宇宙開発事業団
本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。
現在実施中の標準型H-IIAロケット地上試験機/射場システム試験(以下「GTV-1」)について、現時点までの結果と今後の予定を報告する。
(1) | GTV-1は、平成11年4月から打上げ時と同等の組立整備作業を開始し、打上げ日を模擬した試験を平成11年5月20日、極低温点検及び第1段ステージ燃焼試験を6月1日に実施した。この試験の中でLE-7Aエンジン始動時の横揺れ過大不具合が発生した。 |
(2) | その後、H-IIロケット8号機打上げのための整備作業及びその後の8号機打上げ失敗のため中断していた。 |
(3) | LE-7Aエンジン横揺れ過大対策としてLE-7A短ノズルとし、平成12年5月から作業を再開した。再開後1回目の極低温点検及び第1段ステージ燃焼試験を平成12年6月20日、再開後2回目の試験を7月5日に実施した。 |
第1段ステージ燃焼試験データを表1に、極低温点検及び第1段ステージ燃焼試験での主要データ取得結果を表2に示す。
計画通りにデータを取得し、ほぼ目標通りの結果が得られた。
項目 | 単位 | 再開後1回目 | 再開後2回目 |
---|---|---|---|
燃焼秒時 | 秒 | 10 | 100 |
メイン燃焼圧力 | MPa | 12.0 | 12.2 |
液体酸素インタフェース圧力 | MPa | 0.64 | 0.61 |
液体水素インタフェース圧力 | MPa | 0.38 | 0.32 |
再開後2回目の燃焼試験後に、LE-7AエンジンFTPリフトオフシールからの漏洩と推定される後燃えが確認されことから、FTPをエンジンから取り外して分解点検を実施し、原因について調査中である。
分解点検の状況、推定原因等については、別紙-1に示す。
次回のGTV最終試験については、必要な対策を講じて実施する。
なお、最終試験では、主に以下のデータを取得する計画である(表2参照)。
(1) | 自動カウントダウンシーケンス :打上げ時と同じ緊急停止項目を設定して確認 |
(2) | 1段液体酸素タンク加圧 :加圧流量を増加させたデータの取得 |
(3) | 1段液体酸素タンクベントリリーフバルブ :艤装変更後の音響データの取得 |
GTV-1燃焼試験において、エンジン停止時のノズル近傍での後燃えが発生した。これは、液水ターボポンプのリフトオフシール付近からの漏洩が原因と推定される。常温での点検ではリフトオフシール機能は正常に復帰していた。
なお、漏洩については種子島認定試験においても確認され、認定試験では水分対策のパージを強化して試験を続行したが、その後は大きな漏洩は認められなかった。
リフトオフシール部を除いて異常なし。リフトオフシールについても大きな異常はなかったが、特記事項を以下に示す。
(1) | リフトオフシールカーボンシールの欠け:位置はシール外形側、 幅は2〜3mm。 欠損部のエッジにだれ等が見られないので、シール摺動中に入ったものではなく、回転停止後に異物をかみ込んだもしくは片当たりしたと推定される。 |
(2) | リフトオフシール部タービン側に接触痕あり((1)の反対側の位相) リフトオフシールとシャフトが相対的に傾いていた可能性がある。 |
(3) | リフトオフシールのFTP取付けフランジに透明な付着物あり((1)の反対側の位相) 取付けボルトに塗布するシリコングリースと推定される。 |
(4) | リフトオフシール閉用バネ力が若干低めであった。(種子島認定試験用と同一ロット) |
原因としては以下が推定される。
(1) 熱変形によりガイドプレートCとタービンノズルが干渉しリフトオフシールとシャフトが相対的に傾き、下記のいずれか、もしくは、両方の状況になった。
(2)水分によりリフトオフシール閉作動が阻害された、または氷をかみ込んだ。
(3)リフトオフシール閉用バネ力が若干低めであったため閉作動が緩慢であった。
現時点では、以下の対策が考えられる。
(1) | ガイドプレートCとタービンノズルの干渉防止のため、隙間が一定値以上で均等となるように調整する。 |
(2) | 水分対策として、認定試験で採用したリフトオフシール部のパージ強化を行う。 |
(3) | リフトオフシール閉作動の確実性を増すため、バネ力を実績範囲内で強めにする。 |