プレスリリース

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陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)による森林観測画像の一般公開について

平成20年7月1日

宇宙航空研究開発機構

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、現在進めている陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)による森林観測計画で得られる画像をインターネット上で公開することとしましたので、お知らせいたします。本画像は、「だいち」搭載のフェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダ「PALSAR;パルサー」(*1)が取得する全世界の森林、湿原、砂漠を50メートルの分解能で地図化したもので、京都・炭素観測計画(*2)に参加しているJAXA、欧州共同研究所などが共同で作成するものです。
 今回公開するのはJAXA担当分の東南アジア領域ですが、このような広域画像を公開するのはこれが初めてであり、今後は各地域担当の機関により世界各地の画像を順次公開していく予定です。

 Lバンドを使用したレーダであるPALSARは森林観測に優れ、近年環境問題となっている森林伐採領域の特定、洪水領域などの特定が容易に行えます。森林域の長期的、季節的な変動を継続的に観測することによって、地球環境変化との関連を調べることが可能です。
 PALSARによる観測は継続的に行っており、雨期と乾期、あるいは夏季と冬季の年二回のペースでデータの収集とそれらをつなぎ合わせた広域画像(モザイク画像)の作成を行っています。

【サイト入り口はこちらから】
http://www.eorc.jaxa.jp/ALOS/kc_mosaic/jkc_mosaic.htm

*1)フェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)
 衛星から発射した電波の反射を受信するマイクロ波センサで、夜や曇天時も撮影が可能です。使用する電波が天候の影響を受けないこと、また、森林の葉の隙間を透過して、一部が地表面まで到達するという特徴を持っており、森林下部の状態を観測するのに適しています。

*2)京都・炭素観測計画
 このプロジェクトは、世界の陸地の約3割を占める森林やその周辺、湿地帯や砂漠について、その長期的な変動や季節的な変動を、「だいち」に搭載したPALSARを用いて広範囲に観測し、データ解析や現地調査をもとに、地球環境変化との関連を調べることを目的としたものです。JAXAでは南アメリカ(アマゾン)、東南アジア、中央アフリカの熱帯雨林、シベリア、カナダ、アラスカに分布する北方林、などを含め世界規模で観測します。違法伐採を観測するブラジル・アマゾン域のデータはJAXA地球観測センター(埼玉県・鳩山町)でのデータ受信後、即時画像化し、10日以内に専用回線経由でブラジルの政府機関へ配布します。その他、世界各地の広域画像は受信後3か月以内に各機関に提供します。



図1 東南アジア50メートルモザイク画像

図1は公開する画像の一例です。本画像はPALSARの使用する水平偏波、垂直偏波、その差(B)に赤、緑、青をあてがってカラー化したものです。全体に緑色に見えるところが森林、紫色に見えるところが伐採地あるいは森林でないところを表しています。



図2 インドネシア東部リアウ州拡大図

図2は図1の部分拡大で、スマトラ東部、森林伐採が顕著なリアウ州を切り出したものです。今後年二回の観測を継続し伐採のモニタリングを続ける予定です。