プレスリリース

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陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR:パルサー)
による中国四川省で発生した地震に関する観測結果について

平成20年5月20日

宇宙航空研究開発機構

 平成20年5月12日に中国四川省で発生したマグニチュードM8.0の大地震に関する被害状況を把握する為に、宇宙航空研究開発機構(以下JAXA)は、5月20日に陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR:パルサー)による現地の緊急観測を実施しました。本観測は、平成20年2月17日に取得したデータと同じ軌道からの画像を使用して、差分干渉処理による地殻変動状況の把握を実施しました。当日、だいちは地方の中心都市(綿陽市、徳陽市)を見ながら南から北に向かって飛行し、平野部から山岳地帯にかけて観測しました(図1)。



【図1:全体図】




【図2】

左:PALSAR差分干渉画像  右:地震後南北700km画像


図2左は地震前と地震後を比較した差分干渉処理画像、右は南北700kmにわたる地震後の画像を示したものです。綿陽市、徳陽市は震源からそれぞれ約150km、120km離れた都市です。この画像からは断層(図中黒線)の南側で50-60cm地面が衛星に向かって近付いている(地殻変動)ことがわかります。
(注)変動周期(11.8cm)が4周期もしくは5周期確認できるため、11.8cm×4周期(もしくは5周期)で47.2cmから59cmの地殻変動といえる。



【図3】

南北200km×東西75km  干渉画像(拡大図) 図中黒線は断層


断層近傍約200km×75kmを拡大したものが図3で、断層運動による変動の様子をより細かく把握する事が可能です。最も変動が大きいと思われる断層直上、またその近傍では、変動が大きすぎて検出できませんでしたが,その領域の北側には衛星から遠ざかる変動があること,南北に目玉状の変動縞が分布することがわかります(図中白丸)。更にこの変動は断層から約100km北まで続きます。今回の地震でおおきな地殻変動が生じたことが衛星による観測から確認できました。
JAXAでは今後も「だいち」による被災地の観測を継続して実施していく予定です。