プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

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スペースシャトル・ディスカバリー号(STS-92)の打上げについて

平成12年10月11日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

1. 報告事項

 若田宇宙飛行士が搭乗するSTS-92「ディスカバリー号」は、当初、平成12年10月6日(金)午前10時38分(日本時間)打上げ予定であったが、3項に示す理由により、打上げが3回延期された。最新のSTS-92打上げ準備状況について報告する。

2. 打上げ予定日時等

 打上げ等の予定日時は次のとおり。

打上げ予定日時 平成12年10月12日(木)午前8時17分(日本時間)
平成12年10月11日(水)午後7時17分(EDT)
着陸予定日時 平成12年10月23日(月)午前3時10分(日本時間)
平成12年10月22日(日)午後2時10分(EDT)

3. 打上げ延期理由

 下記に打上げが延期されることになった理由等を示す。

【1回目の延期理由】

(1) 外部タンク結合ボルトの突出

 本年9月にISSへの補給ミッションで飛行したSTS-106(アトランティス号)の飛行後解析において、オービタと外部タンクを結合する3本のボルトのうちの1本(後方右舷側)が打上げ後の外部タンク分離時に適切に引き込まれなかったことが判明した。オービタ側にあるナットが火薬により分離した後に、同ボルトがバネによりタンク側に引き込まれる設計である(図-1)ところ、引き込まれず約2.25インチ突き出したままであったことが写真(写真-1)により明らかになった(同ボルトは長さ14インチ、直径2.5インチ)。
 本件のために、NASAは打上げを延期し、3つのチームにより、ボルト突出が分離運動に与える影響(再衝突しないか)の解析、過去のシャトル打上げ映像による事例とその影響の確認、ボルト設計の妥当性及び試験データ評価の3点につき分担して作業を行った。その結果、ボルト突出は設計上の許容範囲内のものであり、過去のミッションにおいても生じており、外部タンクの分離運動に対して影響しないものであることが解析で確認され、STS-92の飛行に問題無しと判断された。

(2) シャトルメインエンジンのポゴ抑制バルブの不具合

 6日(JST)の打上げ延期に伴い、シャトルメインエンジンにリセットをかけた際、ポゴ抑制用のバルブで不具合が発生した。ポゴ抑制バルブは、メインエンジンへ流入する液体酸素の圧力変動を抑制することにより、ポゴ振動(エンジン配管内圧力変動と機体の振動とのカップリング)を防ぐもの(図-2参照)
 当該バルブは本来打上げの12秒前まで閉状態としておくが、打上げ延期に伴いリセットをかけるため、開コマンドを送信したところ、開状態になったことをバルブからのテレメトリで確認できなかった。
 NASAは打上げを10日(JST)に延期し、当該バルブの交換を行った。交換後の点検によりバルブの正常動作が確認された。

【2回目の延期理由】

射場の強風のため、外部タンク上部に接続する酸素ガスベントアーム(排気用の射場系構造体/写真-2)がロックできないため推進薬の充填作業が行えず、打上げを平成12年10月11日(水)午前8時40分(日本時間)に延期された。風速は、打上げに関する規定値(風速42ノット)に対し、44.6ノットであった。

【3回目の延期理由】

 外部タンクとスペースシャトルオービタの間の液体酸素供給ライン上にピン(シャトルのメンテナンス等のための作業プラットフォームを固定するために使用するもの)が乗っているのが発見され、打上げ時にシャトルに損傷を与える可能性があると判断されたため、打上げを平成12年10月12日(木)午前8時17分(日本時間)に延期された。ピンは、推進薬排液後取り除く予定。


若田宇宙飛行士搭乗のスペースシャトル「ディスカバリー号」(STS-92/国際宇宙ステーション組立ミッション(3A))の打上げ延期について(続報)/10月11日お知らせ
宇宙開発事業団STS-92ホームページ