宇宙航空研究開発機構

JAXA技術の技術移転先企業であるニューメディカ・テック株式会社が
「ものづくり日本大賞」の「優秀賞（近畿ブロック）」を受賞

宇宙航空研究開発機構

　独立行政法人 宇宙航空研究開発機構（JAXA）は、研究開発の結果生まれた特許等の知的財産の民間移転を促進すべく活動しており、これまでにも多くの技術が実用化されてきましたが、今般、実用化事例のひとつである「宇宙という閉鎖空間での生命維持技術の1つとして研究している水再生技術」を応用した「浄水装置」を開発し販売しているニューメディカ・テック株式会社（大阪府吹田市）代表取締役前田芳聰（まえだ　よしあき）氏が、経済産業省が主催する「ものづくり日本大賞」（＊1）の近畿ブロックにおける「優秀賞」を受賞いたしました。

　この受賞は、前田氏が代表を勤めているニューメディカ・テック株式会社が開発した「緊急災害用の小型軽量可搬式 全水域対応型 飲料水製造装置の開発」が評価されたものです。同社は約12年前から逆浸透膜方式の浄水装置の開発・販売を行っていましたが、JAXAの研究開発成果である「宇宙の閉鎖空間における生命維持技術の1つである水再生技術」の技術移転を受けて、更なる技術レベルの向上、逆浸透膜方式の浄水装置の低圧・小型化を実現いたしました。同社の浄水装置は、従来は水の分子が通りづらい0.1ナノメートル（1000万分の1ミリメートル）の孔を持つフィルターを用いていますが、JAXA技術を付加することによって水の分子を優先的に通すことを可能にし、海水の淡水化は勿論、農薬、ウィルスをも除去することを実現しています。また、「水のおいしさ」にもこだわったものとなっており、災害対策用、水道未整備地域用、家庭用等に広く普及しています。

　今回の受賞は、前田氏および同社の持つ技術力に加えてJAXAとの連携により技術レベルを向上させたことが、評価されたものです。また、同社はJAXAが運営している宇宙オープンラボにも参画しており、将来の宇宙開発で利用できる「小型、低消費電力の宇宙用飲料水製造装置」の開発を、JAXAと共同で行っています。
　本受賞は、JAXA研究開発成果が利用され、企業が更なる飛躍の一歩を踏み出した成功事例のひとつであり、JAXAとしても産業活性化に貢献できた事例と考えています。
　JAXAでは、今後とも、更に研究成果を社会に還元するための活用促進を図り、我が国の産業競争力強化にいっそう貢献していきます。

（＊1）
「ものづくり日本大賞」は、我が国の産業・文化の発展を支え、豊かな国民生活の形成に大きく貢献してきた「ものづくり」を着実に継承し、さらに発展させていくため、製造・生産現場の中核を担っている中堅人材や、伝統的・文化的な「技」を支えてきた熟練人材、今後を担う若年人材など、「ものづくり」に携わっている各世代の人材のうち、特に優秀と認められる人材に対して内閣総理大臣賞 、経済産業大臣賞等を授与する表彰制度で、今年度が第2回の表彰になります。
詳細は、以下の「ものづくり日本大賞」URL参照。
http://www.jmf.or.jp/monodzukuri/index.html
http://www.kansai.meti.go.jp/3-5seizousangyou/monodukuri/index.html

• 国際宇宙ステーションの飲料水は主に地上から運んでいますが、「輸送コストが高い（打上げられなければ水不足）」、「水質基準が充分でない」、「おいしくない」という問題があります。JAXAではこの問題を解決するとともに、将来の有人宇宙探査にも備える意味で、宇宙用水再生技術の研究を重ねています。
  
• 従来の浄水装置は、逆浸透膜を用いたものでも高圧力が必要となり小型化することが困難でしたが、JAXAでは低圧力による小型浄水装置の開発を目指し、ニューメディカ・テック社と共同研究を行い、フィルターを通る前の液体に前処理を施したり、水分子の特性を応用した技術を用いる等によって、「水の分子を優先的に通す浄水技術」を確立させました。また、同時に、「水としてのおいしさ」に関する技術開発にも取り組み、これらの技術を移転することによって、ニューメディカ・テック社が、「安全でおいしい水」を供給できる低圧で小型の浄水装置を製品化しました。

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