プレスリリース

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国立大学法人東北大学と独立行政法人宇宙航空研究開発機構との
連携協力協定について

平成19年8月3日

国立大学法人東北大学
宇宙航空研究開発機構

 国立大学法人東北大学(総長 井上明久、以下「東北大学」)と独立行政法人宇宙航空研究開発機構(理事長 立川敬二、以下「JAXA」)は、本日、我が国の学術研究および教育の発展、並びに宇宙及び航空科学技術の発展に資するため、研究開発や教育・人材育成等の幅広い分野での連携をめざした協力協定を締結いたします。
 両機関は、本協定締結に基づき、相互の研究開発能力及び人材等を活かし、これまで行ってきた宇宙及び航空科学分野における連携協力を更に拡大していくとともに、生命科学、材料科学並びに情報通信分野などの新たな分野も含めた横断的な共同研究や、教育・人材育成等の一層の充実を図る等、積極的に取り組んでまいります。
 具体的な研究テーマの一例としては、現在研究が進められている小型科学衛星の共同での検討の実施が挙げられます。また、教育・人材育成においては、宇宙及び航空科学分野等の一層の充実を図る観点から、JAXAの協力による大学院連携講座を東北大学大学院工学研究科に設置するための検討を開始し、2008年4月の開講をめざします。
 東北大学とJAXAは、JAXA発足前から東北大学大学院理学研究科、大学院工学研究科、流体科学研究所を中心に、ハレー彗星を初めて探査したハレー彗星探査試験機「さきがけ」における観測装置開発、小惑星イトカワへの着陸に成功した小惑星探査機「はやぶさ」や日本の基幹ロケットである「H-IIAロケット」の設計・開発、2005年に飛行実験に成功した「小型超音速実験機」の設計への参画等、宇宙科学、ロケット、航空機といった幅広い分野で共同活動を行ってきました。教育・人材交流面においても、研究者レベルでの交流をはじめ、学生をJAXAでの研修に派遣するなど、今日の礎となる交流が継続的に行われてきました。2004年6月17日には東北大学流体科学研究所とJAXA総合技術研究本部が包括的研究協力協定を締結し、これまでに超音速飛行におけるソニックブーム低減、航空安全のための乱気流予測、ロケットエンジン開発のためのキャビテーションなどの航空宇宙流体科学に関する共同研究や人材交流等を通じて、連携を進めてきました。
 今回の協定により、東北大学の有する学術研究の総合力と日本の宇宙航空科学分野の研究開発拠点であるJAXAの有する技術を相互に有効活用し、組織的・継続的な連携を更に促進させ、世界をリードする学術研究及び教育の発展並びに科学技術の発展に貢献します。
 なお、連携協力に関する具体的な事業内容については、今後、協定締結に伴い設置する両者の連携事務局が協議し進めていくこととなりますが、当面は主に以下の項目について実施いたします。

1.主な実施事項

1)共同研究の推進
・既に実績のある流体科学や、今後推進していく小型科学衛星をはじめとする幅広い分野において共同研究を促進する。
2)研究者の研究交流を含む相互交流
・技術交流会等を通して様々な意見交換を行い、研究開発テーマの発掘を図る。
3)研究施設、研究設備の相互利用
・両機関の施設・設備の有効活用により、研究開発の促進を図る。
4)教育・人材育成の推進及び相互支援
・大学院連携講座の設置や学生の長期インターンシップの導入・リカレント教育等による教育・人材育成の充実を図る。

2.連携協力の運営形態
 両機関の関係者で構成する「連絡協議会」を設置し、年1回以上開催する。具体的案件については、連絡協議会の下に「専門部会」を設置(教育・人材交流、小型科学衛星、流体科学等の専門部会を予定)し、実行性のある運営を行う。


【用語解説】
*ソニックブーム:
ソニックブームとは、飛行機が超音速飛行をする際に、機体が空気を押しのけることで発生した空気の波(衝撃波)が地上に伝播し、落雷のような音として聞こえる騒音のことである。コンコルドのソニックブームは窓が破損することがあるほどの強度であり、米国連邦航空局(Federal Aviation Administration)により、地上上空での飛行が禁止された。

*キャビテーション:
キャビテーションとは、液体の流れ中の圧力が低くなった部分に気泡が生じる現象のことである。気泡がつぶれるときに衝撃圧が発生するため、ポンプやスクリューといった流体機器の騒音・振動や性能低下、さらには破損を引き起こすことがある。