日本活火山総覧(第3版)より)

年月 
1889(明治22)年または1890(明治23)年
水蒸気爆発
1922(大正11)年7月
水蒸気爆発
1935(昭和10)年
水蒸気爆発
1944(昭和19)年12 月
水蒸気爆発
1957(昭和32)年3月
水蒸気爆発
1967(昭和42)年12 月
水蒸気爆発
1969(昭和44)年11月または12月
小爆発(水蒸気爆発)
1978(昭和53)年12月
小爆発(水蒸気爆発)
1980(昭和55)年3月
小爆発(水蒸気爆発)
1982(昭和57)年3月、11月
小爆発(水蒸気爆発)
1999(平成11)年9月
水蒸気爆発
2001(平成13)年9月、10 月
海底噴火および小爆発(水蒸気爆発)
2004(平成16)年6月 ごく小規模な水蒸気爆発


別紙2


別紙3


別紙4


別紙5

平成18年11月14日
火山噴火予知連絡会

火山噴火予知連絡会衛星解析グループについて


 地球観測衛星「だいち」等の観測データを用いた防災利用実証実験(以下、「実証実験」と略)を通じ、今後の火山観測や火山学研究等における衛星データの利用方法を調査・検討するため、以下のとおり火山噴火予知連絡会に衛星データを解析するためのグループ(「衛星解析グループ」と呼ぶ)を設置する。


  1. 目的
    1. 日本列島・領海内の主要活火山等を対象に、「だいち」等の観測データによる火山活動の監視及び地殻変動等の検出の手法、及びこれらによる解析結果の火山活動評価への利用方法についての調査・検討
    2. 噴火活動開始等の異常が確認された場合における、噴火の規模や影響の範囲の把握等についての衛星データの有効性の調査・検討
  2. 設置期間
     「実証実験」の実験期間(平成18年度〜「だいち」運用終了までを目安)

  3. 参加機関等
     火山噴火予知連絡会委員及び臨時委員の属する機関を対象とし、参加を呼びかける。
    ○平成18年11月14日現在、以下の11機関が参加
      気象庁(気象研究所を含む)、国土地理院、東京大学地震研究所、海上保安庁海洋情報部、岩手県、
      産業技術総合研究所、防災科学技術研究所、北海道大学、京都大学、名古屋大学、東北大学
     この他、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が技術支援等を行うメンバーとして参加。

  4. 関係機関との調整
     火山噴火予知連絡会事務局(気象庁)は、衛星解析グループ等からの要望をもとに、対象火山、解析手法等の具体的事項について整理のうえ予知連全体としての計画策定を行い、これをもとに宇宙航空研究開発機構等の関係機関と実施にあたっての調整を行うこととする。

(参考)「だいち」防災利用実証実験について
 「だいち」による防災利用実証実験は、本年2月に内閣府と文部科学省が共同で設置した「防災のための地球観測衛星等の利用に関する検討会」に基づく取り組みであり、「だいち」の防災分野の利用をより一層促進するとともに、「だいち」以降の防災のための次期地球観測衛星システム等の開発・運用等に向け、防災関連業務における地球観測衛星利用の実効性向上の検証等を狙いとしたものである。この中で、火山噴火予知連絡会は、JAXAが実施する“火山活動の評価及び噴火活動の把握に関する実証実験”に参加し、火山活動評価への活用を目的として、火山活動の監視及び異常検出の手法について検討を行う。


宇宙航空研究開発機構 広報部
TEL:03-6266-6413〜6417
FAX:03-6266-6910