宇宙開発事業団
本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。
宇宙開発事業団は本年9月、宇宙開発委員会技術評価部会から、現行のH-IIAロケットLE-7Aエンジン液体水素ターボポンプのインデューサについて、特定の条件下でターボポンプ入口付近の異常な流体現象により発生する過大な軸振動を抑制するため、設計を見直すよう助言を受けた。これを踏まえ、宇宙開発事業団は、直ちに同インデューサの設計見直しを開始し、現在同インデューサの改良を平成13年度冬期の打上げに向け進めている。
(1) | ターボポンプに発生した過大な軸振動を抑制するため、技術評価部会の指摘を踏まえ、ターボポンプの設計を見直す。 |
(2) | 設計の見直しにあたっては、現行のLE-7Aエンジンの開発実績と試験データの十分な活用を図る。 |
(1) | 過大な軸振動の要因であるターボポンプ入口付近の異常な流体現象が発生しないよう、インデューサの吸い込み性能の改善を行う。 |
(2) | 設計見直しによるターボポンプ及びエンジンシステムに対する影響を最小限とするため、ターボポンプの回転数及び流量は変更せず、また、新たな軸振動の発生を防ぐため、ターボポンプの回転部分のうち設計変更はインデューサに対してのみ実施する。 |
なお、設計変更は最小限としているが、インデューサの吸い込み性能に関する地上での試験検証は着実かつ十分に行うこととして、改良インデューサを組み込んだターボポンプ単体の試験から、LE-7Aエンジンの認定燃焼試験、H-IIAロケット推進系システムとしての厚肉タンクステージ燃焼試験までを入念に実施する。
(1) | 流量係数(=流速/インデューサの周端速度)を現設計に比べ約20%増加させる。このため、インデューサ入口外径を縮小。 |
(2) | 逆流を少なくするために、インデューサ羽根の入口側角度を変更。 |
(3) | 上記変更に伴い、インデューサ設計の全体の見直し、適正化を実施。 |
(4) | インデューサ外径の縮小に合わせターボポンプと入口配管の流路内径を縮小。 |
専門家の意見を設計見直しに十分反映するため、大学及び国立研究機関の研究者(約10数名)の参加を得て、設計・試験・データ評価を実施する。
インデューサの改良を確実に進めるため、吸い込み特性について早期に目途をつけるとともに、設計点の周囲のデータを幅広く十分に取得し、運転条件の変動に対して安定な設計であることを確認する予定である。別表に示す試験計画により、平成13年度冬期に向けた設計見直しを実施している。