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金星探査機「あかつき」の軌道制御の実施結果について

平成22年7月6日

宇宙航空研究開発機構

 平成22年5月21日に打ち上げられた金星探査機「あかつき」は、6月28日(地球から1460万km、太陽から1.06天文単位1の距離)に500N(ニュートン)2 の軌道制御エンジン(OME)の噴射を行い、新規に国内で開発された窒化珪素(Si3N4)製セラミックスラスターの世界初の軌道上実証に成功しました。












図:今回軌道上実証に成功した軌道投入用500N級セラミックスラスターの搭載位置。

 このスラスターはヒドラジンと四酸化二窒素を燃料とする液体ロケットエンジンで、主に金星軌道投入時の逆噴射に使われるものです。今回の噴射は金星への接近条件を調整するためだけでなく、金星周回軌道投入の際のエンジンの出力特性を把握するためにも不可欠な作業です。その後実施したJAXA内之浦局、同 臼田局、NASA深宇宙ネットワーク(DSN)局による詳細な軌道追跡の結果、13秒間のOMEの燃焼で約12m/sの速度修正というほぼ計画通りの軌道制御が行われたことを確認しました。次回の軌道制御(微調整)は11月上旬頃に実施予定で、金星への最接近および金星周回軌道への投入は12月7日となる予定です。
 現在、探査機および搭載機器の状態は正常で、打ち上げ当日夜に初期機能確認を終えた紫外線イメージャ(UVI)、1μmカメラ(IR1)、中間赤外カメラ(LIR)に加え、新たに超高安定発振器(USO)についても期待どおりの周波数安定度が達成できていることを確認しました。

1 「1天文単位」は太陽と地球の平均的な距離。現在「あかつき」は、当初計画通り一旦地球軌道の外側を飛行しており、太陽から平均0.7天文単位の距離にある金星周回軌道での運用を前提とした環境とは異なる状況にある。
2 「N」(ニュートン)は1キログラムの質量を持つ物体に1メートル毎秒毎秒の加速度を生じさせる力を表す(探査機の推進力を表す)単位。500Nは、地球上で50kgの物体にかかる重力にほぼ等しい。