本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。
1. 試験状況
H-IIAロケット試験機1号機用LE-7Aエンジンの領収燃焼試験を、平成12年10月10日より種子島宇宙センターにて進めている。
これまでに3回の燃焼試験を行い、作動点を領収試験範囲内に調整し、推進薬入口のインタフェース圧力を変化させて特性データを取得した。(表-1、図-1、図-2)。
3回目の燃焼試験後の通常点検において、液体酸素ターボポンプ(OTP)内の異物(図-3)及び液体酸素タンク加圧配管からの漏洩(図-4)が発見されたため、現在、原因の究明及び処置を実施中である。
2. 酸素ターボポンプ(OTP)の内部異物
1) 発見時の状況と調査結果
- 最終試験後の軸トルク点検のため、トルクチェックポートを開放したところ、異物を確認。
- 異物は、18mmx3mm、6mmx3mm、15mmx5mmの大きさでNi箔と判明(計4個)。
- OTPを全分解し、点検及び異物の検査を実施した。 メインポンプ出口付近からNi箔(3mm×3mm:1個)が発見された以外は、OTPから異物は発見されなかった。
- OTP軸受の検査を実施。寸法検査結果、回転時の振れ計測で軸受A・Bの外輪軸方向振れが、規格値をはずれた。 他の寸法は良好。 外観検査の結果、軸受A、Bの荒れが多い。
- エンジンの酸素系配管の点検を実施したが、現在のところ異物は発見されていない。
2) 原因究明結果と対策
- ケーシングAのインデューサライナ差込部のNiメッキの密着性が十分でなく、Niメッキが剥がれ(図-5参照)、流路に流れ出たものと推定される。
- 対策としては、異物の発生源であるケーシングAの当該部Niメッキを全て取り除くこととする。 それに伴い、差込部を約30μm厚くした新製作のインデューサライナを組み付ける。
- 全分解点検の結果、上記メッキと軸受以外に異常がないので、インデューサライナと軸受(A、B、C、D)を新製のものと交換してOTPを組み立てる。 異物については、剥離したメッキが残留する可能性のあるエンジン配管等の場所について、内視鏡を使った点検を引き続き実施する。
3. 液体酸素タンク加圧配管からの漏洩
1) 発見時の状況と調査結果
- 最終試験後の漏洩点検にて、上記配管(熱交換器から機体へ戻る配管)に溶接されている3個のベローズのうち機体側に近いベローズより、外部漏洩があった。
- 工場において、漏洩のあったベローズの浸透探傷検査、X線検査など実施し、破損部の確認を行った。
- ベローズの2番目及び3番目の谷の部分に約30〜35mmのき裂が確認された。
- 破面の電子顕微鏡観察結果から、破面にはストライエーションが観察され、破断は疲労によるものと推定される。 (破断に至るき裂の進展サイクルは5,200サイクルと推定される。)
2)原因究明結果と対策
- 液体酸素タンク加圧用配管のベローズ部が破損した事象について、故障の木解析(FTA)を実施した。機械的な強制振動、機械的な共振、及び流体的共振が、要因として推定される。
- 原因を特定するため、振動データの詳細分析、振動・変形モードの解析、確認試験を実施中である。
- 尚、エンジンで使用している他のベローズについても、上記推定原因の影響について、試験データ、解析等により、確認を行っている。
4. 今後の予定
- 剥離したメッキが残留する可能性のある全ての場所について問題の無いことを確認し、ベローズ破損の原因究明を行った後、対策品(OTPと液体酸素タンク加圧用配管)をエンジンに組み込んで、燃焼試験を実施することとしたい。
尚、この燃焼試験は、OTP軸系の組み立て確認、液体酸素タンク加圧用配管についての対策が妥当であることの確認及び作動点が領収範囲にあることの確認を目的としている。