プレスリリース

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小惑星「イトカワ」表面の地形名称に関する国際天文学連合(IAU)
正式承認について

平成21年3月3日

宇宙航空研究開発機構

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、小惑星探査機「はやぶさ」が、科学観測を行った小惑星「イトカワ」の表面の地形名称について、国際天文学連合(IAU)に対して「宇宙開発・惑星科学に関係する地名」をテーマに、14のクレーターと地域について命名の申請を行っていましたが、平成21年2月19日(日本標準時)にIAUの承認がなされ、地名として公式に用いることができるようになりました。命名にあたっては、IAUの命名委員会と議論を重ね、提案したものは最終的にすべて承認されました。日本として小惑星の表面にこれだけの名前を提案して、それが認められたのは初めてのことです。また、日本の地名がこれだけたくさん小惑星の表面に付けられたことも初めてです。
 なお、地形名称は観測データを基に「イトカワ」表面の地形に関する研究を行っている会津大学の協力を得て名付けました。



(参考:天体や天体の地名の命名について)

 太陽系内の天体の名称や天体の地名は、研究者間での議論の基盤となる重要な情報であるため、国際天文学連合(IAU)において一元管理されています。新たな命名を行う際には、まずIAU内のワーキンググループにおいて発見者からなされた命名の申請内容を検討し、地形としての明瞭さ、科学的重要度、地名およびその由来の妥当性、そして既存の地名との重複の有無などが審査されることになります。そして、最終的な承認を得てはじめて公式の地名として使用することができるようになります。
 今回の承認によって、「イトカワ」に関する現在の知見が世界で共有され、今後一層の研究の進展が期待されています。

表1:「イトカワ」表面の地形に付けられた名称とその説明

クレーター名称として
地名 地名(英文表記) 説明
1 カタリナ Catalina アメリカのアリゾナにある天文台の名称。地球接近小惑星の観測プロジェクトが進められている。
2 フチノベ
(淵野辺)
Fuchinobe 神奈川県相模原市の地名。はやぶさ開発、運用の拠点であるJAXA相模原キャンパスの最寄り駅の名称でもある。
3 ガンド Gando カナリア諸島にあるスペインのロケット射場の名称。
4 ハマグイラ Hammaguira サハラ砂漠(アルジェリア)にあったフランスのロケット射場の名称。
5 カミスナガワ
(上砂川)
Kamisunagawa 北海道空知郡の町名。微小重力のテスト装置がある。
6 カモイ
(鴨居)
Kamoi 神奈川県横浜市の地名。「はやぶさ」製造の拠点であったNEC東芝スペースシステム株式会社の事業所があった。
7 コマバ
(駒場)
Komaba 東京都目黒区の地名。旧文部省宇宙科学研究所があった。
8 ローレル Laurel 米国メリーランド州の市名。ジョン・ホプキンス大学応用物理研究所(APL/JHU)がある。
9 ミヤバル
(宮原)
Miyabaru 鹿児島県肝属郡肝付町の地名。JAXA内之浦宇宙空間観測所のレーダーサイトがある。
10 サンマルコ San Marco ケニヤ沖合のインド洋上の石油採掘プラットフォームで、イタリアのロケット打ち上げの洋上基地として使われた。


地域名称として
地名 地名(英文表記) 説明
11 アルコーナ Arcoona Regio 「はやぶさ」のカプセルが回収されるオーストラリアの砂漠近くの地名。
12 LINEAR LINEAR Regio マサチューセッツ工科大学リンカーン研究所の地球接近小惑星研究のプロジェクト名。(Lincoln Near Earth Asteroid Research)小惑星イトカワを発見した。
13 オオスミ
(大隅)
Ohsumi Regio 鹿児島県の半島名。JAXA内之浦宇宙空間観測所がある。
14 ヨシノブ
(吉信)
Yoshinobu Regio 鹿児島県熊毛郡南種子町の地名。JAXA種子島宇宙センターのロケット発射場がある。


既に承認済みの地域名称
地名 地名(英文表記) 説明
1 ミューゼス シー MUSES-C Regio 小惑星探査機「はやぶさ」のミッション名。
2 サガミハラ
(相模原)
Sagamihara Regio 神奈川県の市名。JAXA相模原キャンパスがある。
3 ウチノウラ
(内之浦)
Uchinoura Regio JAXA内之浦宇宙空間観測所がある鹿児島県の旧町名。


小惑星「イトカワ」に向かって飛行する小惑星探査機「はやぶさ」(イメージ画像)
小惑星「イトカワ」に向かって飛行する小惑星探査機「はやぶさ」(イメージ画像)
作画 池下章裕


「イトカワ」に命名された地名(「はやぶさ」が撮影した写真に記載したもの)
「イトカワ」に命名された地名(「はやぶさ」が撮影した写真に記載したもの)


(参考:小惑星「イトカワ」について)

 小惑星「イトカワ」(1998 SF36)は平成10(1998)年9月26日、マサチューセッツ工科大学(MIT)リンカーン研究所・地球接近小惑星研究プロジェクト(LINEAR)が発見した小惑星です。大きさは長さ約500m、幅約300m、サツマイモのような形をしており、自転周期は約12時間、ほぼ地球軌道と火星軌道の間の楕円軌道を約1.5年周期で回っているS型小惑星です。小惑星命名申請の権利は発見者にありますが、当時の宇宙科学研究所(現JAXA宇宙科学研究本部)が、小惑星探査機「はやぶさ」の探査の対象であるこの小惑星1998 SF36に日本のロケット開発の父である故糸川英夫博士の名前を付けてもらうよう、LINEARを通じて国際天文学連合に提案し、平成15年8月に承認され「ITOKAWA(糸川)」と命名されました。
 その後、平成17年に小惑星「イトカワ」は、世界初の小惑星からのサンプルリターンを目指した小惑星探査機「はやぶさ」により探査が行われました。現在「はやぶさ」は、平成22年6月の地球帰還を目指し、運用を行っています。