プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

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LE-7AエンジンとLE-5Bエンジンの燃焼試験結果について

平成12年5月9日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会技術評価部会における報告資料を、以下に掲載します。

1 .LE-7Aエンジンの燃焼試験結果(速報)

1.1 概要

 LE-7Aエンジンについて、8号機インデューサ不具合要因に対して、現設計の妥当性を確認するために、エンジン燃焼試験及びインデューサ水流し試験による評価を行なった。

1.2 進捗状況

 4月21日から4月28日にかけて種子島燃焼試験場において、FTP入口圧力をフライト模擬相当まで低下させた燃焼試験等を3回実施した。また、4月21日及び25日にLE-7Aのインデューサ水流し試験を実施した。なお、水流し試験については、構造解析を含め、現在評価中であり、田代燃焼試験についても5月9日より実施予定である。

1.3 種子島燃焼試験結果概要

 本シリーズの主な試験結果を下表にまとめる。ほぼ計画どおりのインターフェイス条件を達成し、H-IIAノミナルフライトとの比較を図1.3.1図1.3.2に示すとおり、フライト相当のポンプ入口条件(PIF、キャビテーション係数、NPSH等)を網羅するデータの取得ができた。

1.4 データ取得結果

 主なデータ取得結果を以下に記述する。

(1) FTPの軸振動(図1.4.1(1/2)(2/2))から1.1ωの非同期は確認されてないことから、旋回キャビテーションの発生はなかったと推定される。また、インデューサ翼の固有振動数2.7kHz近傍の2.8kHzにピークが認められたが、その大きさは、LE-7の約15μmo-pに比べ約5μmo-p程度と十分小さい。
(2) インデューサ近傍変動圧力(PVIDFC:図1.4.2)には、3.2kHz近傍に変動のピークが認められたが、インデューサ翼の固有振動数である2.7kHz近傍には特に顕著なものはなかった。(LE-7では同様に3.2kHzに変動圧のピークがあり、インデューサ翼の固有振動数が同じ周波数で存在していた。)

1.5 今後の予定

 今回の試験結果から、インデューサ翼の共振及び旋回キャビテーションは認められず、8号機事故原因となった過大な変動応力を発生させる可能性が少ないことが明らかになった。今後、田代燃焼試験及びLE-7Aエンジンの認定試験を通じて、軸振動に発生する2.8kHzの振動の影響、インデューサの個体差や様々な運転状況における負荷に対して、LE-7A用FTPのインデューサの健全性を確認していくこととしたい。

2. LE-5Bエンジンの燃焼試験結果(速報)

2.1 目的

 LE-5Bエンジンの信頼性向上を図る目的で実施中の燃焼試験について、状況を報告する。

2.2 試験結果

 平成12年3月18日より角田ロケットセンタで燃焼試験を開始し、現在まで計8回の高空燃焼試験を実施した。

(1)作動結果

 試験結果のまとめを表2.1に、作動点図を図2.1に示す。初回から5回の試験(試験番号KH328〜KH332)で、性能データ取得試験を実施した(目標範囲は図2.1の(1))。真空中推力約137〜約141kN、エンジン混合比4.91〜5.07の高空燃焼データを良好に取得した。

 性能データ取得に引き続き、高圧燃焼による寿命耐久性確認を目的に試験を実施し、2試験(KH333、KH335)で高圧燃焼確認範囲(図2.1の(2))内の確認ができた。作動点は真空中推力約145〜約147kN、エンジン混合比4.74〜5.07で、低混合比を主体にした確認を行った。供試体については、健全性確認として燃焼室溶接部の蛍光浸透探傷検査等の点検を行い、特に問題ないことを確認した。

(2)試験達成状況

 試験目的に対する達成の状況は表2.2のとおり、判断基準に対して概ね今後2回の試験で達成できる状況である。

(3)水素ターボポンプインデューサ圧力計測

 LE-7不具合の反映としてLE-5Bエンジンの水素ターボポンプインデューサ出口圧力(PIDF)変動の計測を実施した。結果として圧力および軸振動に顕著な回転同期成分は認められていない。今後の試験で計測精度の改善を行い、データ取得を実施する。

2.3 今後の予定

 今後の試験予定として、高圧燃焼による寿命耐久性確認試験を高混合比を主体に引き続き実施する。目標達成後に、耐久性および設計限界のデータ蓄積のための試験を実施する。



* 本日の技術評価部会に宇宙開発事業団がH-IIロケット8号機による運輸多目的衛星(MTSAT)の軌道投入失敗の原因究明及び今後の対策について取りまとめた報告書を提出しました。