本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。
宇宙開発事業団としては、結論として、平成13年2月に予定していたH-IIAロケットの1号機の打上げは13年夏期としたい。
- まず第一に今回の打上げはH-IIロケットの相次ぐ打上げの失敗の後のことでもあり、十分な準備と納得のいく状況で打上げを行いたい。
- 今回のH-IIAの開発のための燃焼試験はH-II開発時に起こったようなエンジンの破壊等の大きなトラブルはなく、順調に推移してきたが、7月に実際のフライトよりも厳しい条件の下で試験を行ったところ、インデューサーのボルトの一部が破壊するというトラブルが起こり、その結果、宇宙開発委員会の技術評価部会の助言にもとづき、インデューサーの設計変更を行うとともに、現行のインデューサーを利用して飛行実証のためのテストフライトを行うこととした。これは新型ロケットの技術的課題を解明するためには大変重要だと考えている。
- 飛行実証に用いる実際のフライト用エンジンの領収試験を進めてきたが、この領収試験において、メッキ加工部分と液体酸素のベローズに不具合が発生した。
この両問題については早速技術的な解明を行い、対策も立てて再度50秒の領収試験を行ったところ、解析結果は順調であった。従って、この結果をもって、予定どおり13年2月に打ち上げることは可能と考えることもできる。
- 今回の打上げはH-IIAの初号機でもあり、諸外国の新型ロケットの打上げの例をみても失敗している例の多いことから、また、打上げ直前のこの段階においてかかるトラブルが発生していることからみても、通常の打上げよりも十分な確認を行う必要がある。
- さらに、このほど、H-IIA後続機用として製作中のLE-7Aエンジンのノズルスカート冷却配管に欠陥があることが明らかとなった。現在、この原因究明に全力を挙げているところである。
- H-IIA試験機1号機の打上げについては、スケジュールキープにこだわることなく、一連の事態に対しより万全を期して、打上げに臨むべきと考える。
- このため、H-IIA試験機1号機については、13年2月の打上げを延期し13年夏期とし、事業団及びメーカの設計、製造、試験、品質管理の技術者が一体となって、ロウ付け等の特殊工程のある製造部位、大きな振動の発生する可能性のある部位などに対して、これまで取得した開発試験、製造記録、品質管理記録等のデータの十分なる確認を再度行うこととする。
なお、この延期により、日程上の余裕も確保し、現場作業でのミスの発生防止、立ち会い確認などにより、より確実・的確な打上げが行われることになることも併せ達成されることになると思う。
- なお、インデューサーの改良作業は順調で、最初の新インデューサーを搭載したH-IIAロケットの打上げは、13年度冬期を目指し予定どおり進めており、14年度以降の打上げスケジュールは従来どおりと考えている。