プレスリリース

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「衛星通信を利用した航空機用災害情報伝送システム」の製品化について

平成25年5月27日

ナビコムアビエーション株式会社
宇宙航空研究開発機構

 ナビコムアビエーション株式会社(以下、「ナビコムアビエーション」)と宇宙航空研究開発機構(以下、「JAXA」)は、航空機から発見した災害情報を地上の運航拠点や災害対策本部等にデータ化して送信する機能を共同で開発し、ナビコムアビエーションの「ヘリコプター用地図情報表示装置」の機能の一部として製品化いたしました。

 JAXAでは、DREAMSプロジェクト※1の一環として「災害救援航空機情報共有ネットワーク(D-NET)」の研究開発を進めています。D-NETは、現在は音声による無線通信やホワイトボード等を使って行われている航空機と地上の運航拠点、災害対策本部等における情報の伝達、共有を、データ通信化することにより、より効率的で安全に救援活動を行うためのシステムです。JAXAはD-NETの研究開発において、ナビコムアビエーションと共同で、ヘリコプターで発見した災害情報を機上でより迅速かつ正確にデータ化できるようなユーザーインターフェースの開発を進めて来ました。 
 ナビコムアビエーションは、これまでイリジウム衛星通信を利用したヘリコプター用の動態管理システムを平成15年以来70台以上販売してきました。昨今のヘリコプター用電子装備品に対する要求の高まりや、動態管理システムの普及によるさらなる運航の効率化の要望に応えるため、動態管理システムと連動し、さらにD-NETで研究開発してきたユーザーインターフェースを取り入れた、新しいコンセプトのヘリコプター用地図情報表示装置「NMS-01S」をこの度、製品化し販売を開始しました。
 今回追加された新しい機能を用いることにより、ヘリコプターに搭載した地図情報表示装置から、災害の発生エリアや詳細内容をデータ化して送信し、地上の端末に表示することが可能になりました。従来は、このような情報を航空無線を使った音声通信で伝達していたため、詳細かつ正確なエリア情報を伝えることが難しかったこと、また大規模災害が発生した場合には、多数のヘリコプターが同じ周波数を使って音声通信を行うため、通信の輻輳(混線)が発生することなどが課題となっていました。本製品が普及すれば、このような課題が解決される効果が期待されます。

 ナビコムアビエーションとJAXAは、災害救援航空機等を支援するシステムの研究開発などにおいて、今後も協力を進めていく予定です。



機上ディスプレイでの災害情報の入力画面


地上ディスプレイでの災害情報の表示画面


※1:将来の航空交通に対応する技術確立を目的とするプロジェクトで、空港周辺の交通量増大に対応する技術や、航空機による災害救援活動をより効率的かつ安全に実施するための技術等について、国際規格団体への提案や民間企業等への技術移転による実用化を目指しています。



参考1

「ヘリコプター用地図情報表示装置」について



 ナビコムアビエーションの「ヘリコプター用地図情報表示装置(NMS-01S)」は、地図データやアプリケーションソフトを航空用に開発されたPCハードウェアにインストールしたもので、同社の「動態管理システム」との連動によりヘリコプター側から地上に向けて登録地点や災害情報、文字メッセージ等が送信できる等、機能や操作性が格段に向上しております。また、ヘリコプターの運航者から要望の強かった送電線・鉄塔表示機能も追加いたしました。「NMS-01S」は消防・防災、警察、報道等の各種任務に従事するヘリコプターの運航の安全性向上と効率化をサポートいたします。

【主な機能】
  1. 豊富な地図の縮尺と詳細画面の表示機能
    約1,560分の1〜約2,560万分の1まで15段階の縮尺を選択できます。拡大図は詳細市街地図の表示が可能です。
  2. 充実した航空関連情報の表示
    空港、飛行場、ヘリポートはもちろん、VOR/DME、NDB、TACANといった無線航法援助施設や、航空交通管制圏、特別管制区、TCAなどの空域情報も表示されます。これらの情報は必要に応じて表示のON/OFFが可能です。空港、ヘリポート等の航空データに関しては、タワーの周波数、燃料の種類、運用時間等の詳細データも表示されます。
  3. 送電線・鉄塔データの表示
    これまで運航者からの要望の多かった送電線・鉄塔データが表示されます(この機能の利用には航空局が提供する送電線・鉄塔データを運航者が入手している必要があります)。
  4. ヘリコプター動態管理システムとの通信機能の向上
    同社の「ヘリコプター動態管理システム」と接続することにより、従来からの機能である地上局からの文字メッセージやルート情報の受信に加えて、ヘリコプター側から災害等のエリア情報を地上局に送信することが可能になりました。この機能にD-NETで開発されたユーザーインターフェースを適用しています。
  5. 視認しやすい高精細出力画面
    細かい文字も見やすい高精細なRGB映像出力を標準装備。オプションのスキャンコンバータを接続すれば一般的なNTSC信号への変換も可能です。
  6. 従来からの便利な機能もそのまま利用可能
    運航者から評価の高かった、地点登録、ルート設定、自機より高いエリアを赤く表示する高度警戒領域表示機能等、従来の機能もそのまま踏襲しました。




地図情報表示装置「NMS-01S」の運用イメージ



「地図情報表示装置「NMS-01S」の機器構成


標準画面

送電線・鉄塔表示画面


「地図情報表示装置「NMS-01S」の表示画面の例



参考2

「災害救援航空機情報共有ネットワーク(D-NET)」について



 地震などの大規模災害が発生すると、全国から多数のヘリコプターが被災地に集結し、情報収集、救急・救助、人員・物資輸送などの救援活動を行います。



 「災害救援航空機情報共有ネットワーク(D-NET)」は、データ通信や情報処理技術等を活用して、各機体の機能や性能に応じて最適な任務を迅速に割り当てることによって、航空機による救援活動をより効率的かつ安全に実施することを可能にするためのシステムです。



 平成21年度から、総務省消防庁および神戸市消防局との協力により、本システムの評価・改良を進めています。



 D-NETの機能の一部として、災害情報を機上でデータ化して送信するユーザーインターフェースを開発し、平成24年10月27日に実施された「緊急消防援助隊近畿ブロック合同訓練」において、その有効性の評価実験を実施しました(平成24年10月31日付プレスリーリース「神戸市消防防災ヘリコプターによる「災害救援航空機情報共有ネットワーク(D-NET)評価実験について」参照)。



D-NETで開発した災害情報入力画面