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名古屋大学と宇宙航空研究開発機構との連携協力協定の締結について

平成20年7月4日

名古屋大学
宇宙航空研究開発機構

 国立大学法人名古屋大学(名古屋市千種区不老町、総長/平野眞一、以下「名古屋大学」)と独立行政法人宇宙航空研究開発機構(東京都調布市、理事長/立川敬二、以下「JAXA」)は、平成20年7月4日、我が国の学術研究、教育の発展及び宇宙航空科学技術の発展に資するため、両機関の更なる研究開発、教育・人材育成等の幅広い分野での連携、地域社会への貢献を目的とした連携協力協定を締結いたしました。

1.主な連携協力の内容(詳細は別紙参照

(1)基礎から応用まで含めた共同研究
 現在進めている様々な分野における共同研究を加速します。これに加え、次期X線国際天文衛星、次世代高解像度赤外線観測衛星といった科学衛星や、次世代の主要航空機構造材料である複合材に関する基礎から応用に亘る広範囲の研究など、新たな共同研究をスタートさせます。
(2)人材育成、人材交流のための連携
 大学院学生の研究テーマや実験の可能性を広げるため、JAXAの協力のもと、名古屋大学大学院工学研究科に連携講座を新たに開設します。JAXA職員が名古屋大学の客員教授・客員准教授に就任し、JAXAに名古屋大学の大学院学生を受け入れ、指導を行う他、特別講義の実施、大学院博士課程の論文審査等を行います。また両機関の研究者が一定期間、相互の研究施設等に留まり、共同研究を実施できるような新たな枠組みを検討します。
(3)地域社会との連携
 名古屋大学産学官連携推進本部が「航空宇宙産業フォーラム」(※)への窓口となり、JAXA、名古屋大学及び中部地区の航空宇宙産業界の開発研究のシーズとニーズを結びつけます。

2.連携協力の運営形態
 名古屋大学及びJAXAは、連携協力を円滑にかつ効果的に推進するため、両機関の代表者で構成する「連絡協議会」を設置し、年1回以上開催いたします。さらに、必要に応じて連携協力のテーマ毎に「専門部会」を設置し、連携協力事業の具体的案件の検討を行います。

※「航空宇宙産業フォーラム」:日本の航空宇宙産業の中心地である中部地域において、技術基盤をさらに強化するため、中部地域の産学官が連携して平成20年4月に発足させたフォーラム。



(別紙)

名古屋大学と宇宙航空研究開発機構との連携協力協定について
(参考資料)

【協定締結の経緯と背景】
 名古屋大学とJAXAは、これまでも宇宙航空に関する幅広い分野における連携を推進してきました。中でも、X線天文学、赤外線天文学、惑星科学、地球物理学については、双方の連携や人材交流により日本における開拓の礎を築き、共に発展してきました。さらに、高速流体力学、推進工学、燃焼、制御といった工学的分野や、宇宙利用分野等、幅広く共同研究を進めると共に、名古屋大学とJAXAとの間で研究者の人材交流が盛んに行われてきました。
また、名古屋大学の位置する中部地域は、日本の航空宇宙産業の中心地でもあります。近年、国内航空機産業の活性化や宇宙へのアクセスが確実なものとなりつつある状況において、宇宙及び航空に関する科学技術水準の向上、並びに宇宙開発利用の拡大に関する国民の要請は大きく高まってきています。本年4月には、中部地域の技術基盤をさらに強化するため、地元の産学官が連携して「航空宇宙産業フォーラム」を発足させる運びとなり、名古屋大学もその一翼を担うこととなりました。
 一方、JAXAは本年2月に「空へ挑み、宇宙を拓く」というコーポレートメッセージを設定したように、宇宙・航空が持つ大きな可能性を追求し、さまざまな研究開発に挑んでいます。従来から大学共同利用システムにより、宇宙科学に関する学術研究及び教育を、大学との密接な協力のもとに推進してきましたが、より一層、宇宙航空分野の研究開発を推進するため、大学を始めとする日本の研究機関の総力を結集する体制の構築及び強化に取り組んでいます。
 こうした背景のもと、我が国の宇宙科学に関する学術研究および教育の発展、並びに宇宙及び航空に関する科学技術の発展に資するため、研究開発や教育、人材育成等の幅広い分野での連携をめざした協力協定を締結いたします。

【本協定の主な実施事項】
 (1)基礎から応用まで含めた共同研究
 (2)人材育成、人材交流のための連携
 (3)地域社会との連携


(1)基礎から応用まで含めた共同研究
 名古屋大学とJAXAとは、JAXAの前身である宇宙開発事業団、航空宇宙技術研究所、宇宙科学研究所の時代から、数多くの協力を実施してまいりました。
 古くはロケット黎明期である1965年に、名古屋大学の早川幸男教授を中心とする研究グループが早くも当時の東京大学宇宙航空研究所のロケットを用いてX線天文観測に成功し、今日の宇宙科学発展の嚆矢となりました。
 その後も、多数のロケット実験及び、「はくちょう」「てんま」「ぎんが」「あすか」などのX線天文衛星の歴史を、共に創り上げてきました。赤外線観測においても、国内で最初の宇宙観測グループを名古屋大学で立ち上げ、気球、ロケット、IRTS実験、さらに、最初の赤外線天文衛星「あかり」に向けた開発を密接に連携して進めてきました。月、惑星、地球磁気圏などの観測においても、その草創期から名古屋大学とJAXAは協力し、これらを発展させてきました。
 また、上記のような理学分野だけではなく、小惑星探査機「はやぶさ」の大気圏再突入時におけるカプセル周りの流れ場についての熱伝達量の評価や、環境に優しく安全性の高いジェットエンジンの実現のための先進的レーザー計測に関する研究等、数多くの工学的研究でも協力を実施し、成果を挙げてきました。


ア:実施中の協力関係
 JAXAは数多くの大学や研究機関などとの協力で科学衛星を打ち上げ、成果を挙げてきました。その中でもX線天文衛星「すざく」(2005年打上げ)においては主検出システムであるX線望遠鏡を、赤外線天文衛星「あかり」(2006年打上げ)においては遠赤外線検出器を、名古屋大学大学院理学研究科のグループが開発しました。
 今後も「すざく」「あかり」の観測運用に、継続して協力するとともに、これを用いた天文学研究を連携して進めます。
 この他にも、科学観測用大気球を用いた硬X線撮像観測実験や、赤外線撮像観測実験を引き続き計画的に実施していきます。

イ:新規計画
 名古屋大学大学院理学研究科のグループにおいて、JAXAで計画が進められている次期X線国際天文衛星に搭載するX線望遠鏡を、名古屋大学高等研究院実験室を用いて開発することを計画し、準備を進めています。

 また、上述の「あかり」に続く次世代高解像度赤外線観測衛星についても、名古屋大学が開発のコアメンバーになります。
 また、上記のような理学研究以外にも、次世代の主要航空機構造材料である複合材の低コスト化に関する基礎から応用にわたる共同研究をはじめとした、JAXAの研究開発と名古屋大学の多様な分野の基礎研究とのマッチングを図り、工学研究分野での総合的な研究開発の展開を目指します。

【補足説明】

次期X線国際天文衛星
 宇宙の構造やその進化を探ることを目的とし、ブラックホールの周辺や超新星爆発など高エネルギーの現象に満ちた極限宇宙の探査,高温プラズマに満たされた銀河団の観測を行う。

次世代高解像度赤外線観測衛星
 宇宙進化の歴史を解明することを目的として、口径3.5mという大型望遠鏡を、4.5Kという極低温まで冷却し、赤外線での高感度、高分解能観測の実現を目指す。長寿命の天文台として、世界の天文研究者が共同で利用する。

(2)人材育成、人材交流のための連携
 大学院学生の研究のテーマ、実験の可能性を広げるため、JAXA研究開発本部との協力で、名古屋大学大学院工学研究科に連携講座を新設することで調整を進めております。JAXA職員が客員教授・客員准教授に就任し、JAXAに名古屋大学の大学院学生を受け入れ、指導を行う他、名古屋大学での特別講義の実施、大学院博士課程の論文審査等を実施します。実験システムなどは両機関の有する施設を利用します。
 また、両機関の協力で進めているプロジェクトを効率的・効果的に推進するため、一定期間双方の機関に滞在できるような人材交流制度の検討を進めていきます。

(3)地域社会との連携
 名古屋大学では、「名古屋大学学術憲章」に基づくミッションとして「世界の産業に貢献する」「地域の発展に貢献する」ことなどを掲げ、産学官連携を大学の社会的責任の一つとしてとらえています。2002年5月に産学官連携への効果的で迅速な対応と明確な意思決定を可能とする「産学官連携推進本部」を設置し、企業等の方々が大学の研究成果等を活用可能な体制を整え、産学官の連携を進めてまいりました。名古屋大学の位置する中部地域は、日本の航空宇宙産業の中心地となっており、本年4月には、航空宇宙産業の集積する中部地域の技術基盤をさらに強化するため、地元の産学官が連携して「航空宇宙産業フォーラム」が発足しました。本フォーラムには名古屋大学も参加し、フォーラムの発展に貢献すべく、積極的に活動を進めております。
 このような状況の中で、今回の協定締結により名古屋大学とJAXAが共同で研究を進める際に、中部地域の産業界との連携を図り、地域産業の発展により一層貢献できるよう協力します。

【連携協力の運営形態】
 名古屋大学及びJAXA は、連携協力を円滑にかつ効果的に推進するため、両機関の代表者で構成する「連絡協議会」を設置し、年1回以上開催します。さらに、必要に応じて連携協力のテーマ毎に「専門部会」を設置し、連携協力事業の具体的案件の検討を行います。
 名古屋大学では、産官学連携本部が、JAXA との窓口になると共に、学内各部局への情報提供、各部局の連携活動のとりまとめを行います。更には、JAXA と中部地区の航空宇宙産業との間で、シーズとニーズを結びつけるなど、連携の橋渡しの役目を果たしていきます。
 JAXA では大学等連携推進室が窓口となり、研究開発本部、宇宙科学研究本部など、各本部の連携活動を取りまとめていきます。