宇宙開発事業団
本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。
宇宙開発事業団及び文部省宇宙科学研究所が、科学技術庁航空宇宙技術研究所と共同で、北海道大樹町において実施している月面軟着陸技術検証用フライングテストベッド(FTB)実験の実施状況及び今後の進め方について報告する。
(1) | 平成12年1月26日の宇宙開発委員会への報告を経て、同年2月末より北海道大樹町において、FTBの受領試験の準備作業を開始した。 |
(2) | 地上におけるFTBの機能確認を行った後、3月27日にプレス立ち会いのもと、FTBテザー試験(クレーンで地上約4.5mまでFTBを吊り上げ、この位置から飛行を開始する:図1参照)を実施し、自立上昇(約5m)、ホバリング(30秒間)、横移動(約4m)、降下機能が要求どおりであることを確認した。 |
(3) | さらに3月28日、発進台からのFTBの発進、離陸、着陸機能の確認を目的としたテザー試験を開始したところ、FTBが発進台から浮上直後に横風にあおられ機体が傾いたため、エンジンを緊急停止し、試験を中断した。 |
(1) | FTBを発進台から直接上昇させるテザー試験を開始したところ、機体が発進台から5cmほど上昇した時点で、横風により機体が約50cm横に振られた。これによりFTB脚部(皿状の着地部分)が発進台(図2参照)のアンビリカル引き抜き用レールに接触し、さらにもう一脚が発進台の端部に接触して機体の姿勢が傾いた。 |
(2) | 直ちにエンジンの停止コマンドを送信したが、発進台に引っかかっていた脚部の拘束がはずれ、機体が横方向へ移動し、クレーンに吊り下げられた状態で左右に揺れた(図3参照)。 |
(3) | FTB機体を地上に戻して点検した結果、脚部のわずかな傷(塗装のはがれ程度)を除いて損傷はない。また人身への被害もなかった。 |
(4) | しかしながらこのような現象の再発を防止するためには、発進台上面の平滑化等の改修が必要と判断し、発進台を一旦工場に持ち帰り、必要な措置を施したうえで試験を再開することとした。また、万全を期すため、FTB機体も工場に持ち帰り、総合的な点検を行うこととした。 |
機材の輸送を含め、発進台の改修、総合点検等の工場作業に約2ヶ月を要するため、試験の再開時期は6月頃になる見込みである。現時点におけるスケジュールは以下のとおり。
3月31日 | 機材輸送 大樹町→工場(富士重工業(株)宇都宮工場) |
4月3日 | 開梱 |
4月4〜14日 | FTB点検、改修等の詳細検討 |
4月17〜28日 | 発進台改修 |
5月8〜19日 | エンジン作動を含む改修後の総合点検 |
5月22〜31日 | 機材輸送 工場→大樹町、テザー試験準備 |
6月 | テザー試験再開 |
なお、この結果本格的な飛行実験は、今年の10月以降(*)に実施することとなる予定。
(*)夏期(7〜9月)は気温等によりエンジン性能が低下するため、当初より実験の予定なし。