プレスリリース

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温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)による
観測データの初解析結果(温室効果ガス濃度)について

平成21年5月28日

宇宙航空研究開発機構
国立環境研究所
環境省

 環境省、(独)国立環境研究所及び(独)宇宙航空研究開発機構は、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT;平成21年1月23日打上げ)プロジェクトを推進していますが、今般、陸上の晴天域における二酸化炭素及びメタン濃度の初の解析結果が得られました。今後は、さらに、データの校正・検証等を行った上で、順次、観測データ及び解析結果等を一般に配布します。

 平成21年1月23日に種子島宇宙センターから打上げられた温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)は、現在データの初期校正検証中ですが、今般、陸上の晴天域における二酸化炭素及びメタン濃度の初の解析結果が得られました。
 今後は、さらに、データの校正・検証等を行った上で、順次、観測データ及び解析結果等を一般に配布します。

 本解析結果につきましては、以下のホームページでもご覧いただけます。
 国立環境研究所ホームページ   http://www.gosat.nies.go.jp/

【初解析結果に関する問い合わせ先】
   独立行政法人 国立環境研究所 地球環境研究センター GOSATプロジェクトオフィス
   〒305-8506 茨城県つくば市小野川16-2
   電話:029-850-2966   FAX:029-850-2219   E-mail

(添付資料1) 「いぶき」搭載TANSO-CAIの観測データから算出した晴天観測点情報をもとにTANSO-FTSの短波長赤外バンドの観測データから求めた平成21年4月20日〜28日における陸上の二酸化炭素のカラム平均濃度分布(初解析結果)
(添付資料2) 添付資料1と同様に求めた陸上のメタンのカラム平均濃度分布(初解析結果)
(添付資料3) 温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)搭載センサ



【参考】温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)のデータ解析の現状

 「いぶき」は現在初期校正検証運用を続けており、(独)宇宙航空研究開発機構及び(独)国立環境研究所において搭載センサの初期校正作業及び計算処理システムの調整作業を行っております。
 添付資料の図は、平成21年4月20日〜28日の9日間の二酸化炭素及びメタンの陸上の晴天観測点における初解析結果(カラム平均濃度(注))です。4月下旬の二酸化炭素及びメタンの全球濃度分布として、北半球で濃度が高く南半球で低いという傾向は、概ね従来の地上観測による結果に整合しています。但し、当結果は未校正の観測データを用いた解析結果であるため、推定された個々のカラム平均濃度値に解釈を与えることは適切ではありません。今後、校正及び検証の結果を踏まえ、データ処理パラメータの調整を進めて再解析することを予定しています。

(注)カラム平均濃度:地表面だけでなく、上空までの鉛直の柱(カラム)の中にある空気全量に対する対象気体量の平均濃度。(地表面濃度の算出は今後の研究テーマ。)

 今後は、観測データ(輝度スペクトルなど)の校正、処理結果の精度確認、地上からの観測との比較等に基づく検証作業を行った後、校正済みの観測スペクトルデータ(TANSO-FTSデータ)や観測画像データ(TANSO-CAIデータ)(レベル1プロダクト)を衛星打上9ヶ月後(平成21年10月下旬)より、解析処理後の二酸化炭素とメタンのカラム量や雲被覆に関する情報(レベル2プロダクト)を衛星打上12ヶ月後(平成22年1月下旬)より、登録いただいたユーザに配布する予定です。さらに、温室効果ガス濃度の月別分布を作成すると共に、「いぶき」による温室効果ガス濃度データと地上付近で測定された濃度データとを併せて利用して、全球における地域別の炭素収支の推定を行います。

※GOSAT:Greenhouse gases Observing SATellite


添付資料1
二酸化炭素(カラム平均濃度)の初解析結果(4月20日〜4月28日の観測データ)

二酸化炭素(カラム平均濃度)

 「いぶき」搭載の温室効果ガス観測センサ(TANSO-FTS)の個々の観測点における雲被覆情報を、雲・エアロソルセンサ(TANSO-CAI)の観測データより推定し、晴天地点と判定された測定点に対して、TANSO-FTSの短波長赤外バンドの観測データ(輝度スペクトルの未校正データ)を用いて解析した全球晴天域における陸上の二酸化炭素のカラム平均濃度。(ただし、輝度スペクトルが飽和した地点と、地表面反射が弱いために相対的にノイズの大きな地点のデータを除く)。
 初解析結果では、4月下旬の観測データとして、北半球の方が南半球よりも高濃度である傾向(注1)が過去の他の観測データと整合していますが、全体として明らかに低いカラム平均濃度(注2)が導出されています。これは、未校正の輝度スペクトルデータからの解析結果であることと、解析手法におけるパラメータ調整が完了していないためと考えられます。また、中国大陸とアフリカ中央部で高濃度が認められますが、観測時には中国大陸上に黄砂が認められており、アフリカの該当箇所では砂塵または煙のようなものの存在が認められています。これらは解析時に比較的大きな誤差を生じるため、今後の調査・検討が必要です。解析結果の定量的な議論に必要な、データの校正作業、処理パラメータ調整作業、プロダクトの検証作業を今後進めます。

(注1)北半球では南半球よりも平均的に10 ppmほど高い解析結果が得られている。モデル計算では、この時期の南北差は2〜4 ppmと予想されている。
(注2)モデル計算値よりも南半球で平均的に約17 ppm、北半球の緯度帯平均で約7〜12 ppm低い値となっている。


添付資料2
メタン(カラム平均濃度)の初解析結果(4月20日〜4月28日の観測データ)

メタン(カラム平均濃度)

 添付資料1と同様の条件で解析した全球晴天域における陸上のメタンのカラム平均濃度。
 初解析結果では、4月下旬の観測データとして、北半球の方が南半球よりも高濃度である傾向(注1)が過去の他の観測データと整合していますが、全体としてやや低いカラム平均濃度(注2)が導出されています。これは、添付資料1と同様の理由が考えられるため、解析結果の定量的な議論に必要な、データの校正作業、処理パラメータ調整作業、プロダクトの検証作業を今後進めます。


(注1)北半球では南半球よりも緯度帯平均で0.03〜0.1 ppmほど高い解析結果が得られている。これは、モデル計算による南北差とほぼ一致している。
(注2)モデル計算値よりも南半球で平均的に約0.1ppm、北半球の緯度帯平均で0.04〜0.13 ppmほど低い値となっている。


添付資料3
温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)搭載センサ




・温室効果ガス観測センサ(TANSO-FTS)により、二酸化炭素、メタンの観測を実施
・雲・エアロソルセンサ(TANSO-CAI)により、温室効果ガス測定の誤差要因となる雲・エアロソルの観測を実施