プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

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標準型H-IIAロケット 地上試験機/射場システム試験の結果について

平成12年8月30日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

1. 概要

 標準型H-IIAロケット地上試験機/射場システム試験(以下「GTV-1」)について、計画した全ての極低温点検及び第1段ステージ燃焼試験を終了したので報告する。

2. 経緯

(1) GTV-1は、平成11年4月から射場での組立整備作業を開始し、打上げ日を模擬した試験(Y-0)を平成11年5月20日、極低温点検(F-0)及び第1段ステージ燃焼試験(T-0)を6月1日に実施した。この試験でLE-7Aエンジン始動時の横揺れ過大不具合が発生した。
(2) その後、H-IIロケット8号機打上げのための整備作業及びその後の8号機打上げ失敗のためGTV-1の作業を中断した。
(3) LE-7Aエンジン横揺れ過大対策としてLE-7Aエンジンを短ノズル形態とし、平成12年5月から作業を再開し、2回目の極低温点検及び第1段ステージ燃焼試験を6月20日、3回目の極低温点検及び第1段ステージ燃焼試験を7月5日に実施した。3回目の第1段ステージ燃焼試験において、LE-7Aエンジン停止時に液体水素ターボポンプのリフトオフシールからの漏洩による後燃えが発生した。
(4) 液体水素ターボポンプのリフトオフシール漏洩対策を施し、8月23日に4回目(最終)の極低温点検及び第1段ステージ燃焼試験を実施した。

3. 結果

(1) 概要

 GTV-1において、射場での組立整備作業、打上げ時を模擬した試験(Y-0)、極低温点検(F-0)及び第1段ステージ燃焼試験(T-0)を実施し、計画したデータを良好に取得した。

 主要なデータ取得結果を表1に示す。 また、第1段推進系系統図を図1に示す。

(2) 第1段ステージ燃焼試験

 第1段ステージ燃焼試験結果を表2に示す

計画通りにデータを取得し、目標通りの結果が得られた。

表2 第1段ステージ燃焼試験結果
項目単位1回目2回目3回目4回目
燃焼秒時 15.6 10 100 150
メイン燃焼圧力 MPa 11.9 12.0 12.2 12.1
液体酸素インタフェース圧力 MPa 0.64 0.64 0.61 0.61
液体水素インタフェース圧力 MPa 0.35 0.38 0.32 0.32

 第1段推進系取得データの例を図2、燃焼試験状況を図3、第1段ステージ燃焼試験における主要成果を以下に示す。

  • 1段水素タンク加圧系 :設定した制御範囲内で良好に制御
  • 1段酸素タンク加圧系 :設定した加圧ガス流量に対する加圧データを取得→結果良好
  • 補助エンジン系 :LE-7Aエンジン燃焼中に、全試験で計130回作動→結果良好
  • ジンバル系 :ピッチ・ヨー方向に±3度の三角波舵角(T-0#3のみ)→結果良好
  • 常温ヘリウム系 :良好
  • 予冷/フィードライン系 :良好
  • ベントリリーフ系 :良好
  • 地上パージ系 :良好
  • LE-7Aエンジン始動過渡 :結果良好(横揺れ過大対策問題なし)
  • LE-7Aエンジン定常作動 :結果良好
  • LE-7Aエンジン停止過渡 :結果良好(T-0#4では液体水素ターボポンプのリフトオフシールからの漏洩なし)

(3) 極低温点検(4回目)時のカウントダウンシーケンス自動停止

 カウントダウンシーケンスにおいて、1段酸素注排液バルブ(OFDV)を閉じた後に、1段酸素充填ラインを窒素パージし温度上昇を確認することでOFDVの閉確認を行うが、その温度が上昇しなかったため、シーケンスが自動停止した。

 1段液体酸素タンクの加圧が正常であり、外部への液の漏洩もなく、極低温点検及び第1段ステージ燃焼試験の実施に支障のないことが確認できたので、温度上昇の確認を自動判定から除いて試験を継続した。

 ステージ燃焼試験後にOFDVの動作確認を実施したところ、異音が認められたため、OFDVを機体から取外し製造メーカにて原因調査を実施中である。

4. 今後の予定

 GTV-1で計画した全ての極低温点検及び第1段ステージ燃焼試験を実施した。計画通りにデータを取得し、目標通りの成果が得られたため、後処置作業を実施する。

 また、GTV-1試験で得られた成果を確実に試験機1号機に反映する計画である。



液体水素ターボポンプのリフトオフシール漏洩対策