プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

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国際宇宙ステーションで実験を行う搭乗員の訓練の実施について

平成12年12月19日

宇宙開発事業団

 宇宙開発事業団は、国際宇宙ステーション(ISS)のロシア・サービスモジュールで実験を行う搭乗員の訓練を下記の通り実施いたします。また、あわせて搭乗員による記者会見を行います。

1. 訓練実施日程および実施場所

日程: 2000年12月26日〜12月28日
場所: 宇宙開発事業団 筑波宇宙センター

2. 参加する搭乗員

ウラディミール・ニコラエビッチ・ジェジューロフ (ISS第3次長期滞在搭乗員)
ミハイル・チューリン (同上)
ワレリー・コルズン (ISS第3次長期滞在搭乗員バックアップ要員)
セルゲイ・トレチェフ (同上)

3. 訓練の対象となる実験

(1) 微小粒子捕獲・材料曝露実験
(2) 高精細度テレビジョン(HDTV)カメラシステム実験



国際宇宙ステーションのロシア・サービスモジュールを利用した宇宙実験の概要

1. はじめに

 宇宙開発事業団(NASDA)は国際宇宙ステーション(ISS)の早期利用の一環として、微小粒子捕獲実験装置(MPAC)・材料曝露実験装置(SEED)、および高精細度テレビジョン(HDTV)カメラシステムを(ISS)のロシア・サービスモジュール(SM:ズヴェズダ)に搭載し、実験を実施します。
 搭載装置は2001年7月に、バイコヌール宇宙基地から無人のプログレス補給船により打ち上げられ、SM内、外で以下の実験を実施した後、適時ソユーズ宇宙船を利用して試料および記録テープをロシア地域内で回収する計画です。
 この実験は、米国実験棟に搭載される予定の中性子モニタ装置(BBND)に次いで、ISSに2004年に設置が予定されている日本実験棟(JEM:きぼう)での実験に先立ってISSを利用する2番目の実験になります。

2. SM宇宙実験の概要

2.1 微小粒子捕獲・材料曝露実験(MPAC & SEED実験)

(1)微小粒子捕獲実験

 ISSの軌道上に存在する微小なダスト(スペースデブリ、マイクロメテオロイド:微小流星体等)の存在量、大きさ、組成、衝突エネルギー等について評価し、安全な宇宙活動に支障を来すおそれのある微小粒子環境の把握に活用されます。

(2)材料曝露実験

 各種の宇宙用材料(熱制御材料、固体潤滑剤等)を宇宙放射線、原子状酸素等の宇宙環境に曝露させ、それら材料の劣化状況および汚染状況を評価して今後の宇宙用機器等の開発に役立てるものです

2.2 高精細度テレビジョンカメラシステム実験(HDTVカメラシステム実験)

(1)医学実験

 HDTVカメラシステムを使用した医学実験により、遠隔医療診断の実施、精神・心理面でのサポートの実施に向けて、従来のビデオシステムよりも高精細な視覚情報の有効性を確認します。

(2)広報応用実験

 ISS内部の活動および地球の映像取得実験を行い、ISSにおける映像取得技術を修得すると共に、取得映像の広報活動等への活用を行います。

3. 実験装置

3.1 MPAC & SEED実験

 実験装置3式を船外活動によりSM外壁に取付け、各々1〜3年間宇宙環境に曝露させた後、曝露実験試料部分(ダスト捕獲材、曝露実験試料を装着したサンプルホルダ)を地上に回収します。
 今回搭載される実験装置は、電気系・通信系を持たない受動的な実験装置です。
 地上に回収された曝露実験試料は、分析評価されると共に、別途実施される地上対照試験データとの比較評価を行います。





3.2 HDTVカメラシステム

 HDTVカメラシステムは、大きく分けてHDTVカメラとコンバータユニットにより構成されます。
 HDTVカメラはカメラは、高精細度のHD映像、音声をビデオカセットに記録します。コンバータユニットはHDTVカメラへの電力供給機能と、HDTVカメラで撮影した映像をSMに搭載されるダウンリンク装置を介して地上に伝送する事を目的とするダウンコンバート機能を有し、記録中の映像をSECAM方式に変換して地上へのダウンリンク用に出力します。
 これらの装置は市販製品をベースとして、搭載品を整備したものです。映像はビデオテープにデジタル形式で録画され、回収後に解析されます。HDTVカメラシステムは軌道上で約1年間運用されます。



4. 搭乗員訓練

 実験の実施に際しては、ロシア人宇宙飛行士による実験操作が必要になりますが、準備段階として様々な訓練が実施されます。
 基本的な訓練は、ロシアで実施される予定ですが、日本側の実験装置と実験内容を深く理解して貰い、軌道上での実験運用が円滑に行える事を狙いとして、第1段階の慣熟訓練の一部を日本で実施することにしました。

 NASDAの実験装置は現在軌道上で建設作業が進められているISSのSMに、2001年7月に打上げが予定されている無人のプログレス補給船を使って、打ち上げられます。その後、ロシア人の宇宙飛行士の手で、実験作業が行われます。

4.1 訓練スケジュール

 搭乗員の訓練は下記のスケジュールで実施されます。

  • 慣熟訓練(日本):2000年12月
  • MPAC & SEED 船内活動訓練(ロシア 星の町):2001年1月
  • MPAC & SEED 船外活動訓練(ロシア 星の町):2001年1月
  • HDTVカメラシステム操作訓練(ロシア 星の町):2001年1月
  • HDTVカメラシステムミッション訓練(ロシア コロリョフ):2001年1月
  • リフレッシュ訓練(ロシア):2001年4月

4.2 慣熟訓練の内容

 日本で行う慣熟訓練は上記の宇宙飛行士の任務を円滑に遂行する一助として、以下の内容を計画しています。

  • 日本で製作/試験中の実験装置の紹介
  • 実験内容の説明、および日本側医学関係研究者との調整
  • 実験操作のデモンストレーション

4.3 メンバー

 日本の実験を担当するロシア人宇宙飛行士は、下記の4名です。実験は第3次搭乗員の2人を中心に実施されますが、バックアップ候補搭乗員に関しても同様の訓練を実施します。

第3次搭乗員
ウラディミール・ニコラエビッチ・ジェジューロフ Vladimir Nikolaevich Dezhurov

1962年7月30日 モルドヴァ自治共和国生まれ。
1983年 赤い星記念ハリコフ軍航空学校卒業。
1994年 軍航空アカデミー(大学)卒業。ロシア連邦パイロット、宇宙飛行士、ロシア連邦英雄、NASA "SPACE FLIGHT MEDAL" 受領。
軍航空学校卒業後、空軍のパイロットとして軍務に服す。
1994年2月から1995年3月まで、ミール宇宙ステーション第18期目の船長となるべく訓練を受ける。
1995年3月より同年7月まで、第18期搭乗員としてソユーズ-TM及び「ミール」上で115日間の宇宙飛行を体験。スペースシャトル・アトランティスのSTS-71ミッションのクルーとしてケネディー宇宙センターに着陸。EVA(船外活動)5回、合計25時間経験。2級テストパイロット。
1997年3月から1998年3月までISSグル―プの中で訓練を受ける。
現在はISS第三期搭乗員の主要メンバー及びソユーズ-TMの船長として訓練中。

ミハイル・チューリン Mikhail Turin

1960年3月2日 モスクワ州コロムナ市生まれ。
1984年 モスクワ・航空大学卒業。
1984年から「エネルギア社」で技師、上級技師、指導技師として勤務。
1994年10月から1996年2月まで宇宙一般訓練を受け、資格は1996年3月に取得。
1997年8月から2000年ISS第一次搭乗員のバックアップとして、又ソユーズ-TMのオンボード技術者として宇宙飛行の訓練を受ける。
現在は、ISS第三次搭乗員として、又ソユーズ-TMのオンボード技術者として宇宙飛行の訓練中。

バックアップ搭乗員
ワレリー・コルズン Valery Korzun

1953年3月5日ロストフ州生まれ。1970年中等学校卒業。
1974年カチンスク軍航空学校卒業。 1987年軍航空アカデミー(大学)卒業。
ロシア連邦パイロット、宇宙飛行士、ロシア連邦英雄、NASA "SPACE FLIGHT MEDAL" 受領。フランスの「レジョンドヌール勲章」受領
軍航空学校卒業後、空軍のパイロット、上級パイロット、飛行編隊長、飛行大隊長として軍務に服す。
1987年12月より1989年6月まで宇宙一般訓練を受ける。1989年宇宙飛行士の資格取得。
最初の宇宙飛行はミールでの1996年8月17日から1997年3月2日まで196日間。
1997年3月からISSプログラムの訓練を受ける。

セルゲイ・トレシェフ Sergey Treschev

1958年8月18日リペツク州生まれ。
1982年モスクワ・エネルギー大学卒業。
1982年から1984年まで空軍に飛行連隊長として勤務。
1984年から1986年まで「エネルギア社」技師として勤務。
エネルギア社の飛行士部隊には1992年に所属。
1992年10月から1994年2月まで宇宙一般訓練を受ける。 宇宙飛行士の資格は1994年3月に取得。
1998年10月からISSプログラムの訓練をうける。