独立行政法人 物質・材料研究機構
独立行政法人 宇宙航空研究開発機構
(参考情報)
1.宇宙関連材料強度データシート発行までの経緯
平成11年11月のH-IIロケット8号機の打上げ失敗の調査において、原因となった液体水素ターボポンプやエンジンについて、設計する上で重要な材料特性データ(チタン合金やニッケル基超合金の極低温における強度特性データ)を、米国航空宇宙局(NASA)やNIMSが発表していた文献値に依存していたことが指摘された。
このような状況を踏まえ、平成12年6月、宇宙開発事業団(現 JAXA)は、極低温における材料特性評価に実績のあるNIMSに協力を依頼し、H-IIAロケットの信頼性向上を目的とした実使用材料の強度特性データの整備を開始した。
これにあたり、整備した強度特性データがさらに有効に活用されることを期待して、宇宙関連材料強度データシートとして発行することとした。これは、クリープデータシートや疲労データシートを発行する ことにより、多くの人に材料が認知・使用され材料自体の信頼性も向上してきたという、30年以上にわたるNIMSの実績を踏まえたものである。
なお、宇宙関連材料強度データシートは平成15年2月からデータシートNo.0、1及び2の発行を開始し、平成19年3月にはデータシートNo.10、ならびに宇宙関連材料の破面写真集No.F-1、 F-2を発行した。
2.データシートの連携体制
現在、強度特性データの整備活動は、NIMSとJAXAの連携により実施されている。
取得したデータ及び破面写真は、国内のロケットエンジン関連メーカーや材料メーカーからの委員を含めた宇宙関連材料強度特性データ整備委員会において詳細に検討し、データシートとして発行している。今後はデータシートに加え、データ取得に使用した試験片の破面写真集や、取得データに関する検討内容をまとめた資料集も発行する予定である。
データシートには、極低温(液体ヘリウム温度や液体水素温度)をはじめとした特殊環境下での試験技術についての情報も含まれているため、強度設計者のみならず、材料技術者の試験技術の発展にも有益である。
3.今後のデータシート発行予定
材 料 | 発行時期 |
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銅合金 | 平成21年3月 |
アルミ合金鋳造材 | 平成21年3月 |
アロイ718鍛造材の破面写真集 | 平成21年3月 |