宇宙開発事業団
本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。
(1) | 平成12年6月より8月まで、LE-7A認定型エンジン2台を用い、エンジン燃焼試験を実施してきた。 |
(2) | LE-7A認定型エンジン(3号機)については、平成12年6月6日より種子島宇宙センターにおいて燃焼試験を開始し、平成12年8月29日の12回目の試験で一連の燃焼試験を終了した。 |
(3) | LE-7A認定型エンジン(2号機)については、平成12年7月7日より三菱重工業田代試験場において燃焼試験を開始し、平成12年8月21日の11回目の試験で一連の燃焼試験を終了した。 ※試験実績を表1に示す。 |
約350秒の長秒時耐久性確認試験4回を含む計12回、2,029秒の試験を実施した。
初回,2回目と領収燃焼試験相当の試験を行い、作動点をノミナル付近に設定し、3回目はその状態で長秒時試験を行った。
4回目以降、領収範囲(AT範囲)に設定したエンジンが実フライトで遭遇する作動点について、各コンポーネントのばらつきを考慮した重要コンポーネントの作動範囲(認定範囲:QT範囲)を確認する試験を行った。
8回目,10回目の試験では、フライト中、液体水素ターボポンプ入口圧力が低くなる状況を模擬した長秒時試験を行い、12回目の試験では、液体酸素ターボポンプ入口圧力についてもフライト状態を模擬した長秒時試験を行った。
計11回、485秒の燃焼試験を行い、認定型エンジン(2号機)としては累積18回、1,986秒に到達した。
初回試験より8回目の試験まで、領収範囲(AT範囲)に設定したエンジンが実フライトで遭遇する作動点について、各コンポーネントのばらつきを考慮した重要コンポーネントの作動範囲(認定範囲:QT範囲)確認試験を行った。
9回目,10回目の試験では、フライト中、液体酸素ターボポンプ入口圧力が低くなる状況を模擬した試験を行った。
11回目試験では、エンジンが起動し始めてから定常状態に立ち上がる前に停止に移る早期停止シーケンスを確認した。
図1に示すように、認定試験範囲の外でエンジン燃焼試験を行うことより、コンポーネントにより厳しい負荷をかけた状態で耐久性を確認した。また、図2に示すようにエンジン比推力は予想値に達しており、エンジン性能もほぼ予想どおりであることを確認した。
種子島での10回目の試験後の通常点検で、FTPの軸の回転に引っかかりがあり、当該ポンプを工場に持ち帰って分解点検したところ、ポンプ側ベアリングマウント(図3)のボルト頭部の破断(12本全部)が発見された(図4)。
この試験は、水素ポンプ入口圧力の低圧側の限界を確認する長秒時試験であったが、試験データ及び破面解析の結果、入口圧力が予定より下がりすぎたために軸振動(軸の2次振動モード)が大きくなり、ベアリングマウント装着ボルトに大きな繰り返し応力が発生した(図5)ことがわかった。また、当該ボルトは実機型のものを使用していたために、応力に余裕がなく短期間に疲労破壊に至ったと推定された。
対策としては、水素ポンプ入口圧力の低圧側限界が本試験により明確になったので、限界以上の入口圧力で液体水素ターボポンプを運転する様にエンジン領収試験条件及びフライト作動範囲に反映するとともに、認定型のボルトを使用することとした。
8回目の試験後に発見されたタービン動翼ストッパ及びガイドプレートの損傷については、その後の10回目の試験後の点検では損傷がないことを確認した。
今後、両燃焼試験に供した認定型エンジンの分解点検を実施する。燃焼試験結果並びに分解点結果等を踏まえ、9月中旬を目途に認定試験後審査(その1)【PQR-1】を行い、試験機1号機用エンジンの領収燃焼試験に移行する。
また、引き続き認定型エンジンによる燃焼試験を継続し、データの蓄積を図る。