プレスリリース

プリント

運輸安全委員会との包括的な協力協定の締結について

平成20年10月1日

宇宙航空研究開発機構

 独立行政法人宇宙航空研究開発機構(理事長:立川敬二「以下JAXA」)と、運輸安全委員会(委員長:後藤昇弘「以下委員会」)は、委員会が行う航空事故及び航空事故の兆候(以下「航空事故等」)の調査をより円滑かつ的確に実施するため、委員会が行う航空事故等の調査活動に関する包括的な協力協定を平成20年10月1日付けで締結しました。
 JAXAはこれまで航空事故等の発生の際、旧委員会(航空・鉄道事故調査委員会)からの依頼に基づき、委員会が実施する航空事故の原因究明や兆候等の調査活動に対して航空科学技術の専門的知識・知見の提供等の支援を行ってまいりました(別紙参照)。
 今般、委員会の発足を機に原因究明機能の強化など更なる取組の強化を図る委員会に対して、JAXAとしてもより迅速かつ充実した協力を可能とするため、包括的な協力協定を締結することといたしました。
 今後とも、JAXAは公正中立な立場から積極的に行政活動への技術的支援を行い、わが国の航空科学技術の公的研究機関としての使命・役割を果たしてまいります。

○協力内容
(1)航空事故等に係る調査又は研究の実施に関する事務の一部
(2)航空事故等調査を行うための資料又は情報の提供その他の必要な協力
(3)航空事故等調査の手法等に関する協力
(4)委員会の専門委員へのJAXA職員の委嘱
(5)その他、委員会及びJAXAが必要と認める事項

(参考)JAXAでは、第2期中期計画(平成20年4月1日〜平成25年3月31日)において、航空科学技術の公的研究機関として航空事故等の調査を積極的に支援することを明記し、公正中立な立場から航空安全にさらに寄与することとしています。



別紙

JAXAの主な協力実績

事故発生日件名概要JAXAの協力内容
H16.12.24 JA44RH航空事故に係る飛行解析 エス・ジー・シー佐賀航空株式会社所属ロビンソン式R44型JA44RHは、平成16年12月24日(金)、フェリーのため、長崎市尾上町の長崎ベイサイド場外離着陸場から佐賀空港に向けて飛行中、21時08分ごろ、佐賀空港の南西約14kmの有明海海上に墜落した。 同機には、機長ほか同乗者2名計3名が搭乗していたが、全員死亡した。 同機は大破したが、火災は発生しなかった。 飛行解析
H18.5.25 JA4321航空事故に係るビデオ画像解析 株式会社ノエビアアビエーション所属ビーチクラフト式B36TC型JA4321は、平成18年5月25日(木)、訓練のため、教官と訓練生の計2名が搭乗し、八尾空港において連続離着陸訓練を実施中、接地後の滑走中に脚上げ操作をしたため、胴体着陸となり、滑走路灯に衝突した後、14時53分ごろ滑走路のショルダーにかく座して停止した。
搭乗者の負傷 なし 航空機の損壊 機体 中破  火災発生なし
飛行画像解析
H18.11.20 JA8596航空重大インシデントに係るカップリングの破面解析 エアーニッポン株式会社所属ボーイング式737-500型JA8596は、平成18年11月20日(月)、同機による運航の共同引き受けをしていた全日本空輸株式会社の定期729便として仙台空港を離陸し、21時13分に新千歳空港に着陸した。スポットに向けて地上走行を開始し、補助動力装置を始動した後の21時16分ごろ、補助動力装置に火災が発生したことを示す計器表示があったため、機体を停止させて消火装置を作動させた。同計器表示が消灯し、客室内及び機体外部に火炎又は煙がないことを確認した上で地上走行を再開し、予定していたスポットに到着した。点検の結果、補助動力装置のタービン部に燃焼室を取り付けている金具が破断し、燃焼室が外れて、その位置がずれていた。同機には、機長ほか乗務員4名及び乗客53名の計58名が搭乗していたが、負傷者はなかった。 補助動力装置の燃焼室取付金具の破断面解析調査
H19.3.13 JA849Aの航空事故に係る関係部品の解析 エアーセントラル株式会社所属ボンバルディア式DHC-8-402型JA849Aは、平成19年3月13日(火)、運送の共同引受をしていた全日本空輸株式会社の定期1603便として、08時21分に大阪国際空港を離陸し、目的地である高知空港へ前脚が下りない状態で着陸し、前方胴体下部を損傷した。
同機には、機長ほか乗務員3名、乗客56名、計60名が搭乗していたが、負傷者はなかった。
スペーサー及びサポート・フィッティングの調査
H19.6.4 JA9826の航空機事故に係る飛行解析 東邦航空株式会社所属アエロスパシアル式SA315BアルウェットIII型JA9826は、平成19年6月4日(月)、長野県松本市安曇の穂高岳山荘(標高約2,983m)において、物資の吊り上げ作業中、6時50分ごろ墜落した。
同機には、機長のみが搭乗していたが、軽傷を負った。
同機は、大破したが、火災は発生しなかった。
同機の事故時の飛行を推定するため、事故発生時の同機に関するデータを使用して※局所運動理論に基づく数値解析

※局所運動理論とは、「局所運動量理論(Local Momentum Theory)」とは、回転翼に働く空気力を算出するための簡便で精度のよい計算法のことをいう。(東昭著「航空工学(I)」より引用)