宇宙開発事業団
本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。
将 来の月面探査に必要となる月軟着陸技術の研究に使用する、フライングテストベッド(FTB)の試験を、平成13年2月6日から3月3日迄の間、北海道大樹町において実施したので、その状況及び結果を報告する。
FTB は月面探査にとって重要な月軟着陸技術の飛行実証に必要な研究開発に資するため製作された、月面軟着陸時の動特性等を模擬する試験装置である。FTBの外観、仕様を図1に示す。
昨年6月までにFTBをクレーンでつり下げた状態での飛行試験(テザー試験)を完了し、基本的な機能を確認した。
今回実施した試験にはFTBの飛行の確実性を向上するための試験と、月軟着陸技術の研究で使用する基礎データ取得という2つの目的がある。
上記試験目的に応じて文部科学省航空宇宙技術研究所と共同で以下の試験を実施した。試験の概要について図2( 1 , 2 )に、試験実施場所について図3に示す。
なお、これに先立ってFTB の機能に問題ないことを確認するため、FTBに万一のことがあっても墜落しないよう安全索でクレーンからつるした状態で、正常に飛行できることを確認するテザー試験を実施。
試験期間:平成13年2月6日〜平成13年3月3日
ヘリコプター懸吊飛行試験:平成13年2月9日
テザー試験:平成13年2月19日
耐風性能確認試験(1回目):平成13年2月24日
耐風性能確認試験(2回目):平成13年2月27日
ステレオ画像等の基礎データ取得:上記試験中及び前後の準備作業中等に適宜取得
試験の結果、今後FTBを用いた飛行試験を実施するに際して、電波リンク上及び耐風性能上問題となることは無いことが確認できた。これで、試験装置としてのFTBが完成し、今後の飛行試験の準備が整った。
さらに、今後実施する月軟着陸実験の研究において使用する障害物検知に関する基礎的なデータが取得できた。
飛行領域及び保安領域における管制室からFTBへのコマンドについては、機体姿勢の影響等があっても良好に確保されていることを確認した。また、FTBのテレメータデータの取得については、機上のデータレコーダの動作も含め、良好に確保されていることを確認した。
当初の予定通り離陸、空中停止、移動、着陸を行った。飛行状況は正常であり、昨年6月に実施したテザー試験時と、飛行特性に変化がないことを確認した。
大型送風機により横風をあて、FTBの姿勢制御系がどの程度の風まで姿勢を維持できるか確認するためのデータを取得した。事前の解析で風速10m/sを超えた風で姿勢を維持できなくなるという結果が得られており、試験は風速10m/sを上限とし、少なくとも風圧がその半分程度となる風速7m/s以上で実施することとした。
試験の結果、飛行中の機体に上記条件の風を当て、制御系に関する飛行データを得ることが出来た。また、飛行中の機体の姿勢は十分安定していた。
今回取得したデータから、機体が受けた風速と姿勢制御系の応答について解析を行った結果、FTBが耐えられる風速の限界は10m/s程度であることが分かった。今後の飛行試験は風速の短期変動分(実測に余裕を見込み25%程度)を考慮し、7.5m/sまでで実施することとする。
期間中、ビデオカメラによるステレオ画像を約10時間分、レーザレンジファインダーの画像を約3時間分取得した。取得状況は良好であり、来年度以降実施する研究で使用する基礎的なデータが得られた。
昨年8月の宇宙開発委員会における審議結果に基づき、来年度以降、文部科学省宇宙科学研究所、航空宇宙技術研究所と宇宙開発事業団は連携して月軟着陸実験の研究を実施することを計画している。
現在、この研究の進め方について3者で定期的に会合を開き、検討を実施している。その中で、いくつかある研究課題のうちの障害物検知・回避技術、着陸誘導制御技術について、試験装置としてFTBを活用し、研究を進めることとしている。現在検討中のFTBを用いた試験は以下に示す通りである。
今後、月軟着陸実験の研究の進捗により準備が整ったところでこれらの試験を順次実施することとしている。