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新たな半導体単結晶製造技術の開発について

平成21年6月17日

宇宙航空研究開発機構

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)を中心とした共同研究契約により、日本電信電話株式会社及びフルウチ化学株式会社との共同実施の下、JAXAの宇宙実験による知識を活用して、温度と濃度勾配を一致させる新たな結晶成長を考案し、さらに融液の厚みを薄くすることで対流を抑制しつつ結晶化させる技術を開発し、これを利用して世界で初めて巨大(30mm角)なインジウムガリウムヒ素(InGaAs)の単結晶材料を製造することに成功しました。(図左)
 この結晶材料を用いて製造した半導体レーザー(図中央)を使用し、光ファイバー通信で用いられる波長1.3μm帯で、20kmの遠隔地へ毎秒1010回の点滅信号のエラーなし光ファイバ通信実験に成功しました。
 このインジウムガリウムヒ素の半導体レーザーは、従来型のインジウムリン(InP)のものに比べて、温度が上昇しても出力の低下が少ない(図右)ために冷却の必要がなく、省エネルギーであるという利点があり、将来的には光通信都市間ネットワークターミナルの消費電力を大幅に低減できる半導体レーザーとして期待されます。
 なお、2010年秋から2011年にかけて日本実験棟「きぼう」内での微小重力環境での結晶成長実験を計画しています。宇宙ではより組成の均一な理想的な単結晶を製造することができるため、地上実験での単結晶と比較することによって、地上でより性能のよい理想的な単結晶製造技術の開発に役立てることを目指します。




図 新結晶成長法の原理(左)、新開発レーザーの構造(中央)、出力温度依存性比較の概念図(右)