プレスリリース

プリント

太陽電池用「多結晶シリコン基板」の品質評価法の開発について

平成19年4月5日

宇宙航空研究開発機構

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、太陽電池用基板の主流である多結晶シリコン基板の品質評価法について、新たな評価法(注1)「弗酸(HF)水溶液浸フォトルミネッセンスイメージング法(特許出願中)」の開発に成功しました。従来法では、基板1枚あたり品質確認に20分程度の時間を要していましたが、新評価法によるとわずか1秒以下で品質確認することが可能となり、品質確認時間の大幅な短縮に成功した画期的な手法と言えます。本評価法は、最近の環境・エネルギー問題への関心の高まりから需要が急伸している太陽電池の生産性向上や高効率化等、太陽光発電システムの大幅なコストダウンに大きく貢献することが期待できます。

 本評価法は、従来法(注2)と比べて、
(1)非破壊・非接触
(2)超高速・高分解能
(3)装置が非常に簡便
(4)製造プロセスと同時に測定が可能なので製造ラインに組込み可能
 という特徴を持ちます。

 太陽電池の種類は材料により、シリコンと化合物系の2つに大別され、今回の評価法の対象である、太陽電池用の多結晶シリコン基板は低コストなことと量産性に優れていることから、太陽電池生産量の大部分を占めております。
 なお、本評価法は、4月6日発行の論文誌(注3) (Japanese Journal of Applied Physics Vol.46 No.15)にExpress Letter論文として掲載されます。

図1. 弗酸(HF)水溶液浸フォトルミネッセンス(PL)イメージング法の概略図



図2. 新評価法と従来法の比較
 (a)新評価法により1秒で測定した画像と、(b)従来法で20分かけて測定した画像の比較。黒い部分が欠陥像(同品質の別基板の評価例)。
 新評価法では、測定時間が20分から1秒へと1/1000以下に短縮されただけでなく、分解能が約20倍ほど向上したことにより鮮明に欠陥が捉えられている。


注1)弗酸(HF)水溶液浸フォトルミネッセンス(PL)イメージング法
シリコン基板を弗酸に浸すことにより、表面の電子状態を最良にしておき、そこへ光を照射して基板から発せられる蛍光像(フォトルミネッセンス・イメージ)を高感度CCDカメラで撮影する。蛍光像には基板中の欠陥が鮮明に映し出される。


注2)従来法としては一般的に、以下の2つの方法が使われております。
(1)マイクロ波光導電減衰法
半導体試料に光を照射した時の導電率変化をマイクロ波で検出し、同試料のキャリアライフタイムを測定する手法。
(2)表面光起電力法
半導体試料にいくつかの波長の光を照射した時の表面電位変化をウェハ近傍に設置した非接触のプローブで検出する事により、同試料のキャリア拡散長を測定する手法。


注3)
JJAP(Japanese Journal of Applied Physics)、応用物理学会は世界50カ国以上で広く読まれており、海外でも高い評価を得ている英文論文誌です。Full Paper と Short Note を中心とする Part 1 を年20回程度、Letters の Part 2 を月2回程度発行しています。また,インパクトが大きく速報性が要求されると判断された論文は、Part 2 に Express Letters として迅速に出版されます。

問い合わせ先:

JAXA 宇宙科学研究本部 庶務課広報係
電話 042-759-8008



宇宙航空研究開発機構 広報部
TEL:03-6266-6413〜6417
FAX:03-6266-6910