プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

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スペースシャトル・ディスカバリー号(STS-92/国際宇宙ステーション組立ミッション(3A))の打上げ及び運用状況について

平成12年10月18日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

1. 報告事項

 若田宇宙飛行士が搭乗しているSTS-92(参考1)の打上げ及びその後の運用状況について報告する。

2. 打上げについて

  • 若田宇宙飛行士が搭乗したスペースシャトル「ディスカバリー号」(STS-92)は、日本時間10月12日(木)午前8時17分 [米国東部夏時間(EDT)10月11日(火)午後7時17分]、フロリダ州NASAケネディ宇宙センター(KSC)から打上げられ、約8分半後に予定の軌道に到達した。
  • なお、打上げは当初、10月6日(金)の予定であったが、シャトル主エンジンのバルブの不具合や天候不良(強風)等により三度延期されていた。

3. STS-92運用状況

  • 日本時間12日(木)(飛行2日目(FD2))にKuバンド通信システム(参考2)にトラブルが発生した。トラブルシュートを何度か試みるが復旧せず、NASAはこれ以上軌道上での調査を行わず、帰還後に詳細な調査を行うことを翌日決定した。ミッション達成には影響は無い。ミッション期間中、地上に送信されるカメラ映像は極端に減るが、静止画像(数秒毎に更新される)はSバンド通信システムを使って送信可能である。尚、NASA地上局(カリフォルニア州ドライデン飛行研究センター(DFRC)とフロリダ州メリット・アイランド追跡局(MILA))上空を通過している約10分前後は、シャトルからの動画をSバンドで送信可能である。
  • 日本時間13日(金)(飛行2日目(FD2))午前6時47分からVIPコールを実施した。若田宇宙飛行士はダフィー船長と共に、森総理、大島大臣、三宅高校野球部津村主将と約20分間交信した。上記Kuバンド通信システムのトラブルのため、コマ送りの静止画像で対応した。
  • 日本時間14日(土)(飛行3日目(FD3))午前2時45分、ディスカバリー号がISSとドッキングした。Kuバンドのレーダが使用できないため、スタートラッカーを使用した。シャトルがレーダを使用せず他の宇宙機とドッキングをしたのは初めてのことである。
  • 日本時間14日(土)(飛行4日目(FD4))午後10時頃、Z1トラスをユニティへ取り付ける作業の準備中に、シャトルのペイロード電気系統がショートし、取り付け状況を示すカメラ7台のうち1台が使えないトラブルが発生した。本カメラは、丁度ユニティとZ1トラスの結合部を下から見上げる形でシャトル荷物室の底に上向きに取付けられており、若田宇宙飛行士がユニティに対するZ1トラスの位置決めに使用するカメラであったが、代わりにロペズ?アレグリア宇宙飛行士がユニティの結合部となるハッチの窓から外を見てZ1トラスの位置決め状況を若田宇宙飛行士に伝えるなどして、取り付け作業を支援した(参考3)。Z1トラスの取り付け作業は、ショートした機器の処置などのため予定より約2時間15分遅れて日本時間15日(日)午前1時頃開始され、同午前4時7分に結合機構のボルト締結まで問題なく完了した。上記遅れのため、当初予定されていたザーリャ(FGB)への物資の輸送は、飛行9日目(FD9)に実施する予定である。
  • 日本時間15日(日)(飛行5日目(FD5))午後11時27分から同16日(月)午前5時55分にかけて、1回目の船外活動(EVA)を実施した。Z1トラスの配線接続、2つの通信アンテナの移設等を予定通り実施した。若田宇宙飛行士はロボットアームを操作してEVAクルーを支援した。これは、ISS組立ての7番目のEVAにあたる。
  • 日本時間16日(月)(飛行6日目(FD6))午後11時15分から同17日(火)午前6時22分にかけて、2回目のEVAを実施した。若田宇宙飛行士はロボットアームを操作して、EVAとの協調作業により、PMA-3のユニティへの取り付けを行った。
  • 日本時間17日(火)(飛行7日目(FD7)午後11時30分から18日(水)午前6時18分にかけて、3回目のEVAを実施し、Z1トラスへの直流変圧器の取付や配線接続等を予定通り実施した。若田宇宙飛行士はロボットアームを操作して、EVAクルーを支援した。
  • 現在、飛行は順調。若田宇宙飛行士他クルーの健康状態は良好で、予定の任務を確実に実施している。

4. 今後の主なイベント

(1) 軌道上記者会見

 日本時間10月22日(日)午前3時57分[10月21日(土)午後1時57分(CDT)]から45分間(うち、日本の枠は20分間)を予定している。

(2) 着陸

 日本時間10月23日(月)午前3時10分[10月22日(日)午後2時10分(EDT)]にKSCへ着陸する予定である。



(参考1) STS-92(国際宇宙ステーション組立ミッション(3A))ミッションの概要

 スペースシャトル「ディスカバリー号」によるSTS-92ミッションは、国際宇宙ステーション(ISS)の組み立てのための飛行であり、シャトルとしては100回目の飛行にあたる。
 本ミッションでは若田宇宙飛行士が2回目のシャトル飛行を行い、前回搭乗したSTS-72の飛行の時と同様にシャトルの遠隔マニピュレータシステム(ロボットアーム)の操作を担当して、Z1トラスとPMA-3のユニティへの結合や、船外活動の支援などを行っている。なお、Z1トラスは、姿勢制御装置や通信システムなどを搭載した、ISS組立初期段階における要となるモジュールであり、PMA-3はシャトルとのドッキングに使用される与圧可能な円錐形モジュールである。