宇宙開発事業団
本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。
日本機械学会、日本航空宇宙学会、電子情報通信学会、宇宙科学研究所、宇宙開発事業団、日本宇宙フォーラム主催、読売新聞社共催、文部省、郵政省、科学技術庁後援、小型衛星研究会、文部省メディア教育開発センター協力の第8回衛星設計コンテスト最終審査会が開催されたので、その概要を報告する。
開催日時: | 平成12年10月22日(日)10時-18時 |
場所: | 東京都立航空工業高等専門学校汐黎ホール |
プログラム: | 別紙1参照 |
別紙のとおり、一次審査(7月)で合格した11件(アイデアの部門:8件、設計部門:3件)について衛星の模型を使用して、概要の発表が行われ、最終審査が行われた。発表の模様は、文部省メディア教育開発センターの協力を得て、静止通信衛星を用いて全国の11の大学、高等専門学校へ中継され、質問も受け付けた。また、プレスへの公開も行われた。なお、NASDAからの審査委員は狼研究総監であり、NASDAからの実行委員は前田主開(衛本)、小番調査役(広報室)、橋本主開(技本)である。
審査結果は以下のとおりである。受賞作品の概要は別紙2に示す。
なお、今回の結果は、NASDA公開ホームページ、10月23日付の読売新聞、北海道新聞朝刊などに掲載されている。
講演において、スタンフォード大学のSSDL(Space Systems Development Lab.)、サレー大学のSSTL(Surrey Satellite Technologies Limited) における小型衛星の開発・打上げ実績・計画、1998年以来日米の学生が参加する日米科学技術宇宙応用プログラム(JUSTSAP)小型衛星分科会の状況が示された。
特に、JUSTSAPの中から生まれたARLISS(Aeropac Rocket Launched International Student Satellites)の一環として、1999年9月、2000年7月に米国ネバダ州Black Rock の砂漠において、アマチュアの小型ロケットにより、参加した日米の各大学が製作した電子機器を空き缶に装填した小型衛星CanSATの打上げが行われた。打上げの最高点4-5kmからパラシュートで下降し、地上で回収する状況が詳細に報告された。失敗例も報告され、いい加減な設計は失敗につながることが経験され、良い訓練となっているとのことだった。
144MHz帯の八木アンテナを使用したが、今後の課題として使いやすい小型衛星用周波数が要望された。今回は衛星にはならないが、今後はピギーバック衛星として実現したいとの要望があった。
今後の課題は、以下のとおりである。
開催日時: | 平成12年10月22日(日)10時-18時 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
開催: | 日本機械学会、日本航空宇宙学会、電子情報通信学会、宇宙科学研究所、宇宙開発事業団、日本宇宙フォーラム主催、読売新聞社共催、文部省、郵政省、科学技術庁後援、小型衛星研究会、文部省メディア教育開発センター | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
場所: | 東京都立航空工業高等専門学校汐黎ホール | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
プログラム: | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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JetGUN Sat 突風(Toppu)(東京工大)
本小型衛星は、次世代軌道上サービスの実現に必要不可欠な衛星の放出・回収技術、テザー技術、ガスジェット放出技術、衛星間双方向充電技術、衛星検査技術の獲得を目指し、小型ドッキング機構、リール機構、ガスジェットガン、CCDカメラ回転機構を提案・開発し、それらの技術検証実験を行う。
テザーの制御についてその張力の変化に伴う軌道の変化の問題が指摘された。宇宙運用、衛星間業務に分配された周波数が使用されていない旨指摘があった。これらの技術をピギーバック衛星の各サブシステムごとによくまとめたことが評価された。
The TAKO (Target Collaborativize)-Flyer(ターゲットを協力化させる衛星回収システム) (東北大学)
故障衛星を回収する際、ロボットアームを持った無人のレスキュー衛星の使用が考えられる。そのためには、ターゲットとなる衛星が協力的であることが要求される。しかし、既存の衛星が故障した場合そのようなことを望むことはできない。そこで故障衛星に「たこ」のようにからみつき、その姿勢を安定させ、ロボット衛星により回収が可能となるような機能を提供するものである。
タンブリングする衛星に多関節グリッパーでとりつく難しさについて指摘があった。
実験の内容についても概してよく検討していることから評価された。
Space Factory 宇宙空間における大型構造物の組み立て(東京大学)
Space Factoryは宇宙空間において、大型構造物の組み立てを行う作業機で、3機の衛星すなわち2本のロボットアームを持ち組み立てを行う衛星、構造物の部材を捕獲して曳航する衛星、太陽電池で発電する衛星からなっている。
振動が減衰しにくい長いマニピュレータの問題、画像伝送に必要な十分な帯域、結合の確認方法、各衛星に持たせる自律の度合いについて指摘があった。
停波した衛星の調査(北海道大学)
過去に打ち上げられ、既に停波している衛星にランデブー、フライアラウンドを行い、衛星の現在の運動、破損状況を静止画の撮影によって調査を行う。
2日間の実験期間の短さ、写真撮影の際の太陽の影響の確認方法、停波した衛星を探すセンサの必要性、衝突回避のための安全性の検討の必要性が指摘された。
マイクロ波送電技術を応用した軌道上サービス衛星の基礎実験(東京都科学技術大学)
衛星を母衛星と子衛星に分離させて、母衛星で発電した電力を子衛星にマイクロ波送電によって供給する。子衛星はその電力を用いて母衛星のまわりを周回し、様々な角度から母衛星の静止画を撮影し、地上に画像データを送信する。
アクティブフェーズドアレーアンテナの必要性及びビームの形状、マイクロ波を直流に変換するレクテナの故障率、一般に高信頼性である太陽電池を分離する必然性の指摘があった。さらに、TT&Cへの影響を避けるため、2GHz帯から5GHz帯へ変更したが、マイクロ波の伝送用に周波数が分配されていない、また、分配された場合でも、高出力の場合、他の業務に干渉を与えないこと並びに地表での人体への影響の防止などの検討、送電効率の周波数依存性の評価が必要との指摘があった。
衛星写真を利用した人口密度分布の観測(都立航空工業高等専門学校)
既存の地球観測衛星で撮影された夜間の地上映像をもとに夜間照明の明るさや、その分布のデータを解析して、人口密度を推定するものである。
雲、可視・赤外の違いの人口密度の推定への影響についての指摘、市場調査の観点で興味があるが精度の検討が必要である旨指摘があった。
人口統計は数年おきに調査されるため、リアルタイムに推定できるのは意義があることから評価された。
双方向デジタル放送を用いた地球鑑賞システムGlobal Eye System(東京大学)
Global Eye システムは宇宙から見た地球の生中継動画像を誰もが容易にデジタル放送を通じて視聴し、誰もが地球規模の視野を得ることを可能とする。
小型衛星を用いた地球観測をビジネスモデルとして組み込んだ初めてのケースとして評価された。
太陽へのデブリ衛星投入計画(日本文理大学工学部)
デブリ化した衛星について誘導衛星を用いて水星まわりの楕円軌道に入れ、太陽へ投入する。
太陽へ投入するための多くの推薬が必要、太陽熱からの熱防御、太陽から通信系への干渉について指摘があった。
人工衛星によるレーザ干渉計型重力波検出システム(創価大学)
マイケルソン型レーザ干渉計により1KHz帯の重力波を検出するため、母衛星と4つの子衛星の間を約53kmのアラミド系繊維でつなぎ、計測する。静止衛星軌道の妥当性、ケーブルの長さの変動の影響、パワー・ゆらぎを含むレーザの回線検討の必要性が指摘された。
ゼーベック効果による宇宙空間での発電補助システム(都立航空工業高等専門学校)
ゼーベック効果(半導体に温度差を与えると電流が流れる現象)を用いて国際宇宙ステーションの廃熱を利用した補助発電を提案している。十分な温度差が得られることの確認、発電に伴う廃熱効率の低下、放射線による劣化の可能性について指摘があった。
ストーム・インサイダー(日本大学)
火星の大気構造に大きな影響を及ぼすダストストームを観測するため、母衛星からの分離の後、子衛星搭載ドプラーライダによる風の3次元観測、孫衛星搭載投下センサによる風、温度、気圧、湿度の観測を行い、これらのデータを母衛星に送信する。ビームのスキャン時間、プローブの形状の決め方などについて指摘があった。